
発売日: 2014年10月24日
ジャンル: ヒップホップ、ハードコアヒップホップ
- 攻撃性と社会批判の結晶――Run the Jewelsが頂点に立った傑作
- 全曲レビュー
- 1. Jeopardy
- 2. Oh My Darling Don’t Cry
- 3. Blockbuster Night Part 1
- 4. Close Your Eyes (And Count to Fuck) [feat. Zack de la Rocha]
- 5. All My Life
- 6. Lie, Cheat, Steal
- 7. Early [feat. BOOTS]
- 8. All Due Respect [feat. Travis Barker]
- 9. Love Again (Akinyele Back) [feat. Gangsta Boo]
- 10. Crown [feat. Diane Coffee]
- 11. Angel Duster
- 総評
- おすすめアルバム
攻撃性と社会批判の結晶――Run the Jewelsが頂点に立った傑作
2013年のデビュー作『Run the Jewels』で圧倒的な存在感を示したKiller MikeとEl-Pが、翌年リリースした『Run the Jewels 2』は、よりヘヴィで、より過激で、より緻密な作品へと進化を遂げた。ビートはさらにダークに、リリックはより鋭く、社会への怒りと破壊的なエネルギーを詰め込んだ本作は、ヒップホップシーンのみならず、音楽全体に衝撃を与えた。
Run the Jewelsの持つ政治的メッセージ、ユーモア、鋭い社会批判、ストリートのリアリティが、El-Pのカオティックなプロダクションと融合し、アンダーグラウンドヒップホップの枠を超えてロックやエレクトロニック・ミュージックのリスナーにも響く作品となった。
本作はPitchforkやRolling Stoneをはじめとする主要メディアから絶賛され、Run the Jewelsの名を決定的なものにした。
全曲レビュー
1. Jeopardy
強烈なオープニングトラック。Killer Mikeが「俺たちはヒップホップ界の救世主だ」と高らかに宣言し、El-Pのインダストリアルなビートが緊張感を煽る。
2. Oh My Darling Don’t Cry
ノイジーなシンセとヘヴィなベースが絡み合うトラック。El-PのフロウとKiller Mikeのリズミカルなラップの掛け合いがスムーズで、Run the Jewelsならではの緊迫感が漂う。
3. Blockbuster Night Part 1
無駄を削ぎ落としたミニマルなビートと、2人の強烈なパンチラインが光るハードコアトラック。「俺たちはここを支配する」というメッセージが全編にわたって響く。
4. Close Your Eyes (And Count to Fuck) [feat. Zack de la Rocha]
Rage Against the MachineのZack de la Rochaをフィーチャーした、アルバム屈指のハイライト。警察暴力と社会不正に対する怒りを爆発させたトラックで、ザックのシャウトがトラックをさらに過激なものにしている。
5. All My Life
比較的キャッチーなトラックながら、リリックには鋭い社会批判が込められている。エル・プイのビートが不穏な雰囲気を醸し出している。
6. Lie, Cheat, Steal
ダーティーなベースラインとアグレッシブなリリックが特徴的な一曲。Run the Jewelsの反骨精神がストレートに表現されている。
7. Early [feat. BOOTS]
警察の暴力と体制への不満をテーマにした、社会派トラック。静かに怒りを滲ませるKiller Mikeのリリックが強烈で、BOOTSのメロディックなフックが切なさを加えている。
8. All Due Respect [feat. Travis Barker]
Blink-182のTravis Barkerがドラムを担当した、ハードなトラック。ロック的なエネルギーを持ち、Run the Jewelsの破壊的なスタイルにマッチしている。
9. Love Again (Akinyele Back) [feat. Gangsta Boo]
Run the Jewelsのユーモラスな一面を見せる、エロティックなトラック。女性ラッパーGangsta Booのヴァースが強烈で、男性視点と女性視点の対比が面白い。
10. Crown [feat. Diane Coffee]
内省的なトラックで、Killer Mikeが過去の過ちを告白するリリックが印象的。トラック全体に漂う哀愁がアルバムの流れを引き締める。
11. Angel Duster
アルバムの締めくくりを飾るダークなトラック。Run the Jewelsの怒りと革命精神が最後まで炸裂する、壮絶なフィナーレ。
総評
『Run the Jewels 2』は、2010年代のヒップホップシーンにおいて最も影響力のある作品のひとつと言っても過言ではない。デビュー作の荒々しさをそのままに、より洗練されたプロダクション、緻密なリリック、鋭い社会批判を加え、ヒップホップの枠を超えた革命的な作品となった。
警察暴力、社会の腐敗、権力への抵抗、そしてヒップホップの持つ破壊力と創造力が凝縮された一枚であり、ただのアンダーグラウンドヒップホップにとどまらず、ロックファンや政治意識の高いリスナーにも訴えかけるアルバムである。
本作の成功により、Run the Jewelsは「現代のパンク精神を持つヒップホップデュオ」として確立し、次作『Run the Jewels 3』、さらには『Run the Jewels 4』へと続く道を開いた。
もし、政治的なメッセージを持ち、ハードコアなビートに乗せたアグレッシブなラップを求めているなら、本作は絶対に聴くべき作品だ。
おすすめアルバム
- Run the Jewels – Run the Jewels 3 (2016)
- 本作をさらに発展させ、よりシリアスで壮大なスケールに仕上げたアルバム。
- Public Enemy – Fear of a Black Planet (1990)
- 政治的なメッセージと攻撃的なビートの融合。Run the Jewelsのルーツのひとつ。
- Kanye West – Yeezus (2013)
- インダストリアルなプロダクションと社会批判的なリリックが、『RTJ2』と共通する部分が多い。
- Rage Against the Machine – Rage Against the Machine (1992)
- ザック・デ・ラ・ロッチャが参加したこともあり、Run the Jewelsの精神に通じる作品。
- Death Grips – The Money Store (2012)
- 実験的なヒップホップとアグレッシブなエネルギーを求めるなら必聴の一枚。
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- 実験的なヒップホップとアグレッシブなエネルギーを求めるなら必聴の一枚。
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