
1. 歌詞の概要
「We Are All Prostitutes」は、イギリスのポストパンクバンド The Pop Group によって1979年にリリースされたシングルで、バンドの最も象徴的な楽曲の一つです。この曲は、消費主義、資本主義、政治腐敗といった社会の構造を激しく批判し、挑発的でラディカルなメッセージを打ち出しています。
タイトルの「私たちは皆売春婦だ」というフレーズは、社会が金銭によって動かされ、人々が自分の信念や価値を売っていることを象徴しています。歌詞の中では、現代社会における「自由」と「道徳」がすでに崩壊し、人々が資本主義の奴隷になっているという痛烈な批判が展開されています。
この曲の激しいメッセージとアグレッシブなサウンドは、1970年代後半から1980年代初頭のポストパンクの特徴を色濃く反映しており、バンドの持つ政治的な姿勢を強く表現した作品として評価されています。
2. 歌詞のバックグラウンド
The Pop Groupは、1977年にイギリス・ブリストルで結成されたポストパンクバンドで、従来のパンクロックよりもさらに実験的なアプローチを取り入れ、ファンク、ジャズ、ノイズ、ダブなどの要素を融合させた独自のサウンドを築きました。彼らの音楽は単なるロックではなく、政治的・社会的なメッセージを伴った「闘争の音楽」としての側面を持っていました。
「We Are All Prostitutes」は、デビューアルバム 『Y』 (1979) の直後にリリースされたシングルで、バンドの社会批判的なスタンスをさらに強調する作品となりました。この曲は、当時のイギリス社会における サッチャリズムの台頭、経済格差の拡大、消費文化の支配 などを背景に、激しい怒りと抗議の声を表現したものです。
音楽的には、ギターのノイズ、金属的なビート、フリージャズ的な混沌とした要素 を取り入れた実験的なサウンドが特徴で、Mark Stewart(ボーカル)の叫ぶような歌い方とともに、聴く者に強烈なインパクトを与えます。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に、「We Are All Prostitutes」の代表的な歌詞の一部を抜粋し、和訳を添えます。
We are all prostitutes
Everyone has their price
And you too will learn to live the lie
私たちは皆売春婦だ
誰にでも値段がつけられる
そして君もやがて嘘の中で生きることを学ぶだろうThis world is not my home
This world is not my home
こんな世界は俺の居場所じゃない
こんな世界は俺の居場所じゃないThe free market is perfectly natural
Do you think that I’m some kind of animal?
自由市場は完全に自然なもの?
俺が獣にでも見えるのか?
歌詞の全文はこちらで確認できます。
4. 歌詞の考察
「We Are All Prostitutes」は、資本主義社会における人々の生き方を鋭く批判し、現代社会が道徳を失い、すべてが金銭で取引される世界になってしまったことを訴えています。
特に「Everyone has their price(誰にでも値段がつけられる)」というラインは、人々が金のために信念を曲げ、権力に従属する姿を表現しており、当時のイギリス社会だけでなく、現代のグローバル経済にも通じる普遍的なテーマを扱っています。
また、「The free market is perfectly natural(自由市場は完全に自然なもの?)」というフレーズは、自由市場経済の原則に対する疑問を投げかけ、そこに隠された搾取の構造を暴き出そうとする意図が感じられます。この部分では、資本主義が一見「自然なもの」として受け入れられているが、実際には多くの人々が犠牲になっているというメッセージが込められています。
このように、「We Are All Prostitutes」は単なる反体制のパンクソングではなく、社会全体に対する強烈なアンチテーゼとして機能しています。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Nag Nag Nag” by Cabaret Voltaire
ポストパンクとインダストリアルサウンドの融合で、攻撃的な社会批判を展開する楽曲。 - “Public Image” by Public Image Ltd.
ポストパンクのパイオニア、ジョン・ライドン率いるPiLの代表曲。 - “Damaged Goods” by Gang of Four
消費社会と人間関係を批判したポストパンクの名曲。 - “Contort Yourself” by James Chance and the Contortions
フリージャズとノーウェーブの要素を融合させた破壊的な楽曲。 - “Death Disco” by Public Image Ltd.
ポストパンクの中でも特に実験的な楽曲で、社会的な痛みを音楽で表現。
6. 「We Are All Prostitutes」の影響とLegacy
「We Are All Prostitutes」は、ポストパンクシーンの中でも特にラディカルな楽曲として知られ、後のパンク、インダストリアル、ノイズロック、エクスペリメンタルミュージックのアーティストたちに大きな影響を与えました。
特に、Rage Against the Machine、Nine Inch Nails、Fugazi、Sonic Youth など、政治的メッセージを強く打ち出すアーティストたちは、この楽曲からインスピレーションを受けたとされています。また、2010年代に入っても、この曲の持つメッセージ性は色褪せることなく、資本主義の矛盾を批判する運動(例:オキュパイ・ウォールストリート運動など)の中でも引用されることがありました。
さらに、2010年のThe Pop Groupの再結成ツアー でもこの楽曲はセットリストに組み込まれ、そのアグレッシブなサウンドとメッセージが現在でも通用することを証明しました。
結論
「We Are All Prostitutes」は、1979年当時の社会に対する怒りを爆発させた楽曲であると同時に、現代社会においても通じる鋭い批評性を持った作品です。その過激なメッセージと音楽性は、今なお強いインパクトを持ち続け、ポストパンクの名曲として歴史に刻まれています。
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