発売日: 2006年6月27日
ジャンル: メロディック・ハードコア、パンクロック
進化するメロディック・ハードコア——Good Riddanceが示した成熟の境地
2006年、カリフォルニアのメロディック・ハードコアバンドGood Riddanceがリリースした7thアルバムMy Republicは、彼らのディスコグラフィーの中でも特にバランスの取れた作品として評価されている。本作は、政治的メッセージと個人的なテーマを融合させ、ハードコアの攻撃性とメロディック・パンクの洗練されたサウンドを絶妙にミックスしたアルバムとなっている。
前作Bound by Ties of Blood and Affection（2003年）では、ハードコア色をやや抑え、よりメロディアスなアプローチが増えたが、本作ではその流れを引き継ぎつつ、キャリアを通じて培ったエネルギーと洗練された楽曲構成を両立させている。プロダクションは、Fat Wreck Chordsの常連プロデューサーであるビル・スティーヴンソン（Descendents, ALL）とジェイソン・リヴァーモアが担当し、サウンドのクオリティは申し分ない。
本作の特徴は、以前の作品に比べてよりシンプルでストレートな楽曲が多いこと。疾走感のある曲もあれば、ミドルテンポのメロディックな楽曲もあり、アルバム全体にメリハリがついている。Good Riddanceの政治的スタンスは一貫しているが、歌詞の面ではよりパーソナルな内容も増え、彼らの音楽的な成熟が感じられる作品となった。
全曲レビュー
1. Out of Mind
アルバムのオープニングを飾るパワフルなナンバー。疾走感のあるドラムと鋭いギターリフが印象的で、Good Riddanceらしいアグレッシブなエネルギーに満ちている。歌詞は、社会の欺瞞や腐敗をテーマにしており、アルバム全体の方向性を示す。
2. Texas
ミドルテンポのグルーヴィーな楽曲で、重厚なギターとシンガロングできるコーラスが特徴的。タイトルが示す通り、アメリカの保守的な政治風土を皮肉った内容になっている。
3. Shame
メロディアスでキャッチーなサウンドながら、歌詞は人間関係の不和や社会の偽善を描いたもの。Good Riddanceは政治的なテーマが多いが、こうしたパーソナルな楽曲も彼らの魅力のひとつだ。
4. Tell Me Why
ハードなギターとメロディアスなボーカルが絶妙に絡み合う一曲。社会の現状に対する疑問を投げかける内容で、シンプルながらも力強いメッセージが込められている。
5. Torches and Tragedies
スピード感のあるパンクチューン。曲の短さと攻撃的なリフが印象的で、Good Riddanceのハードコア・ルーツが感じられる楽曲。
6. Darkest Days
シリアスな雰囲気の楽曲で、Good Riddanceの持つエモーショナルな側面が前面に出ている。個人的な喪失や絶望感をテーマにした歌詞が、リスナーの心に響く。
7. Up to You
シンプルなパンクナンバーで、キャッチーなメロディが特徴的。歌詞は「自分の人生をどう生きるかは自分次第」という前向きなメッセージが込められている。
8. Regret
タイトル通り、後悔と過去の過ちをテーマにした楽曲。ギターのメロディが美しく、Good Riddanceの楽曲の中でも特に叙情的な一曲。
9. Boise
スピーディーなパンクチューンで、ライブでの盛り上がりが想像できるナンバー。Good Riddanceの持つストレートなエネルギーを感じることができる。
10. Rise and Fall
このアルバムの中で最もメロディックな楽曲のひとつ。キャッチーなコーラスとエモーショナルなメロディが特徴で、メロディック・ハードコアの進化系とも言える作品。
11. Broken
個人的なテーマを扱ったバラード調の楽曲。Good Riddanceの音楽の中では珍しいスタイルだが、アルバム全体のバランスを取る役割を果たしている。
12. Save the Children
アルバムのラストを飾る楽曲。壮大なスケールのメロディと、社会的メッセージが込められた歌詞が印象的。Good Riddanceの持つ「希望」と「怒り」の両方を感じられる締めくくり方だ。
総評
My Republicは、Good Riddanceがキャリアを通じて培ってきた音楽性を最も洗練された形で提示した作品である。以前の作品に比べてシンプルでストレートな楽曲が多いが、それがかえってアルバム全体のまとまりを良くしている。ハードコアの攻撃性とメロディック・パンクのキャッチーさを見事に融合させた、完成度の高いアルバムだ。
また、歌詞の面でも政治的なテーマだけでなく、個人的な感情や葛藤を描いた曲が増えたことで、より幅広いリスナーに響く内容になっている。Good Riddanceのキャリアの中でも、最も聴きやすく、バランスの取れたアルバムのひとつといえるだろう。
この作品をもってバンドは一度解散するが、その後2012年に再結成し、さらに進化したサウンドを展開していくこととなる。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Bad Religion – The Empire Strikes First（2004年）
政治的メッセージとメロディック・ハードコアの融合。Good Riddanceのスタイルと非常に近い。 - Pennywise – Reason to Believe（2008年）
90年代メロディック・パンクの流れを受け継ぐ作品で、Good Riddanceのメロディアスな部分が好きな人におすすめ。 - Strike Anywhere – Dead FM（2006年）
ポリティカル・パンクの代表作。Good Riddanceのファンにはぴったりの一枚。 - Rise Against – The Sufferer & the Witness（2006年）
メロディック・ハードコアの進化形。Good Riddanceの影響を受けたバンドの代表作。 - Propagandhi – Supporting Caste（2009年）
よりテクニカルなパンクを求めるなら、こちらも必聴。
My Republicは、Good Riddanceの成熟したサウンドを堪能できる名盤である。
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