発売日: 2011年10月17日
ジャンル: インディーロック、ドリームポップ、ポストパンクリバイバル
ロンドンを拠点とする4人組バンド、Veronica Fallsのセルフタイトル・デビューアルバムは、2011年にリリースされるや否や、インディーロックシーンで注目を集めた。彼らの音楽は、80年代のポストパンクと60年代のハーモニーポップを融合させたサウンドが特徴であり、そこに現代的なメランコリックな雰囲気を加えている。アルバム全体に漂うダークな美学と、甘さと苦さが同居するメロディが、どこか懐かしくも新しい感覚を生み出している。
Veronica Fallsは、ギタリストのジェームズ・ホーア、ドラマーのパトリック・ドイル、ボーカリスト兼ギタリストのロクサンヌ・クリフォード、そしてベーシストのマリオン・ハーバートによるバンドで、デビューアルバムでは、恋愛、死、孤独といった普遍的なテーマを取り上げつつ、ユーモアや皮肉を巧みに織り交ぜている。シンプルでキャッチーな楽曲の裏には、緻密なアレンジが潜んでおり、リスナーを何度も引き戻す中毒性を持つ。
トラック解説
1. Found Love in a Graveyard
アルバムを象徴するオープニングトラックは、軽快なギターリフとメランコリックなメロディが融合した楽曲。幽霊との恋を描くユニークな歌詞が際立つが、そのテーマは切なさと喜びが交錯する独特の感覚を生み出している。アップテンポでありながら、どこか悲哀を感じさせる。
2. Right Side of My Brain
不安定さと内省的な歌詞が特徴のミッドテンポトラック。歪んだギターサウンドと、ロクサンヌの透き通るボーカルが心の葛藤を表現している。「I’m on the right side of my brain」というフレーズが、楽曲全体のテーマを象徴する。
3. The Fountain
疾走感のあるドラムと繊細なギターワークが楽曲を支える。水にまつわるイメージが繰り返される歌詞には、浄化や再生といったテーマが込められている。シンプルな構成ながら、聴き手を引き込むメロディが印象的だ。
4. Misery
タイトル通り、楽曲全体に漂う憂鬱なトーンが特徴的。コーラス部分の「Misery, come and stay with me」という繰り返しが、自己破壊的な感情を増幅させる。ギターとベースの絡みが絶妙で、バンドの技術の高さが光る。
5. Bad Feeling
アルバムの中でも特に際立つ一曲。キャッチーなギターリフと対照的に、歌詞は不安や恐れを描いている。軽快なサウンドの裏に潜むダークな要素が、バンドの独特な魅力を体現している。
6. Stephen
ミニマルなアレンジが特徴のバラード風トラック。歌詞は一人の人物との複雑な関係性を描いており、感情の混ざり合いが鮮やかに表現されている。ロクサンヌのボーカルが楽曲に温かみを与える。
7. Beachy Head
スリリングなギターラインが曲全体を引っ張るアップテンポナンバー。自殺の名所として知られるイギリスの断崖「ビーチーヘッド」を題材にした歌詞は、暗いテーマながらも美しく表現されており、バンドのブラックユーモアが感じられる。
8. All Eyes on You
シンプルなギターリフとドラムが楽曲を支え、繰り返される「All eyes on you」というフレーズが耳に残る。歌詞には注目されることへの緊張と、同時にその状況への満足が描かれている。
9. The Box
軽やかなメロディとテンポ感が楽曲を特徴付ける。歌詞には閉塞感と解放のテーマが込められており、ミニマルな編曲が楽曲全体に緊張感を与えている。
10. Wedding Day
シンプルでありながらも心に残るメロディが光る一曲。結婚式の日の情景を描きつつ、実際にはもっと複雑な感情を抱えている主人公の心情が、軽やかなリズムの裏に潜む。
11. Veronica Falls
セルフタイトルの楽曲で、アルバムの締めくくりにふさわしい一曲。メロディとアレンジはシンプルだが、その中にドラマチックな展開が凝縮されており、バンドの核となる美学を感じさせる。
アルバム総評
Veronica Fallsのセルフタイトルデビューアルバムは、ポップでありながらダークな感情を巧みに織り交ぜた一枚である。バンドのシンプルながら洗練された演奏と、ロクサンヌ・クリフォードのボーカルが醸し出す儚さが、聴く者に深い印象を与える。幽霊、死、孤独といったテーマを扱いながらも、決して重たくなりすぎない軽やかなアプローチが魅力的だ。このアルバムは、ポストパンクやドリームポップの要素を愛するリスナーにとって、まさに必聴の一枚である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Alvvays – Alvvays
同じく甘酸っぱいメロディとメランコリックな雰囲気を持つインディーポップの名作。
The Pains of Being Pure at Heart – The Pains of Being Pure at Heart
キャッチーなメロディとドリーミーなサウンドが、Veronica Fallsと通じる魅力を持つ。
Beach Fossils – Clash the Truth
軽やかなギターとノスタルジックな雰囲気が共通しており、Veronica Fallsのファンに響くはず。
The Drums – The Drums
ポストパンクとサーフロックの融合が特徴で、Veronica Fallsの持つ軽快さに通じる作品。
Best Coast – Crazy for You
恋愛の甘さと苦さをキャッチーに描いたアルバムで、Veronica Fallsのメランコリックなポップ性を楽しめる。
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