
発売日: 2005年3月21日
ジャンル: オルタナティヴ・ロック、ストーナーロック、ダーク・アートロック
概要
『Lullabies to Paralyze』は、Queens of the Stone Age(QOTSA)が2005年に発表した4作目のスタジオアルバムである。
前作『Songs for the Deaf』が世界的成功を収めた後、バンド内部は大きく揺れ、
ニック・オリヴェリが脱退するという重大な転機を迎える。
その結果、本作は
“ジョシュ・オムを中心とした新生 QOTSA のはじまり”
を告げる作品となった。
アルバムタイトルの「Lullabies(子守唄)」と「Paralyze(麻痺させる)」が示す通り、
本作は不気味さ、妖しさ、暗がりの感覚が支配している。
童話的でありながら凶暴、静けさの裏側に不穏さが潜む――
まさに“夜の絵本”のような音世界だ。
音楽的には、
- ストーナー由来の重量感
- 妖艶なブルース
- ゴシック的な暗黒ポップ
- ミニマルリフの反復
- 精密なプロダクション
が融合し、QOTSA の中でも最も“暗い美しさ”を持つアルバムに仕上がっている。
デイヴ・グロールは参加していないが、代わりに
- ジョーイ・カスティーヨ(Dr)
- マーク・ランガン(Vo)
らが加わり、異様な深みと夜の気配がアルバム全体に宿っている。
全曲レビュー
1曲目:This Lullaby
アコースティックの弾き語りで幕を開ける異色の序章。
オムではなくマーク・ランガンが歌う不穏な“子守唄”は、アルバム全体の暗闇へ誘う導入として完璧である。
2曲目:Medication
短く、鋭く、攻撃的。
ノイズとスピードの塊のような楽曲で、前曲の静けさを一瞬で吹き飛ばす。
アルバム序盤の温度差がこの作品の物語性を強めている。
3曲目:Everybody Knows That You Are Insane
ブルースロックの濃厚さとQOTSAらしい奇妙な感触が融合。
失望と執着の入り混じる歌詞が、アルバムの心理的陰影を深める。
4曲目:Tangled Up in Plaid
ヘヴィで低重心のグルーヴが特徴。
砂漠の夜を思わせるダーク・サイケデリックな空気感が素晴らしい。
5曲目:Burn the Witch
本作の象徴的楽曲。
ウッドベースのように跳ねる低音、呪詛めいたメロディ、
そして“魔女狩り”をテーマにしたダークフォーク的世界観が魅力。
QOTSA の物語的側面を最も強烈に示す。
6曲目:In My Head
アルバム中最もキャッチーで、一般的知名度も高い楽曲。
ポップだが不穏、明るいのにどこか壊れている――
QOTSA の“歪んだメロディセンス”が結晶化している。
7曲目:Little Sister
本作最大のヒット曲。
カウベルが印象的に鳴り続けるミニマル・ロックで、
踊れるようなグルーヴとストーナーの重量感が共存する傑作。
ライブでも長年の定番曲となった。
8曲目:I Never Came
しっとりしたミドルテンポ曲だが、内側に沈むような落ち込みが漂う。
オムの歌声が珍しいほど繊細で、アルバムの中で小さな休息のように機能している。
9曲目:Someone’s in the Wolf
10分近い暗黒トリップ。
囁き声、怪しいコーラス、野性的なリフが混ざり、
“夜の森の怪物”を描いたような不穏な儀式性を帯びる。
アルバムのダーク・コア。
10曲目:The Blood Is Love
粘りつくような濃厚グルーヴが耳を支配する。
退廃と誘惑が混じった妖しいムードが続く。
11曲目:Skin on Skin
官能と暴力の狭間のような曲。
肉体と衝動が露骨に描かれる、QOTSA らしい凶暴な一面が出たトラック。
12曲目:Broken Box
軽快だがどこか不気味なポップ性。
アルバム後半の雰囲気を転換させるユニークな位置付けとなっている。
13曲目:You Got a Killer Scene There, Man…
ジャジーなコード感と夜のムードが前面に出た曲。
煙の向こうで光が揺れるような、都会的で曇った感触が特徴。
14曲目:Long Slow Goodbye
アルバムを柔らかく締める美しいバラード。
別れ、終わり、癒やしをテーマにしながら、
静かに夜が明けていくような余韻を残す。
真っ暗な世界を旅した後の、ほのかな希望である。
総評
『Lullabies to Paralyze』は、
“QOTSA の最も妖しく、最も夜に寄り添うアルバム”
である。
本作の核をなすのは、
オリヴェリ脱退の大きな不安を乗り越えながら、
ジョシュ・オムはより作曲家として成熟し、
メロディラインの鋭さと、アンサンブルの構築美
は本作で一段と深まっている。
ダークでありながら美しい。
重いのに軽やか。
危険なのに魅惑的。
その二律背反こそが『Lullabies to Paralyze』の魔力であり、
QOTSA 作品の中でも独自の地位を占める一枚となっている。
おすすめアルバム(5枚)
- Songs for the Deaf / Queens of the Stone Age
前作であり、攻撃性のピーク。対比として必聴。 - Era Vulgaris / Queens of the Stone Age
狂気性と実験性がさらに増幅した次作。 - Rated R / Queens of the Stone Age
ポップと奇妙さが絶妙に混ざる中期QOTSAの名盤。 - Kyuss / Blues for the Red Sun
砂漠とヘヴィネスというQOTSAの根源を理解できる。 - Mark Lanegan / Bubblegum
参加メンバーの美学とダークさが共振する作品。
歌詞の深読みと文化的背景
本作の歌詞は、
童話・魔女・夜・肉体・執着・儀式
といったキーワードが頻出する。
多くの楽曲は“物語”として展開し、
人間の恐れや欲望を暗喩的に描く。
特に「Burn the Witch」「Someone’s in the Wolf」は
“暗闇の中に潜む未知の存在への恐怖”
を象徴している。
また、2000年代中盤は、オルタナティヴロックがポストグランジとインディーに分岐した時期であり、
QOTSA はそのどちらにも属さず、
“ダークで官能的なハードロック”
という独自の領域を開拓していた。
その孤高さこそが、本作の美しさと評価を高めている。


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