発売日: 1994年9月26日
ジャンル: トリップホップ / ダブ / エレクトロニカ
Massive Attackの2ndアルバムProtectionは、デビュー作Blue Linesの成功を受け、さらに洗練されたサウンドと深みのある世界観を提示した作品である。本作は、トリップホップというジャンルをより広く認知させただけでなく、その多面的な魅力を証明した重要なアルバムだ。
本作でも、Massive Attackの核となるRobert “3D” Del Naja、Grant “Daddy G” Marshall、Andrew “Mushroom” Vowlesのトリオが牽引し、ゲストボーカリストにはTracey Thorn(Everything But The Girl)やHorace Andyが参加。Tracey Thornのエモーショナルなボーカルと、前作に続くHorace Andyの存在感が、アルバムの中で絶妙なコントラストを生み出している。また、Nellee Hooperによるプロダクションが、透明感のあるサウンドスケープを作り上げ、前作よりもムーディーでアトモスフェリックな作品に仕上がっている。以下に、全10曲を解説する。
1. Protection
アルバムのタイトル曲で、Tracey Thornのソウルフルなボーカルが楽曲全体を包み込むような一曲。静かに始まり、繊細なピアノと深いビートが絡み合いながら、リスナーを物語の中へと誘う。歌詞には、愛と守護のテーマが込められており、アルバム全体の象徴的な楽曲となっている。
2. Karmacoma
ダブとヒップホップが融合した、グルーヴィーで不穏な雰囲気を持つ楽曲。3DとTrickyのラップが絡み合い、詩的で不条理な歌詞が特徴的。繰り返されるベースラインと不規則なビートがトリップホップの真髄を感じさせる。
3. Three
哀愁漂うシンセサウンドとミニマルなアレンジが印象的な楽曲。Tracey Thornの静かで優しいボーカルが、歌詞の中の孤独感を際立たせている。シンプルながらも感情的な深みがある一曲。
4. Weather Storm
インストゥルメンタルで、ピアノとシンセサウンドが美しく絡み合う。ジャズやクラシックの要素が感じられ、アルバム全体の中で静かなインタールード的な役割を果たしている。
5. Spying Glass
Horace Andyのレゲエボーカルが全面にフィーチャーされた楽曲。ダブの影響が色濃く、重厚なベースラインと浮遊感のあるアレンジが特徴的。歌詞には社会批判的なメッセージが込められている。
6. Better Things
Tracey Thornが再びボーカルを務める、メランコリックな楽曲。シンプルなピアノとビートが控えめに配置され、歌詞には恋愛の葛藤と自己解放がテーマとして描かれている。
7. Eurochild
3DとDaddy Gによるラップが中心の楽曲。タイトルが示す通り、ヨーロッパの社会的状況をテーマにしており、政治的なメッセージが感じられる。エレクトロニックなアレンジが鋭い印象を与える。
8. Sly
アルバムの中でも特にソウルフルな一曲。Nicoletteのボーカルが美しく、ジャジーなピアノと穏やかなビートが、洗練された雰囲気を醸し出している。愛と孤独が交錯する歌詞が印象的。
9. Heat Miser
インストゥルメンタルで、前衛的なエレクトロニックサウンドが際立つ。ダークで不穏なムードを持ちながらも、リズムとメロディのバランスが心地よい。
10. Light My Fire (Live)
The Doorsの名曲をHorace Andyがライブでカバーしたトラック。レゲエアレンジが加えられ、オリジナルとは異なる解釈で新鮮な魅力を放つ。
アルバム総評
Protectionは、Massive Attackがトリップホップというジャンルをさらに進化させた作品である。前作Blue Linesよりも洗練されたサウンドとメランコリックなムードが特徴で、ゲストボーカルの起用がアルバム全体に多彩な色彩を与えている。アルバム全体を通じて感じられる繊細さと深みは、日常の喧騒を忘れさせるような没入感を提供し、トリップホップの金字塔的な位置付けを確立している。この作品は、Massive Attackの多面的な魅力を知る上で欠かせない一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Blue Lines by Massive Attack
デビューアルバムで、トリップホップの原点ともいえる作品。Protectionに至るまでの流れを感じられる。
Dummy by Portishead
トリップホップの代表作で、Massive Attackのムードと共鳴するダークで美しいサウンド。
Maxinquaye by Tricky
Massive Attackの元メンバーによるソロデビュー作。実験的で挑戦的なトリップホップが堪能できる。
Mezzanine by Massive Attack
3rdアルバムで、ヘヴィでインダストリアルな要素を取り入れた進化形。Protectionの次にぜひ聴いてほしい。
Endtroducing….. by DJ Shadow
インストゥルメンタルを中心とした名盤で、Massive Attackの作り出すムードと共通する部分が多い。
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