発売日: 1996年4月16日
ジャンル: インディーロック、オルタナティブロック
Modest Mouseのデビューアルバム「This Is a Long Drive for Someone with Nothing to Think About」は、アメリカの広大な風景と、そこに漂う孤独や空虚を詩的に描いた作品である。アイザック・ブロックの粗削りでエモーショナルなボーカル、複雑なギターリフ、そして繰り返されるリズムが、焦燥感や逃避、そして若者の内なる葛藤を表現している。アルバムのタイトルが示すように、長いドライブや孤独な旅路が象徴する心の彷徨がテーマで、特にアメリカ北西部の荒涼とした風景がバックグラウンドとして描かれている。
このアルバムは、ポストグランジ時代のオルタナティブロックとしても注目され、Modest Mouseの独自のサウンドと感受性が聴く者に強烈な印象を残す。インディーシーンでの評価を決定づける作品として、多くのリスナーに支持され続けており、彼らのキャリアをスタートさせる記念碑的な一枚だ。
各曲解説
1. Dramamine
アルバムの幕開けとなる「Dramamine」は、スローテンポで始まり、繰り返されるギターリフが漂うような感覚を生み出す。ブロックの低いボーカルが切なさを漂わせ、孤独感が胸に迫る。長い旅に出る時の心情を映し出したような一曲だ。
2. Breakthrough
「Breakthrough」は、力強いギターリフとドラムが印象的な、エネルギッシュなナンバー。逃げ場のない閉塞感が歌詞に現れており、バンドの持つ生々しいエネルギーが感じられる。
3. Custom Concern
この曲は、シンプルなギターメロディと淡々としたボーカルが重なり合い、無機質で物憂げな雰囲気を醸し出している。ブロックの詩的な歌詞が、日常の退屈と孤独感を巧みに表現している。
4. Might
アップテンポでパンク的な要素が強い「Might」は、怒りや混乱が音と歌詞に表現されている。繰り返されるリズムと鋭いボーカルが、焦燥感を一層高めている。
5. Lounge
「Lounge」は、独特なリズムとサイケデリックなギターが絡み合う一曲。気だるさと狂気が交じり合ったようなムードが漂い、他の曲とは異なる実験的なサウンドが印象的。
6. Beach Side Property
エモーショナルなギターとダークな雰囲気が特徴の「Beach Side Property」。夢と現実の間で揺れ動く心情が描かれ、バンドの持つ感情的な深みが感じられる一曲。
7. She Ionizes & Atomizes
軽快なギターメロディが心地よい「She Ionizes & Atomizes」は、恋愛や人間関係の難しさを詩的に表現。どこか切なさと温かみを感じさせるサウンドが印象的だ。
8. Head South
「Head South」は、スピード感のあるリズムが特徴で、南へと向かう逃避行のようなイメージが浮かぶ。焦燥感と自由への憧れが交差する、エネルギッシュなナンバー。
9. Dog Paddle
ディストーションが効いたギターと荒々しいリズムが印象的な「Dog Paddle」。無力感や混乱がテーマで、バンドのアグレッシブな一面が表れている。
10. Novocain Stain
「Novocain Stain」は、複雑なギターリフと不穏なムードが特徴で、麻痺した感情や内面の痛みが描かれている。メランコリックでミステリアスなサウンドが、アルバムの中でも異彩を放つ一曲だ。
11. Tundra / Desert
ダイナミックで力強い「Tundra / Desert」は、荒々しいギターとドラムが織りなす疾走感が魅力。無秩序で激しいエネルギーが、バンドの若さと勢いを感じさせる。
12. Ohio
穏やかでメランコリックな「Ohio」は、ピアノのメロディが心地よく、過去への郷愁や喪失感が表現されている。シンプルな構成ながらも、アルバム全体の流れに深みを与える。
13. Exit Does Not Exist
「Exit Does Not Exist」は、静かでミニマルなアレンジが特徴の一曲。脱出への渇望とその不可能性がテーマで、繰り返されるメロディが心に残る。
14. Talking Shit About a Pretty Sunset
センチメンタルな「Talking Shit About a Pretty Sunset」は、内省的な歌詞と感情の起伏を描いたメロディが印象的。バンドの持つ詩的な側面が強く感じられる。
15. Make Everyone Happy / Mechanical Birds
「Make Everyone Happy / Mechanical Birds」は、穏やかなギターと哀愁の漂うメロディが、日常の儚さや無力感を表現。長めのトラックがじっくりと感情を引き出す。
16. Space Travel Is Boring
アルバムを締めくくる「Space Travel Is Boring」は、シンプルで短い楽曲。シニカルで、どこかユーモラスな歌詞が印象的で、全体のテーマを集約するように静かに終わる。
アルバム総評
「This Is a Long Drive for Someone with Nothing to Think About」は、Modest Mouseが持つ独自の音楽的ビジョンを鮮烈に示したデビュー作であり、アメリカのインディーロックシーンにおける傑作として位置づけられている。荒涼としたアメリカの風景や、そこに漂う孤独と焦燥感が全編にわたって表現され、繰り返されるリズムや詩的な歌詞が強い印象を残す。メランコリックでありながらもエネルギッシュなサウンドが特徴で、特に若者の葛藤や逃避の欲望が色濃く描かれている。Modest Mouseの原点として多くのファンに愛され続けている名盤だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Slanted and Enchanted by Pavement
ローファイで荒々しいインディーロックサウンドが共通しており、Modest Mouseファンにも響くキャッチーでリリカルな楽曲が楽しめる。
Perfect from Now On by Built to Spill
広がりのあるサウンドと感情的なメロディが特徴で、Modest Mouseの持つ叙情的な世界観と共鳴する一枚。
In the Aeroplane Over the Sea by Neutral Milk Hotel
詩的な歌詞とメランコリックなメロディが心に響く作品で、孤独や喪失感を抱えるリスナーにおすすめ。
On Avery Island by Neutral Milk Hotel
アメリカ南部の風景を思わせるエキセントリックなインディーロックで、旅や郷愁といったテーマが「Long Drive」に近い。
Bee Thousand by Guided by Voices
荒削りなローファイサウンドとシンプルなメロディが特徴で、Modest Mouseファンにとっても親しみやすいイン
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