アルバムレビュー：Laughter by Ian Dury & The Blockheads

発売日: 1980年11月
ジャンル: パブロック、ニューウェーブ

Laughterは、イアン・デューリー＆ザ・ブロックヘッズの3枚目のスタジオアルバムであり、前作のファンキーで軽快なサウンドから一転して、よりダークで内省的なトーンが強調された作品だ。リリース当時、バンド内の関係やデューリーの健康問題など、さまざまな困難に直面していた影響もあり、アルバム全体には一種の緊張感や疲労感が漂っている。それでも、デューリーの風刺的なユーモアと独自の語り口は健在で、ザ・ブロックヘッズの演奏も緊密でエネルギッシュだ。ファンキーさはやや影を潜め、ニューウェーブの冷たさとパンクのエッジが際立つ作品となっている。

各曲ごとの解説:

1. Superman’s Big Sister
   　アルバムのオープニングトラックは、キャッチーでダンサブルなファンキーサウンドが特徴的。デューリーの皮肉に満ちた歌詞は、スーパーヒーローの概念を風刺的に扱っており、楽曲全体に軽快さが漂っている。
2. Pardon
   　ファンキーなベースラインがリードする一曲で、日常生活の些細なイライラや不満をコミカルに描いている。軽快なリズムとユーモラスな歌詞が、アルバムの中でもポップな仕上がりとなっている。
3. Delusions of Grandeur
   　タイトル通り、自らを過大評価する人物を皮肉った歌詞が印象的な楽曲。ニューウェーブ的なシンセサウンドが、デューリーの鋭い視点を引き立てており、冷たく控えめなアレンジが曲全体に独特な緊張感をもたらしている。
4. Yes & No (Paula)
   　ポップで軽やかなメロディが魅力的なラブソングで、デューリーの軽妙な語り口が際立っている。明るい曲調とは対照的に、歌詞は恋愛の複雑さや混乱を描いており、シニカルなユーモアが光る。
5. Dance of the Crackpots
   　ファンキーでグルーヴィーなビートが特徴のトラック。狂気とユーモアが交錯するデューリーの歌詞が、リズミカルなアレンジと絶妙に絡み合い、楽曲全体を支えている。
6. Over the Points
   　シンプルなギターワークと控えめなリズムが心地よい一曲。歌詞は、日常生活の中で感じる疎外感や不安を描いており、デューリーの内省的な側面が感じられる。
7. (Take Your Elbow out of the Soup) You’re Sitting on the Chicken
   　タイトル通り、ユーモアが全面に出たコミカルな楽曲。奇抜なタイトルと歌詞が、デューリー特有の風刺精神を反映しており、全体的に軽快でポップなトラックだ。
8. Uncoolohol
   　アルコール依存症をテーマにした楽曲で、シンプルなビートと控えめなサウンドが特徴的。デューリーの歌詞はシリアスなテーマを扱いながらも、皮肉とウィットに富んだ表現が随所に見られる。
9. Hey, Hey, Take Me Away
   　エネルギッシュなギターリフとファンキーなリズムが印象的な曲で、逃避願望や自由への憧れをテーマにしている。パンク的な攻撃性が感じられ、ザ・ブロックヘッズのタイトな演奏が光る。
10. Manic Depression (Jimi)
    　ジミ・ヘンドリックスにインスパイアされた楽曲で、メンタルヘルスをテーマにしている。ニューウェーブの影響が強いシンセサウンドが、デューリーの歌詞のダークなトーンと調和している。
11. Oh Mr. Peanut
    　コミカルで軽妙な楽曲で、デューリーの風刺的な歌詞が際立っている。ポップなサウンドの中に、社会批判や人間の弱さが描かれており、シンプルながらも深みのある一曲だ。
12. Fucking Ada
    　アルバムのラストを飾るバラードで、デューリーの内省的で感情的な側面が強く表れている。シンプルなアコースティックギターの伴奏に乗せて、彼の感情が静かに語られるこの曲は、アルバム全体を通して最も深い余韻を残す。

アルバム総評:

Laughterは、イアン・デューリーにとって試練の時期にリリースされたアルバムであり、その反映として、より内省的でシリアスなトーンが強く感じられる作品だ。ファンキーでリズミカルなサウンドが持ち味である一方、ニューウェーブ的な冷たさやパンク的なエネルギーが加わり、彼の音楽的な幅広さが表現されている。ザ・ブロックヘッズの演奏も緊密で、デューリーのユーモアと風刺精神を支えるサウンドとして非常に機能している。特に「Fucking Ada」などの曲では、デューリーの感情が強く表現されており、アルバム全体に深みを与えている。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

1. New Boots and Panties!! by Ian Dury
   デビューアルバムで、デューリーのユーモアと風刺が詰まった作品。Laughterのルーツを感じられる、パブロックの名盤。
2. The Correct Use of Soap by Magazine
   ニューウェーブとポストパンクを融合させたアルバムで、シニカルな歌詞と洗練されたサウンドが魅力。デューリーのニューウェーブ的な要素を好むリスナーにおすすめ。
3. Sandinista! by The Clash
   パンクとファンク、レゲエなど多様なジャンルを融合させたアルバム。社会的なテーマを扱いつつも、音楽的な幅広さが特徴で、デューリーの実験的な一面と共鳴する。
4. Look Sharp! by Joe Jackson
   パンクとニューウェーブを融合させたエネルギッシュな作品。デューリーのユーモアと鋭い歌詞に共感するリスナーにはぴったり。
5. Fear of Music by Talking Heads
   実験的なサウンドと社会的テーマを扱ったアルバム。デューリーの内省的な歌詞やニューウェーブ的なサウンドに共鳴するリスナーにおすすめ。