アルバムレビュー：Turn! Turn! Turn! by The Byrds

発売日: 1965年12月6日
ジャンル: フォーク・ロック, ロック

『Turn! Turn! Turn!』は、The Byrdsがリリースした2枚目のスタジオアルバムであり、フォーク・ロックの代表作としてその名を歴史に刻んだ作品だ。前作『Mr. Tambourine Man』の成功を受け、彼らは引き続きボブ・ディランの影響を強く受けながらも、より成熟したサウンドとオリジナリティを追求している。このアルバムのタイトル曲「Turn! Turn! Turn!」は、ピート・シーガーが作詞作曲した1960年代の反戦歌であり、エクレシアステス（伝道の書）の一節を引用した歌詞が特徴的だ。The Byrdsのジャングリーな12弦ギターと美しいハーモニーにより、この曲はアメリカのビルボードチャートで1位を獲得し、フォーク・ロックの象徴となった。

ロジャー・マッギンの12弦ギターサウンドは、前作から引き続き輝きを放っており、ジーン・クラークの優れたソングライティングも健在だ。アルバム全体を通して、ボブ・ディランのカバーとオリジナル曲がバランス良く並んでおり、The Byrdsがアーティストとしての進化を遂げていることがうかがえる。

それでは、『Turn! Turn! Turn!』のトラックを順に見ていこう。

1. Turn! Turn! Turn! (To Everything There Is a Season)

アルバムのタイトル曲であり、ピート・シーガーの曲をアレンジしたこのトラックは、The Byrdsの代表作となったフォーク・ロックのクラシックだ。エクレシアステスの一節を歌詞に用いたこの曲は、平和と変化をテーマにしており、1960年代の社会的な状況と深く結びついている。ロジャー・マッギンの12弦ギターが曲全体を支配し、美しいハーモニーが加わることで、荘厳で感動的なサウンドを生み出している。

2. It Won’t Be Wrong

このトラックは、ジーン・クラークとロジャー・マッギンの共作で、テンポの速いロック調のナンバーだ。ギターリフがリードし、ビートがエネルギッシュに進む中で、クラークの歌詞はシンプルながらも力強い。恋愛における情熱と焦燥感が描かれており、ポップでキャッチーなメロディが印象的だ。

3. Set You Free This Time

ジーン・クラークが手掛けたこの曲は、アルバムの中でも特に感情的なバラードだ。失恋の痛みを描いた歌詞が切なく響き、クラークのソングライティングの繊細さが光る。ゆったりとしたテンポと、穏やかなギターが心に残る一曲で、The Byrdsのフォーク的な側面が強く表れている。

4. Lay Down Your Weary Tune

ボブ・ディランのカバー曲で、元々はディランの未発表曲だったが、The Byrdsがフォーク・ロック風にアレンジしたバージョンが収録されている。ディランの詩的な歌詞とThe Byrdsの美しいハーモニーが相まって、壮大でメランコリックな雰囲気を醸し出している。

5. He Was a Friend of Mine

アメリカン・フォークソングを基にしたこの曲は、暗殺されたジョン・F・ケネディ大統領に捧げられている。歌詞には失われた友情や喪失感が描かれ、静かな悲しみが曲全体に漂っている。シンプルなアレンジながらも感情が込められた一曲で、The Byrdsのフォーク音楽への敬意が感じられる。

6. The World Turns All Around Her

ジーン・クラークによるこの曲は、恋愛の葛藤と未練をテーマにしたポップなナンバーだ。ギターリフがリードし、軽快なメロディが耳に残る。クラークのソングライティングが光り、アルバムの中でも明るいトーンを持った一曲だ。

7. Satisfied Mind

アメリカのカントリー・スタンダードをカバーしたこの曲は、物質的な豊かさよりも心の満足が重要だというメッセージを込めている。The Byrdsのフォーク・ロックアレンジが見事にマッチしており、シンプルなギターサウンドとハーモニーが優しく響く。

8. If You’re Gone

ジーン・クラークが手掛けたこのバラードは、アルバムの中でも特に感傷的なトラックで、恋人を失うことへの恐れや不安が歌詞に込められている。ゆっくりと進行するメロディが感情を深め、12弦ギターのリフが曲全体に温かみを与えている。

9. The Times They Are a-Changin’

ボブ・ディランの有名な曲をカバーしたこのトラックは、時代の変化と社会的な進歩を歌ったディランのメッセージをThe Byrdsの美しいハーモニーとともに再解釈したものだ。フォーク・ロック的なサウンドが強調され、時代を象徴する一曲となっている。

10. Wait and See

ロジャー・マッギンとデヴィッド・クロスビーの共作によるこのトラックは、テンポの速いエネルギッシュなナンバーで、ロック色が強い。ギターリフが印象的で、シンプルな歌詞とダイナミックなサウンドが心地よく響く。The Byrdsのポップロック的な要素が楽しめる。

11. Oh! Susannah

アルバムの最後を飾るのは、スティーブン・フォスターの有名なアメリカン・フォークソングをカバーした「Oh! Susannah」。The Byrdsはこの古典的な楽曲をフォーク・ロック風にアレンジし、軽快で楽しいサウンドに仕上げている。シンプルでありながらも、新しい解釈が加わった一曲だ。

アルバム総評

『Turn! Turn! Turn!』は、The Byrdsがフォーク・ロックのジャンルを確立し、さらなる成熟を遂げた作品だ。ボブ・ディランのカバーを通じてフォークとロックの融合を追求しつつ、ジーン・クラークの優れたソングライティングと、ロジャー・マッギンの12弦ギターがアルバム全体に一貫したサウンドを与えている。「Turn! Turn! Turn!」のようなヒット曲を中心に、アルバム全体で平和や変化、愛と喪失といった普遍的なテーマが描かれており、時代を超えたメッセージ性を持っている。The Byrdsの音楽的成長と、フォーク・ロックの魅力が詰まった傑作だ。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚

1. 『Another Side of Bob Dylan』 by Bob Dylan
   ボブ・ディランのフォーク時代の代表作であり、The Byrdsがディランから影響を受けた楽曲を楽しむなら必聴のアルバム。
2. 『Younger Than Yesterday』 by The Byrds
   The Byrdsの後期作品で、フォーク・ロックにサイケデリックな要素が加わった一枚。彼らのさらなる進化が感じられる。
3. 『Bringing It All Back Home』 by Bob Dylan
   ディランがフォークからロックへと転向した重要なアルバムで、The Byrdsのフォーク・ロックスタイルに通じる。
4. 『The Freewheelin’ Bob Dylan』 by Bob Dylan
   ディランの初期の名作で、彼の影響を色濃く受けたThe Byrdsの音楽と共通する詩的な歌詞とメッセージ性が楽しめる。
5. 『Parsley, Sage, Rosemary and Thyme』 by Simon & Garfunkel
   美しいハーモニーとフォークのエッセンスが詰まったアルバムで、The Byrdsのフォーク・ロック的な要素に共感できる一枚。