アルバムレビュー：Sound & Color by Alabama Shakes

発売日: 2015年4月21日
ジャンル: サザンロック、ソウル、ファンク、サイケデリックロック

Sound & Colorは、Alabama Shakesのセカンドアルバムであり、彼らの音楽性が飛躍的に進化した作品である。このアルバムでは、ソウルやサザンロックに加えて、ファンクやサイケデリック、ジャズなどの多様な音楽要素が取り入れられ、前作よりもはるかに実験的で野心的なサウンドを展開している。ブリタニー・ハワードのパワフルなボーカルは、さらに洗練され、表現力が格段に向上している。サウンドの広がりと曲ごとの緻密なアレンジにより、彼らの音楽はより深く、カラフルで複雑なものへと進化している。音楽的自由を謳歌しつつ、感情豊かな楽曲で聴く者を魅了するアルバムである。

各曲ごとの解説:

1. Sound & Color
   　アルバムのオープニングを飾るこのトラックは、スペーシーでドリーミーなサウンドスケープが広がり、エレクトリックピアノとストリングスが繊細に絡み合う。タイトル通り、音と色のコントラストを感じさせる曲で、ハワードの柔らかくも力強いボーカルが感情を巧みに表現している。
2. Don’t Wanna Fight
   　ファンキーなギターフレーズとリズムセクションが中心となり、ハワードのシャウト気味のボーカルが炸裂するエネルギッシュなトラック。対立や闘争をテーマにした歌詞が強く響き、躍動感あふれるリズムが曲全体を駆け抜ける。
3. Dunes
   　サイケデリックなギターリフとメランコリックなメロディーが特徴の曲で、ゆったりとしたテンポが心地よい。歌詞は自己反省や内省的なテーマを扱い、静かな情熱が滲み出ている。
4. Future People
   　アップビートなリズムとファルセットが印象的なこの曲は、サイケデリックな要素とファンクが融合している。未来に対する希望や可能性を歌った楽曲で、ダンサブルなビートが楽しい。
5. Gimme All Your Love
   　スローでソウルフルなバラードで、ハワードのボーカルが非常に感情的で力強い。静かな始まりから徐々に盛り上がりを見せ、最後には壮大なクライマックスを迎える。心の奥深くに訴えかけるような、圧倒的な表現力が光る一曲。
6. This Feeling
   　アコースティックギターとシンプルなアレンジが美しいこの曲は、穏やかでリラックスした雰囲気を持っている。感情を控えめに表現しながらも、歌詞の深みが心に残る。軽やかなサウンドが、アルバムの中で一息つける瞬間を提供している。
7. Guess Who
   　サイケデリックで幻想的なサウンドが特徴の楽曲。リバーブの効いたギターと、ゆったりとしたリズムが夢幻的な雰囲気を作り出し、聴く者を異次元に誘う。ハワードのボーカルが静かに進行しながら、徐々に深みを増していく。
8. The Greatest
   　激しいロックンロールトラックで、エネルギッシュなギターリフと速いビートが印象的。シンプルでストレートなロックサウンドに、ハワードのアグレッシブなボーカルが加わり、ライブ感あふれる熱気が伝わってくる。
9. Shoegaze
   　この曲は、重厚なリズムとファジーなギターが特徴で、サイケデリックロックの影響を強く感じる。ボーカルは抑え気味だが、その分音の重厚さが際立っており、サウンド全体にノスタルジックな雰囲気が漂う。
10. Miss You
    　ソウルフルなバラードで、恋愛や別れに対する深い感情を歌っている。ハワードのボーカルが感情の起伏を緻密に表現し、曲が進むにつれてその深みが増していく。バックのシンプルな演奏が、ボーカルの表現を引き立てている。
11. Gemini
    　アルバムの中で最も長いトラックであり、アンビエントな要素とサイケデリックなサウンドが融合した作品。非常にスローテンポで、宇宙的な広がりを感じさせる一曲。ミニマルな構成ながら、緊張感が持続し、終始引き込まれる。
12. Over My Head
    　アルバムを締めくくるこの曲は、静かで内省的な雰囲気を持つ。控えめな楽器の演奏と、ハワードの穏やかなボーカルが心地よく響き渡り、アルバム全体を優しく包み込むように終わる。

アルバム総評:

Sound & Colorは、Alabama Shakesが音楽的に大きく成長したことを証明するアルバムであり、幅広いジャンルの要素を取り入れながらも、バンドとしての独自性を保っている。ファンク、サイケデリック、ソウルといったジャンルが複雑に融合し、前作よりもはるかに実験的で緻密な作品となっている。ブリタニー・ハワードのボーカルはさらに深みを増し、彼女の感情的な表現力はリスナーの心に深く刻まれるだろう。「Don’t Wanna Fight」や「Gimme All Your Love」はアルバムのハイライトであり、彼らの多彩なサウンドが集約された重要なトラックだ。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

1. To Pimp a Butterfly by Kendrick Lamar
   ジャズやファンク、ソウルなどの多様な要素を取り入れた実験的なサウンドが、Sound & Colorのファンにも響くだろう。両作ともに深いメッセージと独自の音楽性が特徴だ。
2. A Seat at the Table by Solange
   ソウルフルでありながらも、繊細で実験的なプロダクションが魅力のこのアルバムは、サウンドとテーマの多様性がSound & Colorと共鳴する。
3. Black Messiah by D’Angelo and the Vanguard
   ファンクやソウルの影響を色濃く受けたこの作品は、Alabama Shakesのファンク色の強い楽曲に近い。感情的でメッセージ性の強いアルバム。
4. We Got It from Here… Thank You 4 Your Service by A Tribe Called Quest
   ジャズやファンクの要素を取り入れたヒップホップアルバムであり、音楽的自由とジャンルの垣根を超えたアプローチがSound & Colorのファンに響くだろう。
5. Let It Die by Feist
   ソウルやインディーロックを織り交ぜた独特のサウンドが特徴。シンプルなアレンジと感情的なボーカルがSound & Colorと共通点があり、聴く者に深い印象を与える作品。