発売日: 2014年6月6日
ジャンル: フォークポップ、アコースティック
静かなる囁きが響く、人生の断片を紡いだPassengerの集大成
Whispers は、Passenger（本名：Mike Rosenberg）の6thアルバムであり、世界的な成功を収めた All the Little Lights（2012年）に続く重要な作品だ。前作のヒット曲 Let Her Go によって広がったファン層に向け、より洗練されたフォークポップサウンドを展開しながら、彼の持ち味であるストーリーテリングをさらに深化させている。
アルバムのタイトル「Whispers（囁き）」が示す通り、本作は人生の静かな瞬間や心の奥底にある感情を繊細に掬い取るような楽曲で構成されている。時にはユーモラスに、時には痛切に、Passengerは愛や人生、夢や喪失について語りかける。
全曲レビュー
1. Coins in a Fountain
カリブ音楽の影響を感じさせるリズムと、Passengerの温かい歌声が特徴的なオープニングトラック。幸せや夢を追い求めることの美しさを歌う、前向きなメッセージが込められている。
2. 27
27歳になった自身の人生を振り返る楽曲。シンガーソングライターとしての苦悩や、音楽業界に対する皮肉をユーモラスに描いており、軽快なメロディが印象的。
3. Heart’s on Fire
アルバムの中でも特にロマンティックなバラード。切ない恋の感情を表現した歌詞と、アコースティックギターの繊細な響きが美しく絡み合う。
4. Bullets
リズミカルで躍動感のあるナンバー。日常の中にある小さな勝利や敗北を描き、シンプルながらも力強いメッセージが込められている。
5. Golden Leaves
静かでエモーショナルな楽曲。秋の落ち葉のように消えゆく愛を歌い、Passengerのソフトなボーカルが悲哀を際立たせる。
6. Thunder
情熱的なリリックとエネルギッシュなサウンドが特徴の一曲。希望と決意を込めた歌詞が、アルバム全体の流れにダイナミズムを加えている。
7. Rolling Stone
旅と孤独をテーマにした楽曲。絶えず移動し続ける人生を「転がる石」に例え、Passenger特有の叙情的な視点で描いている。
8. Start a Fire
穏やかなメロディと共に、「何かを始める勇気」を歌うナンバー。心の奥に眠る情熱を呼び起こすような、力強くも優しい楽曲。
9. Whispers
タイトル曲にふさわしく、人生の「囁き」に耳を澄ませることの大切さを伝える。シンプルなアコースティックサウンドが、Passengerのリリックの美しさを際立たせる。
10. Riding to New York
本作の中でも特に心に残るストーリーテリングソング。末期がんを患った男性が、家族に会うために旅をするという実話を元にした楽曲で、Passengerの歌詞の力強さが際立っている。
11. Scare Away the Dark
アルバムの締めくくりにふさわしい楽曲。「スクリーンばかり見ていないで、もっと人生を生きよう」と、現代社会に対するメッセージを込めた一曲。Passengerらしい優しいユーモアと、温かい励ましが感じられる。
総評
Whispers は、Passengerが持つ語り部としての才能が存分に発揮されたアルバムだ。前作よりも楽曲のバリエーションが広がり、フォークポップの枠を超えてさまざまなスタイルを取り入れている。
特に「人生の一瞬を切り取るストーリーテリング」や、「シンプルな音楽の中に込められた深いメッセージ」というPassengerの強みが際立っており、じっくりと聴き込むほどにその魅力が染み渡る作品となっている。
おすすめのリスナー:
- 深みのある歌詞とアコースティックサウンドを求める人
- フォークポップやシンガーソングライター系の音楽が好きな人
- 人生について考えさせられる音楽を聴きたい人
おすすめアルバム
1. Ed Sheeran – x (2014)
Passengerと同時期に活躍したアーティストで、フォークポップの要素が強い作品。
2. Ben Howard – Every Kingdom (2011)
アコースティックギターを駆使したサウンドと、静かながらも力強い歌詞が魅力。
3. Vance Joy – Nation of Two (2018)
同じくストーリーテリングが際立つフォークポップ作品。Passengerの音楽を気に入る人には刺さるはず。
4. Glen Hansard – Rhythm and Repose (2012)
感情豊かなボーカルと、シンプルながらも奥深いサウンドが共鳴する作品。
5. Damien Rice – O (2002)
内省的なフォークの代表作。Passengerの持つ叙情性と通じる部分が多い。
Whispers は、単なるフォークアルバムではなく、人生の旅路に寄り添うような作品だ。日常の中でふと耳を傾けると、その歌詞の一つ一つが心に沁み込む。Passengerの音楽が好きなら、間違いなく心に残る一枚だろう。
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