
発売日: 2018年1月19日
ジャンル: フォークロック、ポップロック、オルタナティブロック
新たな挑戦と進化——Phillip Phillipsのパーソナルな復帰作
2012年の『American Idol』優勝をきっかけに華々しくデビューし、The World from the Side of the Moon(2012年)や Behind the Light(2014年)で成功を収めた Phillip Phillips。しかし、彼のキャリアは決して順風満帆ではなかった。本作 Collateral は、レーベルとの契約トラブルやアーティストとしての葛藤を乗り越えた末に生まれた作品であり、彼の音楽キャリアにおいて最もパーソナルな作品 となっている。
約4年ぶりの新作となる本作では、従来のフォークロックの要素を保ちつつも、ポップロックやオルタナティブロックの要素を強く取り入れ、よりエネルギッシュでダイナミックなサウンドへと進化している。個人的な経験や内省を反映した歌詞と、Phillipsの力強いボーカルが融合し、彼のアーティストとしての成長が感じられる一枚だ。
全曲レビュー
1. Magnetic
アルバムの幕開けを飾るエネルギッシュな楽曲。ファンキーなギターリフとリズミカルなビートが特徴で、Phillipsの新たな音楽的アプローチが感じられる。ポップな要素が強く、アルバムの中でもキャッチーな一曲。
2. Part of My Plan
フォークロックのテイストを残しつつも、シンセサウンドが加わり、よりモダンな雰囲気を持つ楽曲。軽快なリズムと希望に満ちた歌詞が印象的。
3. My Name
グルーヴ感のあるリズムとブルージーな要素が融合した楽曲。Phillipsのソウルフルなボーカルが際立ち、ジャズやファンクの影響も感じられる。
4. I Dare You
アップテンポなロックナンバー。力強いギターとダイナミックな展開が特徴で、ライブ映えする楽曲。
5. Sand Castles
アルバムの中でも特に感情的な楽曲で、愛と喪失をテーマにした歌詞が心に響く。アコースティックギターの繊細な音色が、Phillipsの内省的な一面を引き立てる。
6. Don’t Tell Me
ダークでエッジの効いたサウンドが特徴のトラック。Phillipsの新たな音楽性が感じられる実験的な楽曲で、緊張感のあるメロディが印象的。
7. Miles
本作のリードシングルであり、Phillipsの音楽スタイルを最もよく表している楽曲。アコースティックとエレクトリックを融合させたサウンドが特徴で、キャッチーなメロディと力強いメッセージが際立つ。
8. Dance with Me
アルバムの中で最もロマンティックなバラード。結婚式のために書かれた楽曲で、シンプルなアコースティックギターとストリングスが美しく絡み合う。Phillipsの優しい歌声が心に沁みる。
9. Love Junkie
ブルースの要素を取り入れた、グルーヴィーな楽曲。Phillipsのソウルフルなボーカルとギターリフが印象的で、新たな音楽的挑戦を感じさせる。
10. Her Mystery
アルバムの最後を飾る、幻想的で静かな楽曲。柔らかいアレンジと詩的な歌詞が、リスナーに余韻を残す。
総評
Collateral は、Phillip Phillipsにとって単なる3rdアルバムではなく、キャリアの岐路に立った彼が、自身の音楽的ルーツと向き合い、新たなスタイルを確立した作品 である。
前作 Behind the Light では、フォークロックの要素を保ちつつもよりダイナミックなサウンドへとシフトしたが、本作ではさらに多様な音楽的アプローチが試みられている。ブルース、ファンク、オルタナティブロックなどの影響を感じさせる楽曲が増え、Phillipsの表現力の幅が広がっている。
また、アルバム全体を通じて、個人的な経験や感情が色濃く反映されており、レーベルとのトラブルや結婚など、人生の転機が彼の音楽に大きな影響を与えていることがうかがえる。特に Miles や Dance with Me は、彼の人生の新たなフェーズを象徴する楽曲となっている。
おすすめのリスナー:
- Phillip Phillipsの初期作品を気に入っているが、より成熟した音楽を聴きたい人
- フォークロックだけでなく、ブルースやオルタナティブの要素を持つ音楽を求めている人
- Dave Matthews BandやJohn Mayerのような、ギターを主体としたアーティストが好きな人
おすすめアルバム
1. Dave Matthews Band – Come Tomorrow (2018)
Phillipsが影響を受けたDMBのアルバムで、ジャムバンド的な要素とフォークロックの融合が魅力。
2. John Mayer – The Search for Everything (2017)
ギターを前面に押し出したポップロックで、Phillipsの本作と共鳴する部分が多い。
3. Mumford & Sons – Delta (2018)
フォークの要素を保ちつつ、モダンなサウンドへとシフトした作品で、Collateral の方向性と似ている。
4. The Lumineers – III (2019)
ストーリーテリングに優れたフォークロック作品で、Phillipsの持つ叙情性と親和性が高い。
5. Vance Joy – Nation of Two (2018)
フォークポップの要素を持ちつつも、モダンなアプローチが光る作品で、Phillipsの本作と相性が良い。
Collateral は、Phillip Phillipsがアーティストとしての独自性を確立し、新たなステージへと進んだ作品だ。フォークロックの枠を超え、よりダイナミックなサウンドを求めるリスナーにとって、聴きごたえのあるアルバムとなっている。
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