発売日: 1991年7月2日
ジャンル: ポップ・ロック、オルタナティブ・ロック
Woodfaceは、Crowded Houseが1991年に発表した3作目のスタジオアルバムで、バンドの音楽的な多様性と成熟を示す傑作である。ニール・フィンの兄、ティム・フィンが一時的にバンドに加入し、アルバム制作に参加したことが最大の特徴だ。フィン兄弟の卓越したソングライティングとハーモニーが融合し、このアルバムはこれまで以上に豊かな音楽的テクスチャを持つ作品となった。
プロデュースはMitchell Froomが手掛け、前作のダークなトーンから一転し、Woodfaceではより軽やかで遊び心のある楽曲が多く収録されている。しかしながら、軽快なサウンドの裏側には、人生や人間関係における複雑な感情が織り込まれている。キャッチーなメロディと深い歌詞が絶妙に調和した楽曲群は、リスナーの心に強く響く。本作は、商業的にも批評的にも成功を収め、「Weather with You」や「Four Seasons in One Day」など、今なお愛される楽曲が多数収録されている。
トラックごとの解説
1. Chocolate Cake
アルバム冒頭を飾るユーモラスな楽曲で、アメリカ文化や消費主義への皮肉が込められている。跳ねるようなピアノリフと軽快なリズムが楽しい一方、鋭い風刺を含む歌詞が印象に残る。「The excess of fat on your American bones」というラインは、リスナーに軽い衝撃を与える。
2. It’s Only Natural
フィン兄弟のハーモニーが際立つ明るいポップソング。恋愛のアップダウンをテーマにしながらも、軽やかなメロディでポジティブな雰囲気を醸し出す。アコースティックギターが楽曲に温かみを加え、サビのキャッチーさが耳に残る。
3. Fall at Your Feet
アルバムの中でも特に感情的な楽曲で、ニール・フィンのソングライティングの真髄が感じられるバラードだ。シンプルなアレンジが歌詞とボーカルの美しさを引き立てている。「Whenever I fall at your feet」というフレーズが心に響き、愛の脆さと誠実さを描いている。
4. Tall Trees
軽快なリズムが心地よいミッドテンポのロックナンバー。歌詞は、変化と成長への願望を表現しており、どこか高揚感を与えてくれる。
5. Weather with You
Crowded Houseの代表曲であり、アルバムのハイライト。ギターリフとアコースティックなサウンドが調和した、リラックスした雰囲気の楽曲だ。「Everywhere you go, always take the weather with you」という詩的な歌詞が印象的で、人間の感情や環境がどこへ行ってもついて回るという普遍的なテーマを描いている。
6. Whispers and Moans
ミステリアスで親密な雰囲気を持つ楽曲。静かなギターと繊細なボーカルが特徴で、愛と秘密をテーマにした歌詞が深い余韻を残す。
7. Four Seasons in One Day
美しいメロディと詩的な歌詞が際立つバラードで、フィン兄弟のハーモニーが最大限に活かされた一曲。メロディの移り変わりが「一日の中に四つの季節がある」というテーマに見事に対応しており、聴くたびに新しい発見がある。
8. There Goes God
軽快なリズムと皮肉たっぷりの歌詞が特徴の楽曲。宗教や信仰を風刺しつつ、ユーモアを交えた表現が印象的だ。
9. Fame Is
ファンキーでアップテンポなナンバー。名声や名誉の虚しさを描いた歌詞が鋭い。ギターリフとベースラインが楽曲を支え、独特のリズム感が楽しい。
10. All I Ask
シンプルながらも感動的なバラードで、愛と許しをテーマにした歌詞が心に響く。ピアノとストリングスのアレンジがドラマチックで、アルバムの中でもひときわ異彩を放つ一曲。
11. As Sure as I Am
リズムの変化が楽しい軽快な曲。リリックには信念や約束が込められ、聴くたびに元気をもらえる。
12. Italian Plastic
ドラマーのポール・ヘスターがメインボーカルを務める、ユーモラスで陽気な楽曲。遊び心のある歌詞と軽やかなアレンジが印象的。
13. She Goes On
静かで美しいバラード。亡くなった愛する人への想いを描いており、深い感動を呼び起こす。「She goes on and on」というフレーズが余韻を残す。
14. How Will You Go
アルバムの締めくくりにふさわしい、感動的な楽曲。別れと再出発をテーマにした歌詞が、聴き手に希望をもたらす。「How will you go with nothing to show」という問いかけが心に響く。
アルバム総評
Woodfaceは、Crowded Houseの音楽的な進化とフィン兄弟の化学反応を示す重要なアルバムだ。ポップでキャッチーな楽曲から感情的なバラードまで、幅広い音楽性を持ちながらも統一感がある。特に「Weather with You」や「Four Seasons in One Day」は、バンドの代表曲として広く知られ、時代を超えて愛され続けている。遊び心と深い感情表現が共存するこのアルバムは、Crowded Houseのキャリアの中でも頂点と言えるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Graceland by Paul Simon
リズミカルでメロディアスなサウンドが共通する。特にアコースティックな楽器の使い方が似ており、詩的な歌詞も楽しめる。
Rumours by Fleetwood Mac
個々のメンバーのハーモニーと、ポップでありながら深い楽曲が共通点。感情豊かなアルバムとしてもおすすめ。
So by Peter Gabriel
実験的ながらもポップなサウンドが融合している。キャッチーな曲と深いテーマが好きなリスナーにぴったり。
Automatic for the People by R.E.M.
メロディと歌詞の美しさが際立つアルバム。特に静謐な楽曲は、Woodfaceの雰囲気と重なる部分が多い。
Out of Time by R.E.M.
カジュアルなポップロックと内省的なバラードが混在しており、幅広い音楽性が共通する。
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