発売日: 1977年2月25日
ジャンル: プログレッシブロック / アートロック
ピーター・ガブリエルがジェネシスを脱退後にリリースしたソロデビューアルバムPeter Gabriel（通称Car）は、アートロックとプログレッシブロックの革新を象徴する重要な作品だ。アルバムタイトルは彼の名前そのものだが、インパクトのある「車の中に座る男」のジャケット（ヒプノシスによるデザイン）から「Car」の愛称で親しまれている。
プロデュースを手掛けたのは、元ザ・バンドのギタリストであるボブ・ディランとの仕事で知られるボブ・エズリン。ガブリエルの独特なボーカルスタイルと、多彩なジャンルを取り入れた楽曲構成がアルバムの特徴で、プログレッシブロックの伝統を受け継ぎながらも、ポップ、フォーク、クラシックなどを自由に取り込んだ意欲的な内容となっている。
特にオープニングトラックのSolsbury Hillは、ガブリエルのジェネシス脱退にまつわる心情を描いた名曲として知られ、現在も彼の代表曲として愛されている。
各曲解説
1 Moribund the Burgermeister
アルバムの幕開けを飾る実験的でドラマチックな楽曲。ミステリアスなイントロから始まり、ダイナミックな展開と風刺的な歌詞が印象的だ。ガブリエルのボーカルがストーリーテラーとしての才能を発揮し、聴く者を異世界へ誘う。サウンドはプログレらしい緻密さと遊び心が融合している。
2 Solsbury Hill
ピーター・ガブリエルの代表曲であり、アルバムの中でも特にメロディアスなナンバー。ジェネシス脱退を決意した際の心情を象徴的に綴った歌詞が、軽やかなアコースティックギターとリズミカルなフレーズに乗せて語られる。開放感のあるサウンドが希望と前進のエネルギーを感じさせる。
3 Modern Love
ポップでロックな一面を見せる楽曲。アップテンポでキャッチーなサウンドが特徴的で、アルバムの中でも軽快な雰囲気を持つ一曲だ。歌詞には現代社会への皮肉が込められており、ガブリエルのユーモアが感じられる。
4 Excuse Me
ユニークでカントリーやミュージックホールの影響を感じさせる楽曲。コミカルな歌詞と軽快なメロディが特徴で、アルバムの中で異色の存在だ。ガブリエルの柔軟な音楽性を示すトラックとして楽しめる。
5 Humdrum
感傷的で美しいバラード。静かなピアノと控えめなストリングスがガブリエルのボーカルを引き立て、歌詞は喪失感と自己再生をテーマにしている。曲全体に漂う叙情性が印象的で、深い余韻を残す一曲だ。
6 Slowburn
プログレッシブロックらしい緊張感と劇的な展開が特徴的な楽曲。ギターリフとドラマチックなアレンジが印象的で、ガブリエルのパフォーマンスがエモーショナルな力強さを見せている。
7 Waiting for the Big One
ジャズとブルースの影響を色濃く感じさせる一曲。軽快なピアノとスウィング感のあるリズムが特徴で、ガブリエルの幅広い音楽性が感じられる。楽曲全体が物語のように展開し、ダイナミックな終盤が特に印象的だ。
8 Down the Dolce Vita
オーケストラ的なスケール感を持つ楽曲で、壮大なイントロから一気に引き込まれる。軍隊的なリズムやドラマチックなアレンジが楽曲を際立たせており、アルバムの中でも特に印象的なナンバー。
9 Here Comes the Flood
アルバムの最後を飾る壮大で感動的なバラード。終末的なテーマを持つ歌詞と、ピアノを中心としたアレンジが楽曲に力強さを与えている。ガブリエルのボーカルが感情豊かに歌い上げ、アルバムを感動的に締めくくる。
アルバム総評
Peter Gabriel (Car)は、ピーター・ガブリエルがソロアーティストとしての確固たる地位を築くきっかけとなったアルバムだ。ジェネシス時代のプログレッシブロック的要素を残しつつも、幅広いジャンルを自由に取り入れた音楽性が、彼の独自性を際立たせている。特にSolsbury HillやHere Comes the Floodといった楽曲は、個人の内面的なテーマを壮大な音楽で表現した名曲であり、アルバム全体にわたる音楽的冒険心が魅力的だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
So by Peter Gabriel
ピーター・ガブリエルの代表作で、よりポップで洗練されたサウンドを楽しめる。
The Lamb Lies Down on Broadway by Genesis
ジェネシス時代のガブリエルがフロントマンを務めたプログレッシブロックの名作。
Hounds of Love by Kate Bush
ドラマチックで実験的なサウンドが共通しており、アートロック好きにおすすめ。
Close to the Edge by Yes
プログレッシブロックの金字塔で、緻密な構成とスケール感が本作と響き合う。
For Your Pleasure by Roxy Music
実験的でアートなサウンドが魅力のアルバム。ガブリエルの音楽性と重なる部分が多い。
コメント