発売日: 2018年8月31日
ジャンル: フォークポップ、アコースティック
アメリカ大陸を駆け抜ける、自由とノスタルジアの音楽旅行
Runaway は、イギリスのシンガーソングライター Passenger（本名：Mike Rosenberg） の10thアルバムであり、彼のキャリアの中でも特にアメリカの風景と文化にインスパイアされた作品 となっている。本作は、まるでロードムービーのようなアルバムであり、広大なアメリカ大陸を旅しながら書かれた楽曲 が並ぶ。
前作 The Boy Who Cried Wolf（2017年）が内省的な作風だったのに対し、本作はより開放的な雰囲気を持ち、カントリーやアメリカン・フォークの要素を強く取り入れている。ペダルスティールギターやバンジョーを活用しながら、旅、自由、故郷への憧れ というテーマを描き出しているのが特徴だ。
全曲レビュー
1. Hell or High Water
アルバムの幕開けを飾る、キャッチーなフォークポップソング。旅の始まりを感じさせる軽快なリズムと、愛の行方を探し求める歌詞が印象的。
2. Why Can’t I Change
自分を変えたいと思いながらも、同じ失敗を繰り返してしまうという普遍的なテーマを歌う。郷愁を感じさせるメロディと、Passengerの優しくも切ない歌声が心に残る。
3. Heart to Love
バンジョーとアコースティックギターが際立つ、軽快なナンバー。愛を求める気持ちと、それを受け入れる難しさを描いている。カントリーの影響を強く感じる楽曲。
4. Let’s Go
タイトル通り、旅立ちのワクワク感が詰まった楽曲。オープンロードを駆け抜けるような疾走感があり、まるで映画のロードトリップシーンにぴったりなサウンド。
5. Runaway
アルバムタイトル曲。人生から逃げ出したい衝動と、旅の途中で感じる孤独や希望を描いた楽曲。サウンドはシンプルながら、Passengerの語りかけるようなボーカルが際立つ。
6. Eagle Bear Buffalo
ネイティブアメリカン文化への敬意を感じさせるタイトルを持つ、異色のトラック。アメリカの広大な自然と、その土地に根付く歴史を音楽で表現している。
7. Ghost Town
「過去の思い出が色あせてしまった町」に例えて、失われた関係や変わりゆく時代を歌う。荒涼とした風景が浮かぶ、叙情的なバラード。
8. He Leaves You Cold
愛の終焉を描いた切ないバラード。アコースティックギターとピアノのシンプルなアレンジが、Passengerのソフトなボーカルを際立たせている。
9. To Be Free
自身の家族のルーツや移民の物語を歌った、非常にパーソナルな楽曲。シンプルながらも力強い歌詞が響く。
10. Survivors
アルバムのラストを飾る、希望に満ちた楽曲。過去の痛みを乗り越え、それでも生きていくというメッセージが心を打つ。
総評
Runaway は、Passengerのキャリアの中でも異色のアルバムであり、アメリカの音楽と文化に強く影響を受けた作品 となっている。カントリーやアメリカン・フォークの要素を取り入れながら、旅と自由、故郷への憧れをテーマにした楽曲が並ぶ。
全体的に明るく軽快なサウンドが多く、All the Little Lights や Whispers のような切なさよりも、開放的な雰囲気 を楽しめるアルバムだ。しかし、その中でも Ghost Town や To Be Free のように、人生の苦悩や過去を見つめる楽曲もあり、Passengerの繊細なストーリーテリングは健在である。
おすすめのリスナー:
- アメリカン・フォークやカントリー系の音楽が好きな人
- 旅やロードムービーのような雰囲気の音楽を求めている人
- Ed SheeranやVance Joyのようなアーティストを好む人
おすすめアルバム
1. The Lumineers – Cleopatra (2016)
アメリカン・フォークの要素が強く、旅や人生をテーマにした作品。Passengerの音楽と相性が良い。
2. Ryan Adams – Gold (2001)
カントリー・フォークとロックの融合が魅力的な一枚。アメリカの風景を音楽で感じられる。
3. Vance Joy – Nation of Two (2018)
フォークポップの要素を持ちながら、シンプルで心に響くメロディが特徴。
4. First Aid Kit – Ruins (2018)
スウェーデン出身のフォークデュオだが、アメリカン・フォークの影響が色濃く、Runaway と共通する要素が多い。
5. Jack Johnson – In Between Dreams (2005)
軽やかなアコースティックサウンドと旅をテーマにした楽曲が多く、Passengerの本作と通じる部分がある。
Runaway は、Passengerの音楽性に新たな風を吹き込んだ作品であり、アメリカを旅するような気分を味わえるアルバム だ。軽快なフォークサウンドの中に、彼の持つ繊細なストーリーテリングが生きており、これまでのファンにも新たな魅力を感じさせる一枚となっている。
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