発売日: 1973年8月28日
ジャンル: ソウル、R&B、ファンク
『Let’s Get It On』は、マーヴィン・ゲイの代表作であり、ソウルミュージックにおけるセクシュアリティの表現を大胆に前面に押し出したアルバムだ。前作『What’s Going On』が社会問題や平和をテーマにしていたのに対し、本作では愛、官能、そして精神的な結びつきを中心に描かれている。ゲイの滑らかで感情的なボーカルと、官能的なサウンドが融合し、アルバム全体に濃密なムードが漂う。特にタイトル曲「Let’s Get It On」は、彼のキャリアを象徴する名曲となり、ソウルやR&Bのラブソングの新しい基準を打ち立てた。セクシュアルなテーマを扱いながらも、楽曲には深い感情とスピリチュアルな要素が含まれており、ゲイの音楽的な深みが存分に発揮されている。
各曲ごとの解説:
- Let’s Get It On
アルバムのタイトル曲であり、マーヴィン・ゲイの代表作の一つ。官能的で誘惑するようなリリックと、柔らかくリズミカルなギター、ストリングスのアレンジが見事に融合している。ゲイの感情的なボーカルは、愛とセクシュアリティをスピリチュアルな次元で表現しており、シンプルなメッセージが時代を超えて多くのリスナーに愛されている。 - Please Stay (Once You Go Away)
別れの切なさを歌うこの曲は、ゲイの優しいボーカルが際立つメロディアスなバラード。恋人への懇願が、リッチなストリングスと控えめなリズムによって表現されている。ゲイの感情が繊細に込められており、アルバム全体における抑えたトーンを提供している。 - If I Should Die Tonight
愛の深さとその儚さをテーマにしたバラードで、ゲイのシルキーなボーカルが心に染み渡る。ストリングスとピアノが美しく調和し、彼の歌声をさらに引き立てる。愛の絶対性と、一瞬一瞬を大切にすることを伝える感動的な楽曲だ。 - Keep Gettin’ It On
アルバムのタイトル曲「Let’s Get It On」のスピリチュアルな続編とも言えるファンキーなトラック。リズミカルなベースラインと、ソウルフルなホーンが楽曲に活力を与え、ゲイのボーカルはますます情熱的になる。愛と官能的なムードが一貫して表現されている。 - Come Get to This
ファンキーでポップな要素が強いこの曲は、軽快なリズムとキャッチーなメロディが特徴。恋人への欲望と再会の喜びを表現した歌詞が、ゲイの柔らかいボーカルで彩られている。軽やかで陽気な雰囲気が漂い、アルバム全体の流れにバランスを与える。 - Distant Lover
このアルバムのハイライトの一つで、切ないラブバラード。ゲイのボーカルは感情の起伏が激しく、離れてしまった恋人への深い思いが歌われている。特に後半の高揚感は圧巻で、ライブでもファンからの支持が厚い名曲。エモーショナルなストリングスが楽曲にドラマティックな要素を加えている。 - You Sure Love to Ball
アルバムの中でも特に官能的な曲で、性的な愛をストレートに表現している。ゆったりとしたグルーヴとゲイの息遣いが交じり合い、リスナーを誘惑するかのようなムードが広がる。セクシュアリティと愛の二面性をバランス良く表現した楽曲だ。 - Just to Keep You Satisfied
別れをテーマにしたバラードで、ゲイの感情が強く込められたラストトラック。シンプルなピアノとストリングスのアレンジが、彼の声を際立たせ、関係の終焉を穏やかに、しかし痛烈に歌い上げている。アルバム全体の感情的な旅を締めくくる、非常に美しい一曲。
アルバム総評:
『Let’s Get It On』は、マーヴィン・ゲイの音楽的才能と感情的深みが凝縮されたアルバムであり、セクシュアリティをテーマにしながらも、スピリチュアルで人間的な要素が強く感じられる作品だ。ゲイの滑らかでセクシーなボーカルと、緻密に作り込まれたサウンドが、アルバム全体に統一感をもたらしている。タイトル曲「Let’s Get It On」をはじめ、「Distant Lover」や「You Sure Love to Ball」など、愛や欲望を複雑な感情とともに表現した楽曲が多く、官能的でありながらも感情に深く訴えかける作品として評価されている。このアルバムは、R&Bやソウルミュージックの新しい方向性を示し、後のアーティストたちに大きな影響を与えた。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- I Want You by Marvin Gaye
『Let’s Get It On』の後にリリースされたアルバムで、さらに官能的で情熱的なサウンドが特徴。セクシュアリティのテーマをさらに深く探求した一枚。 - Hot Buttered Soul by Isaac Hayes
ソウルミュージックの名盤で、官能的かつドラマティックなサウンドが『Let’s Get It On』と共通する。情熱的な歌声と長尺の楽曲が魅力。 - Curtis by Curtis Mayfield
社会的メッセージと個人的な感情を融合させたアルバムで、ファンキーなサウンドとソウルフルなボーカルが特徴。ゲイの感情豊かな表現と共鳴する部分が多い。 - Innervisions by Stevie Wonder
スティーヴィー・ワンダーの代表作で、ソウルとR&Bに強いメッセージ性を加えた一枚。ポップなメロディと感情的な歌詞が、ゲイの作品を好むリスナーにも響くだろう。 - The Heat Is On by The Isley Brothers
ファンクとソウルを融合させたアルバムで、恋愛や情熱をテーマにした楽曲が多く収録されている。ゲイの感情的なアプローチを好む人にはぴったりの一枚。
コメント