Don’t Stop Believin’ by Journey(1981)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

Journeyの「Don’t Stop Believin’」は、1981年にリリースされたアルバム『Escape』のオープニングを飾る楽曲であり、今やアメリカ音楽史を代表する不朽のアンセムとなっています。その象徴的なタイトルが語る通り、この曲は「信じ続けること」の力をストレートに訴えかけるメッセージソングです。

歌詞はストーリーテリング形式で進行し、「Small town girl(小さな町の少女)」と「City boy(都会の少年)」という二人の若者の視点を通じて、“夢を求めて都会へ向かう”というアメリカン・ドリームの王道的なテーマを描いています。列車に乗って旅を始めた二人は、夜の街で何かを探し、どこかに自分の居場所があることを信じています。メタファーとしての「夜の闇」や「ストリート」は、孤独や希望、出会いと別れを象徴し、シンプルながらも詩的な世界観を形成しています。

印象的なフレーズ「Don’t stop believin’ / Hold on to that feelin’(信じることをやめないで、その感覚を掴み続けて)」は、単なる励ましを超えて、時代や世代を超えて多くの人々の人生に寄り添ってきました。ポジティブでありながら、どこか切なく、そして力強い——この曲は「夢」と「希望」を現実の中で手放さないすべての人の心に響く物語なのです。

2. 歌詞のバックグラウンド

Journeyは1970年代後半から活動していたアメリカのロックバンドで、元Santanaのメンバーであるギタリスト、ニール・ショーン(Neal Schon)を中心に結成されました。当初はプログレッシブなサウンドを志向していた彼らでしたが、1977年にスティーヴ・ペリー(Steve Perry)がボーカルとして加入してからは、よりメロディアスで大衆的なアリーナ・ロック路線へと舵を切ります。

「Don’t Stop Believin’」は、その新たなスタイルの完成形ともいえる楽曲で、スティーヴ・ペリー、ニール・ショーン、キーボーディストのジョナサン・ケイン(Jonathan Cain)の三人によって共作されました。ケインはこの曲の着想を、自身の父親が口にした「Don’t stop believin’」という言葉から得たと語っています。ミュージシャンとして苦境に立たされた時期、父は彼に「信じ続けろ」と助言し、その言葉がのちにこの曲のタイトルとコーラスとなったのです。

特筆すべきはこの曲の構造。一般的なポップソングがAメロ→Bメロ→サビという流れで構成されるのに対し、「Don’t Stop Believin’」ではサビが最後に登場するという異例の展開が用いられています。この“遅れて登場するカタルシス”が、聴き手に強い印象を残す要因のひとつとなっています。

リリース当時はBillboard Hot 100で9位とヒットしましたが、時代が進むにつれて再評価が進み、2000年代にはテレビドラマ『The Sopranos』の最終回や『Glee』などのメディア露出によって再ブレイクを果たし、今ではストリーミング時代においても圧倒的な再生数を誇る“時代を超えたクラシック”となっています。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に「Don’t Stop Believin’」の印象的な歌詞を抜粋し、日本語訳を添えて紹介します。

Just a small town girl
Livin’ in a lonely world
She took the midnight train goin’ anywhere

小さな町の少女
孤独な世界に生きている
彼女は真夜中の列車に飛び乗った どこへでも行けるように

Just a city boy
Born and raised in South Detroit
He took the midnight train goin’ anywhere

都会育ちの少年
南デトロイトで生まれ育った
彼もまた真夜中の列車に乗り込んだ どこへでも行けるように

Strangers waiting
Up and down the boulevard
Their shadows searching in the night

通りには見知らぬ人々が
上下に歩き回りながら
夜の中で何かを探している

Streetlights, people
Living just to find emotion
Hiding somewhere in the night

街灯と人々
感情を求めて生きている
夜のどこかに身を隠しながら

Don’t stop believin’
Hold on to that feelin’

信じることをやめないで
その感覚を手放さないで

Streetlights, people
街灯の下の人々よ

歌詞引用元: Genius – Don’t Stop Believin’

4. 歌詞の考察

「Don’t Stop Believin’」は、その詩的な歌詞構造と普遍的なメッセージ性によって、世代や国境を超えて多くの人々に受け入れられてきました。冒頭の「小さな町の少女」と「南デトロイト出身の少年」は、アメリカの典型的な若者像であり、無数の“自分の物語”をそこに投影できるような余白を持っています。彼らは特別な存在ではありません。だからこそ、リスナーの誰もがその物語の一部になれるのです。

Strangers waiting(見知らぬ人たちが待っている)」というフレーズが象徴するのは、人間の普遍的な孤独と、それでもなお誰かに出会えるかもしれないという希望。Jorja Smithのようなアーティストが現代的な孤独を繊細に描くのに対し、Journeyはその時代の感性で「孤独と希望」をドラマチックに鳴らしたのです。

また、「感情を求めて生きている」という一節は、人々がなぜ夜の街をさまようのか、なぜ夢を追うのかという問いに対する詩的な回答のようにも読めます。そこには、どれだけ現実が厳しくても「その先に何かがある」と信じることの尊さが込められています。

そして最後のコーラス「Don’t stop believin’」は、祈りにも似た反復で、リスナーに語りかけます。「もう少しだけ信じてみよう」「きっとまだ終わっていない」と。その一言は、ときに人生を変える力すら持っているのです。

歌詞引用元: Genius – Don’t Stop Believin’

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Eye of the Tiger by Survivor
    不屈の精神を象徴するアリーナ・ロックの代表作。困難を乗り越えようとするメッセージが「Don’t Stop Believin’」と共鳴する。

  • Livin’ on a Prayer by Bon Jovi
    労働者階級の若者たちが現実に立ち向かいながらも希望を捨てない姿を描いた、80年代ロックの金字塔。

  • Open Arms by Journey
    「Don’t Stop Believin’」と同じアルバムに収録されたバラードで、スティーヴ・ペリーのボーカルが際立つロマンティックな名曲。

  • The Power of Love by Huey Lewis and The News
    愛と信念を明るくエネルギッシュに描いたポップロック。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主題歌としても有名。

6. ポップカルチャーにおける永遠のアンセム

「Don’t Stop Believin’」は、単なるロックの名曲にとどまりません。テレビドラマ『The Sopranos』の最終回(2007年)で象徴的に使用され、突然の幕切れとともに世界中の注目を浴びたことで再ブレイクを果たしました。また、ミュージカルドラマ『Glee』ではパイロット版で取り上げられ、Z世代にも認知されるきっかけとなり、Spotifyでは数億回以上の再生回数を記録しています。

アメリカのスポーツイベントや結婚式、卒業式などでも頻繁に使用されるこの曲は、時代が変わっても“信じる力”の象徴として生き続けており、音楽の力で人々をつなげる「国民的アンセム」ともいえる存在です。

その真価は、誰かに向けた言葉でありながら、それがいつの間にか“自分自身へのメッセージ”になっている点にあります。「Don’t Stop Believin’」——この言葉が、どんな逆境の中でも心の中で鳴り響くかぎり、人生はまだ続いていくのです。

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