アルバムレビュー：Saturdays = Youth by M83

アルバムレビュー

2024.11.06

発売日: 2008年4月14日
ジャンル: ドリームポップ、ニューウェーブ、シンセポップ

Saturday = Youthは、M83ことアンソニー・ゴンザレスによる5枚目のスタジオアルバムで、1980年代のニューウェーブと青春映画のノスタルジーがテーマとなっている。このアルバムは、M83がこれまでのシューゲイザーやエレクトロニカから、さらにポップでメロディアスなサウンドに進化を遂げた作品で、プロデュースにはエレクトロポップの名プロデューサー、ケン・トーマス（シガー・ロスやスーサイドとの共演で知られる）が参加している。シンセサウンドやエフェクトを駆使し、まるで80年代の思春期を映画のワンシーンのように描き出し、聴く者を青春の日々へと誘う。

アルバム全体に漂うノスタルジックな雰囲気と感情的なサウンドは、10代の若者たちの恋や孤独、希望と失望がテーマであり、特に「Kim & Jessie」や「Graveyard Girl」などのトラックは、青春映画のサウンドトラックのような雰囲気を持つ。Saturdays = Youthは、M83のディスコグラフィーにおいても非常にポップでありながらも、ゴンザレスが描き出す甘美で儚い青春が詰まったアルバムとして、多くのファンに愛されている。

トラックごとの解説

1. You, Appearing
アルバムの幕開けを飾る美しいトラックで、静かなピアノとシンセサイザーの調べが幻想的なムードを作り出す。アルバムのテーマであるノスタルジーが前面に出ており、青春の儚さが感じられる。

2. Kim & Jessie
代表曲であり、アップテンポなシンセポップナンバー。80年代のニューウェーブと青春のワクワク感が詰まったメロディが特徴で、青春映画のワンシーンのような躍動感が印象的。

3. Skin of the Night
ミステリアスでエモーショナルなトラックで、シンセがメランコリックな雰囲気を漂わせる。恋愛の複雑な感情が歌詞とサウンドに反映され、深みのある一曲となっている。

4. Graveyard Girl
青春の孤独感と反抗心がテーマの楽曲で、キャッチーなメロディが耳に残る。主人公が孤独と共に生きる若者であることが歌詞から伝わり、まるで映画の登場人物のような共感が生まれる。

5. Couleurs
9分以上にわたるエピックなダンストラックで、シンセリフがリズムと重なり、徐々に高揚感を増していく。ニューウェーブの影響が色濃く、リスナーをトランス状態へと誘う一曲。

6. Up!
明るく軽快なメロディが特徴の楽曲で、ポップで幻想的な雰囲気が漂う。感情的でありながらも、リズミカルなビートが心地よく、リスナーを前向きな気持ちにさせる。

7. We Own the Sky
叙情的で幻想的なサウンドスケープが広がるトラックで、シンセのメロディが空に舞い上がるような印象を与える。歌詞には青春の自由さが描かれており、心が軽くなるような楽曲。

8. Highway of Endless Dreams
物憂げでメランコリックなトラックで、夜のドライブのような雰囲気を感じさせる。静かで内向的なサウンドが、10代の感情を繊細に表現している。

9. Too Late
儚いメロディとシンセの音色が特徴的なバラードで、失われた時間や後悔がテーマ。ゴンザレスのボーカルが切なく響き、心の奥に届く感動的な一曲。

10. Dark Moves of Love
ダークでミステリアスなサウンドが印象的な楽曲で、シンセとギターが絡み合う。複雑な感情が渦巻く、青春の暗部を表現している。

11. Midnight Souls Still Remain
アルバムのラストを飾る13分以上のアンビエントトラックで、静かなシンセが夜の静寂を感じさせる。ゆっくりとフェードアウトしていくサウンドが、青春の終わりを告げるような余韻を残す。

アルバム総評

Saturdays = Youthは、M83の音楽性がポップでありながらも深い感情を持つ作品へと変貌を遂げたアルバムである。80年代の青春映画を彷彿とさせるサウンドとテーマが特徴で、ノスタルジックな雰囲気がアルバム全体に漂っている。甘く切ないメロディやシンセの音色は、10代の青春の日々や無邪気さ、そして失われた時間への郷愁を美しく描き出している。Saturdays = Youthは、M83の中でも特に感情的で親しみやすく、多くのリスナーが共感できるアルバムとして、彼らのディスコグラフィーにおける傑作といえるだろう。