1. 歌詞の概要
「Rust」は、アメリカのオルタナティヴ・ロックバンドThe Nixonsが1995年にリリースしたセカンド・アルバム『Foma』に収録された楽曲である。そのタイトル「Rust(錆)」が象徴するように、この曲は“時間の経過とともに失われていくもの”“劣化していく心や関係性”“取り戻せない過去”といったテーマが静かに、しかし確かに歌い込まれている。
歌詞では、かつては輝いていたはずのものが、やがて錆びつき、色褪せていく様子が丁寧に描かれている。主人公は“錆”を通じて、愛や夢、希望、友情、情熱といった自分にとって大切だったものが、いつのまにか損なわれていく現実を見つめている。
それでもなお、過去の輝きを追い求めたり、失われたものにしがみついたりする人間の哀しさや誠実さも、この楽曲にはにじんでいる。
2. 歌詞のバックグラウンド
The Nixonsは、90年代アメリカのオルタナティヴ/グランジ・シーンで活動したバンドで、等身大の喪失や内面の葛藤をリアルな言葉とエモーショナルなサウンドで描き出すことで知られている。「Rust」はその代表格とも言える楽曲で、アルバム『Foma』が持つ“虚構”“時間”“再生不能な現実”といったキーワードと深く響き合っている。
錆は、目に見える劣化や変化の象徴として、90年代ロックの歌詞でもしばしば用いられてきた。The Nixonsの「Rust」は、青春や夢が時間とともに色褪せていく寂しさや、関係が徐々に冷めていく孤独、成長や大人になることの残酷さなどをリアルに映し出している。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下は「Rust」の印象的な歌詞の一部と和訳である。
引用元: Genius – The Nixons “Rust” Lyrics
Once it was shining
かつては輝いていたNow it’s just rust
今はただの錆Time took its toll
時間がすべてを奪っていったDreams fade to dust
夢は塵となって消えていくHold on to what you can
つかめるものだけを必死で握りしめて
4. 歌詞の考察
「Rust」の歌詞は、人生のなかで“いつまでも変わらないもの”と思っていた愛や夢、友情すらも、時の流れとともに錆びついていく――という現実の残酷さと、それでも何かを守ろうとする人間の本能をリアルに描いている。
“かつては輝いていた / 今はただの錆”という対比的なフレーズは、失われた青春や関係性、過ぎ去った日々への郷愁と諦めがにじむ。
“夢は塵となって消えていく”には、時間や現実の重さに押しつぶされ、夢や希望が失われていく寂しさが込められている。
一方で、“つかめるものだけを必死で握りしめて”というフレーズには、すべてが錆びてしまっても「今この瞬間に残っているもの」や「失わずにすむもの」にしがみつきたいという切実な想いが感じられる。
バンドのメロディアスかつ力強いサウンドが、こうした歌詞の痛みと美しさを鮮やかに浮かび上がらせている。
※ 歌詞引用元:Genius – The Nixons “Rust” Lyrics
5. この曲が好きな人におすすめの曲
「Rust」のように、“時間の経過と喪失”“色褪せる夢や愛”“それでも守りたいもの”をテーマにしたオルタナ/グランジ・ロックの名曲をいくつか紹介したい。
- Black by Pearl Jam
失われた愛や夢、色褪せた思い出への深いノスタルジーを描いたバラード。 - 1979 by The Smashing Pumpkins
青春の儚さと過ぎ去る時間への郷愁をリアルに描いたアンセム。 - Fade Into You by Mazzy Star
すれ違いと消えていく想い、色褪せる感情を幻想的に歌ったバラード。 - Far Behind by Candlebox
過去の輝きや失われたものへの未練を情感たっぷりに歌うグランジ・バラード。 - Fake Plastic Trees by Radiohead
失われる本物や変化していく現実への痛みを繊細に表現した名曲。
6. “時の流れと色褪せるもの” 〜 The Nixonsと「Rust」の余韻
「Rust」は、かつての輝きや夢、愛情や友情が、時の流れとともに静かに錆びついていく現実を、痛切かつ誠実なまなざしで描いた名曲である。
すべてが変わり、失われてしまう運命だとしても、「今あるもの」「つかみ取れるもの」を大切にしたい――そんな人間らしい強さと儚さが、この曲には込められている。
The Nixonsの「Rust」は、人生の“色褪せ”に直面したとき、もう一度“本当に大切なもの”を見つめ直させてくれる深い余韻を残す一曲だ。
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