
発売日: 2011年12月12日
ジャンル: インディーロック、ローファイ、パワーポップ
- 『Pinkerton』制作過程の記録——Rivers Cuomoの最も生々しいクリエイティブ・ジャーニー
- 全曲レビュー
- 1. Oh No, This Is Not For Me
- 2. I Can’t Break Your Heart Slow
- 3. Money Makes Me Happy
- 4. Lover In The Snow
- 5. I’m So Lonely
- 6. Getchoo (Pre-Pinkerton Version)
- 7. Lisa
- 8. Negativland
- 9. You Won’t Get With Me Tonight
- 10. Longtime Sunshine (Alternate Version)
- 11. When You’re Alone
- 12. Devotion (Pre-Pinkerton Version)
- 13. I Just Threw Out the Love of My Dreams (Pre-Rentals Version)
- 14. Tired of Sex (Early Version)
- 15. Superfriend
- 16. She’s Had a Girl
- 総評
- おすすめアルバム
『Pinkerton』制作過程の記録——Rivers Cuomoの最も生々しいクリエイティブ・ジャーニー
Alone III: The Pinkerton Years は、Weezer のフロントマン Rivers Cuomo による未発表音源集の第3弾であり、タイトルの通り 1994年から1997年にかけての『Pinkerton』制作時期に焦点を当てた作品 となっている。本作は、過去の Alone シリーズと異なり、Weezer の歴史上最もカルト的な評価を受ける『Pinkerton』の誕生と変遷を追う形で構成されており、ファンにとっては非常に貴重なアーカイブ的価値を持つ。
また、本作は単なる音源集ではなく、Cuomo の自伝的ノート The Pinkerton Diaries とセットでリリースされた。これにより、彼の創作過程や精神状態、当時の葛藤などがより深く理解できる構成となっている。
全曲レビュー
1. Oh No, This Is Not For Me
アルバムの冒頭を飾る未発表曲。アコースティックギター主体のシンプルな楽曲ながら、当時のCuomoの孤独感がにじみ出ている。
2. I Can’t Break Your Heart Slow
タイトルからもわかるように、切ない恋愛をテーマにしたバラード。『Pinkerton』に収録されてもおかしくないエモーショナルな楽曲。
3. Money Makes Me Happy
珍しく金銭をテーマにした曲で、ウィットに富んだ歌詞が特徴。Weezerの公式作品には見られないユーモラスな視点が興味深い。
4. Lover In The Snow
これまでの Alone シリーズにも登場した楽曲の別バージョン。『Pinkerton』の儚い恋愛テーマに通じる曲調が印象的。
5. I’m So Lonely
そのタイトル通り、Cuomoの孤独感をストレートに歌った曲。シンプルなコード進行と切実な歌詞が、彼の内面をリアルに映し出している。
6. Getchoo (Pre-Pinkerton Version)
『Pinkerton』収録曲の初期バージョン。オリジナルよりもローファイな質感が強く、荒々しさが際立つ。
7. Lisa
バンド形態ではなく、Cuomoが一人で録音したデモ音源。彼の個人的な感情がストレートに表現されている。
8. Negativland
タイトルの通り、ややネガティブな雰囲気を持つ楽曲。荒削りながらも、彼のソングライティングのセンスが光る。
9. You Won’t Get With Me Tonight
元々 Songs from the Black Hole のために書かれた楽曲で、ここでは初期バージョンを聴くことができる。
10. Longtime Sunshine (Alternate Version)
『Pinkerton』セッション時に書かれた楽曲の別バージョン。しっとりとしたアレンジが、楽曲の持つ切なさをさらに引き立てている。
11. When You’re Alone
そのタイトル通り、「孤独」をテーマにした曲。Cuomoの内面を赤裸々に描いた歌詞が印象的で、ファンにとっては興味深い一曲。
12. Devotion (Pre-Pinkerton Version)
『Pinkerton』に収録された「Devotion」の初期バージョン。最終的なバージョンとは異なるアレンジが施されており、楽曲の進化を知ることができる。
13. I Just Threw Out the Love of My Dreams (Pre-Rentals Version)
後に The Rentals(元WeezerのMatt Sharpのバンド)で完成された楽曲のデモバージョン。Cuomoバージョンならではの魅力がある。
14. Tired of Sex (Early Version)
『Pinkerton』のオープニングを飾る「Tired of Sex」の初期バージョン。より荒削りなアレンジが、当時のCuomoの苦悩をリアルに映し出している。
15. Superfriend
Songs from the Black Hole のために書かれた楽曲の一つ。スペーシーなアレンジが特徴的。
16. She’s Had a Girl
Cuomoのパーソナルなストーリーを歌った楽曲。ミニマルなアレンジが、歌詞の内容を際立たせる。
総評
Alone III: The Pinkerton Years は、単なる未発表音源集ではなく、『Pinkerton』というアルバムがどのように形成され、進化していったのかを知るための貴重な資料 となっている。
また、Cuomoがかつて構想していたが未完成に終わったロック・オペラ Songs from the Black Hole の断片も含まれており、彼のクリエイティブな試行錯誤がうかがえる。『Pinkerton』のファンにとっては必聴の作品であり、その誕生過程やCuomoの内面的な葛藤を深く知ることができる。
おすすめのリスナー:
- 『Pinkerton』が好きで、その制作過程に興味がある人
- Rivers Cuomoの創作プロセスや未発表楽曲を掘り下げたい人
- ローファイなデモ音源やインディーロックの生々しい質感を楽しめる人
おすすめアルバム
1. Weezer – Pinkerton (1996)
本作の主題とも言えるアルバム。これを聴いた後に Alone III を聴くと、より深い理解が得られる。
2. Weezer – Pinkerton Deluxe Edition (2010)
『Pinkerton』のリマスター版に加え、未発表音源が多数収録されている。
3. The Rentals – Return of the Rentals (1995)
Weezerの元メンバー Matt Sharp によるバンドで、Cuomoとの共通点が多い。
4. Elliott Smith – Either/Or (1997)
ローファイながらも、内省的な歌詞と感情的なサウンドが魅力的な作品。
5. Guided by Voices – Bee Thousand (1994)
DIY精神あふれるローファイ・ロックの代表作。Cuomoの宅録スタイルと共通する部分がある。
『Pinkerton』の誕生秘話を音楽で追体験できる Alone III は、Rivers Cuomoの最もパーソナルで赤裸々な作品のひとつだ。
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