発売日: 2013年10月15日
ジャンル: インディー・ポップ, ドリームポップ, サイケデリック・ポップ
Cultsの2枚目のアルバムStaticは、前作の甘酸っぱいサウンドにさらなる深みとダークな色彩を加えた作品である。このアルバムは、メンバーであるマデリン・フォルクスとブライアン・オブリビオンの個人的な関係の終わりが制作に影響を与えており、その影響が楽曲のテーマと雰囲気に反映されている。Staticには、失恋や心の葛藤、痛みといった感情が込められており、Cultsのノスタルジックで夢幻的なサウンドはさらに鋭さを増している。
アルバム全体を通して、フォルクスのエアリーなボーカルが繊細な感情を表現し、ダークでミステリアスなサウンドスケープがアルバムに緊張感をもたらしている。音楽的にも前作以上に多層的で、ドリームポップの枠を超えた実験的なアプローチが光る。
曲ごとの解説
1. I Know
アルバムの幕開けを飾る一曲で、歪んだギターリフとフォルクスのエモーショナルなボーカルが印象的。失恋の痛みが歌詞に込められており、ダークで引き込まれるサウンドが心に響く。
2. I Can Hardly Make You Mine
アップテンポでエネルギッシュな曲だが、歌詞には愛が終わる不安や切なさが感じられる。フォルクスの甘くも悲しげなボーカルが、激しいギターとリズムに乗り、心の揺れをリアルに伝えている。
3. Always Forever
このアルバムを代表する楽曲で、フォルクスの優しいボーカルが切ないメロディと共に響く。永遠の愛を望む一方で、その儚さが滲み出る歌詞が、淡い夢と現実のギャップを描いている。
4. High Road
スローなテンポとエコーのかかったサウンドが特徴的で、傷ついた心を癒すようなトラック。ギターとボーカルが織りなす浮遊感が心地よく、まるで心の旅をしているかのような感覚を与える。
5. Were Before
悲しげなメロディが印象的な一曲で、かつての幸福な時間へのノスタルジアが込められている。フォルクスの切ないボーカルと、ギターが美しいハーモニーを奏でる。
6. So Far
メロディが心地よく、歌詞には遠く離れてしまった愛への未練が表れている。ギターリフとリズムがどこか懐かしさを感じさせ、Cultsの持つメランコリックな美しさがよく表現されている。
7. Keep Your Head Up
テンポの良いリズムが印象的で、失意の中でも前向きに進もうとする姿勢が歌われている。ギターとボーカルが軽快に絡み合い、聴く者に元気を与える一曲だ。
8. TV Dream
短くてシンプルな楽曲だが、メディアの影響や自己のアイデンティティについて考えさせられるテーマが込められている。シンセとボーカルが幻想的な雰囲気を作り出している。
9. We’ve Got It
軽やかでキャッチーなサウンドが特徴で、前作のポップな要素を残しつつ、成熟したサウンドを感じさせる。二人のボーカルが絡み合い、力強いメッセージが伝わる。
10. Shine a Light
アルバムの中でも特に深い感情が込められた一曲で、希望の光を探し求める心情が歌われている。ギターとボーカルが強く響き、救いを求めるような力強さが感じられる。
11. No Hope
アルバムのクライマックスを締めくくる暗くシリアスなトラックで、タイトル通りの絶望感が漂っている。歪んだギターとダークなメロディが、感情の深い闇を表現しており、聴き終わった後に余韻を残す。
アルバム総評
Staticは、Cultsがデビュー作で確立したノスタルジックでドリーミーなサウンドに、さらに暗く深い感情を加えた作品である。フォルクスとオブリビオンの関係が終わりを迎えた影響が反映され、痛みや葛藤がリアルに表現されている。音楽的には、インディー・ポップからドリームポップ、サイケデリックに至るまでの幅広い要素が取り入れられ、Cultsの音楽的な進化が感じられる。このアルバムは、恋愛の終わりや自己の再発見をテーマにしており、聴き手に深い感情を呼び起こす一枚となっている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
ダークで内省的なテーマが共通し、Cultsのファンにとっても興味深いエモーショナルな作品。
- Bloom by Beach House
ドリーミーでメランコリックなサウンドが魅力のアルバム。Cultsと同様、幻想的で切ない雰囲気が感じられる。
- Ceremonials by Florence + The Machine
力強いボーカルとダークなテーマが共通する一枚。Cultsの持つ感情的な深みと共鳴する。
ミステリアスで浮遊感のあるサウンドが特徴で、Cultsのファンにおすすめ。メランコリックな雰囲気が共通している。
- The Haunted Man by Bat for Lashes
幻想的でダークなテーマが特徴的なアルバム。Cultsのミステリアスなサウンドに共鳴する作品。
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