アルバムレビュー：Version by Mark Ronson

発売日: 2007年4月16日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、ファンク、R&B

クラシックな楽曲を再構築し、新たな命を吹き込んだカバーアルバム
全曲レビュー
総評
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クラシックな楽曲を再構築し、新たな命を吹き込んだカバーアルバム

2007年にリリースされたVersionは、プロデューサー／DJのMark Ronsonが手掛けたユニークなカバーアルバムであり、往年の名曲をソウル／ファンク／ブラスアレンジで大胆にリメイクした作品だ。本作は、Amy WinehouseやLily Allenをはじめとするイギリスのアーティストたちを多数フィーチャーし、ヴィンテージな雰囲気とモダンなプロダクションを融合させた個性的なサウンドが特徴となっている。

Ronsonは、1960〜70年代のモータウンやソウルの影響を受けながらも、ヒップホップやエレクトロの要素を取り入れ、オールドスクールと新しいサウンドを見事にミックス。特に「Valerie」は、Amy Winehouseのパフォーマンスによってアルバム最大のヒットとなり、現在もRonsonの代表作として愛され続けている。

全曲レビュー

1. God Put a Smile upon Your Face (feat. The Daptone Horns)

Coldplayの楽曲をファンク／ブラスアレンジで大胆に再解釈。ホーンセクションが前面に出たジャジーなアプローチが、オリジナルとは全く異なる雰囲気を生み出している。Ronsonの「クラシックを新たな形で蘇らせる」というコンセプトを象徴する一曲。

2. Oh My God (feat. Lily Allen)

Kaiser Chiefsのロックナンバーを、Lily Allenのキュートなボーカルでポップにアレンジ。スカとレゲエのリズムを取り入れた軽快なサウンドが魅力。

3. Stop Me (feat. Daniel Merriweather)

The Smithsの「Stop Me If You Think You’ve Heard This One Before」を、ソウルフルなボーカルとストリングスアレンジで再構築。Daniel Merriweatherのエモーショナルな歌声が映える楽曲で、本作のリードシングルにもなった。オリジナルのメランコリックな雰囲気を残しつつ、ファンク＆ソウルに昇華させた名カバー。

4. Toxic (Instrumental)

Britney Spearsのヒット曲をインストゥルメンタルでカバー。ブラスセクションが主役となり、オリジナルのエレクトロな雰囲気をヴィンテージジャズ風にアレンジしたユニークなトラック。

5. Valerie (feat. Amy Winehouse)

本作の最大のハイライトであり、Ronsonの代表曲。The Zutonsのオリジナルを、Amy Winehouseのパワフルかつソウルフルなボーカルで蘇らせた名カバー。モータウンサウンドとWinehouseのジャジーな歌唱が見事に融合し、世界的なヒットとなった。

6. Apply Some Pressure (feat. Paul Smith)

Maxïmo Parkの楽曲を、よりファンキーなアレンジでカバー。ブラスとグルーヴィーなリズムが特徴的で、原曲のインディーロック感を残しつつ、よりリッチなサウンドに仕上げられている。

7. Inversion

短いインストゥルメンタル曲。ブレイクビーツとオーケストラのサウンドが融合した実験的なトラックで、アルバム全体の雰囲気をつなぐブリッジのような役割を果たしている。

8. Pretty Green (feat. Santo Gold)

The Jamのパンクナンバーを、Santo Gold（Santigold）のボーカルでダブ風に再構築。レゲエのリズムとファンキーなアレンジが特徴的で、オリジナルとは全く異なる雰囲気を生み出している。

9. Just (feat. Phantom Planet)

Radioheadの「Just」を、ファンキーなホーンセクションとジャジーなビートでリメイク。Phantom Planetのボーカルが新鮮な印象を与え、オリジナルの緊張感を残しながらもグルーヴィーなサウンドに仕上げられている。

10. Amy

Amy WinehouseがRonsonのために書いたインストゥルメンタルトラック。ジャズピアノとストリングスが印象的な美しい楽曲で、彼女の音楽性がいかにRonsonとマッチしていたかを感じさせる。

11. The Only One I Know (feat. Robbie Williams)

The Charlatansのヒット曲を、Robbie Williamsのヴォーカルでカバー。オリジナルのマッドチェスター的な要素を残しつつ、よりクラシックなソウル風アレンジを加えている。

12. Diversion

「Inversion」と対になるインストゥルメンタルトラック。ファンクビートとシネマティックなストリングスが融合したユニークなサウンド。

13. L.S.F. (feat. Kasabian)

Kasabianのロックナンバーをよりソウルフルなアレンジでリメイク。原曲のダークな雰囲気を残しつつ、Ronsonらしいホーンセクションとグルーヴ感が加えられている。

総評

Versionは、Mark Ronsonがプロデューサーとしての才能を最大限に発揮し、クラシックな楽曲をまったく新しい形に変えたカバーアルバムである。ヒップホップやエレクトロの要素を排し、ヴィンテージなソウル／ファンクのアプローチで楽曲をリメイクするというコンセプトは、当時のポップシーンにおいて非常にユニークだった。

特に「Valerie」は、Amy Winehouseのボーカルによって完全に新しい命を吹き込まれ、今やオリジナルよりも広く知られるほどの代表曲となった。また、The SmithsやRadioheadの楽曲を大胆にアレンジし、新たな視点からロッククラシックを楽しめる作品となっている。

Ronsonは、本作で確立したスタイルを基盤に、その後のBack to Black（Amy Winehouse）やUptown Special（2015年）へと発展させ、現代のポップシーンに大きな影響を与えるプロデューサーへと進化していく。