発売日: 2000年4月17日
ジャンル: シンセポップ、ロック、オルタナティブ
アルバム全体のレビュー
解散から7年を経て復活したa-haがリリースした6枚目のスタジオアルバムMinor Earth | Major Skyは、彼らが音楽シーンに再び確固たる地位を築くきっかけとなった作品だ。80年代のシンセポップの代名詞として知られていた彼らは、本作でより成熟したサウンドと現代的なアレンジを取り入れ、進化を遂げた。アルバム全体にわたって見られる緻密なプロダクションと深遠なリリックは、彼らの音楽的な成長を象徴している。
タイトルが示すように、このアルバムは小さな個人の物語（”Minor Earth”）と普遍的なテーマ（”Major Sky”）を巧みに織り交ぜている。ポップな魅力と内省的なトーンが絶妙にバランスを保ち、モダンロックやエレクトロニカの要素も感じられる仕上がりだ。ヒットシングル「Summer Moved On」を含むこのアルバムは、a-haが「再結成バンド」の枠を超え、時代を超えたアーティストであることを証明した。
各トラックレビュー
1. Minor Earth, Major Sky
タイトル曲であり、アルバムのオープニングを飾る壮大な一曲。広がりのあるシンセサウンドと力強いギターが融合し、希望と不安の入り混じる世界観を描いている。Harketの伸びやかなヴォーカルが特に印象的だ。
2. Little Black Heart
ダークなトーンとエレクトロニックな要素が融合した一曲。自己葛藤をテーマにした歌詞が深く心に響き、シンプルながらも力強いメロディが耳に残る。
3. Velvet
アルバムの中でも特にメランコリックで感情的な曲。控えめなアレンジと温かみのあるメロディが、美しくも切ない雰囲気を醸し出している。この曲は後にSavoy（Paul Waaktaar-Savoyのバンド）のカバーであることが明かされたが、a-haバージョンは特に人気が高い。
4. Summer Moved On
復活を象徴するリードシングルで、Harketの圧倒的なヴォーカルパフォーマンスが光る一曲。特に20秒を超えるロングトーンは圧巻で、リリース当時話題を呼んだ。夏の終わりの切なさと希望が織り交ざった名曲だ。
5. The Sun Never Shone That Day
ギター主導のトラックで、モダンロックの要素が色濃い一曲。暗いテーマを扱いながらも、躍動感のあるアレンジが印象的。
6. To Let You Win
静かで内省的なバラード。感情の複雑さを美しいメロディに乗せて表現しており、アルバムの中でも特に感動的なトラックの一つだ。
7. The Company Man
皮肉の効いた歌詞とキャッチーなメロディが特徴の楽曲。軽快なサウンドの裏に、社会的なテーマを感じさせる。
8. Thought That It Was You
ドリーミーなサウンドスケープが広がる、心地よいミッドテンポの曲。繊細なシンセとギターが融合し、リスナーを優しく包み込む。
9. I Wish I Cared
アルバムの中でも独特の存在感を放つ曲で、全編が電子音楽的なアプローチで構成されている。感情を抑えたようなHarketの歌声が、歌詞の冷たさを際立たせている。
10. Barely Hanging On
重厚なサウンドと深い歌詞が印象的なバラード。希望と絶望の狭間に揺れる心情を、美しいアレンジで表現している。
11. You’ll Never Get Over Me
ポップなメロディと軽快なリズムが特徴で、アルバム全体のトーンを引き締める役割を果たしている。切ない歌詞が聴く者の心に響く。
12. I Won’t Forget Her
爽やかなギターサウンドとエネルギッシュな展開が印象的な楽曲。失われた愛に対する哀愁を描きつつも、前向きなメッセージが込められている。
13. Mary Ellen Makes the Moment Count
アルバムの最後を飾る感動的な一曲。Morten Harketのソウルフルなヴォーカルとシンプルなピアノアレンジが際立ち、心に残る余韻を与える。
アルバム総評
Minor Earth | Major Skyは、a-haの復活を告げるだけでなく、彼らがアーティストとしていかに進化しているかを示した作品だ。80年代のシンセポップのイメージを残しつつも、よりモダンで成熟したサウンドへと変貌を遂げている。ポップスとしての親しみやすさと、内省的で深みのあるリリックが絶妙に融合しており、復活作としてだけでなく、キャリアを象徴するアルバムとしても評価されるべき名作である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Ultra by Depeche Mode
モダンロックとエレクトロニカの要素が融合した作品で、a-haのこのアルバムと同じく成熟したサウンドが特徴。
Room Service by Roxette
2000年代におけるポップデュオの進化を示したアルバム。a-haと同じくキャリアの復活を感じさせる作品。
Everything Must Go by Manic Street Preachers
深みのあるリリックと広がりのあるサウンドが、Minor Earth | Major Skyと共通する雰囲気を持つ。
Dead Bees on a Cake by David Sylvian
詩的で内省的なアルバム。a-haのファンが共感できる感情的な深さが魅力。
Astronaut by Duran Duran
80年代のバンドが復活し、モダンなサウンドで新たなファン層を獲得した点が共通する。
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