アルバムレビュー：Lady Sings the Blues by Diana Ross

発売日: 1972年10月17日
ジャンル: ジャズ、ブルース、サウンドトラック

Lady Sings the Bluesは、ダイアナ・ロスがビリー・ホリデイの半生を描いた同名映画で主演を務めた際のサウンドトラックであり、彼女がジャズとブルースに挑戦した作品である。ダイアナ・ロスは、ビリー・ホリデイの名曲を自らのスタイルで歌い上げ、その表現力を存分に発揮している。このアルバムでは、ホリデイの苦悩や喜びを繊細に表現し、ロスのソウルフルなボーカルとともに、時代を超えたクラシックナンバーが再現されている。音楽的には、ジャズのスタンダードとブルースが見事に融合しており、映画のサウンドトラックとしても、スタンドアロンのアルバムとしても高い評価を受けている。

各曲ごとの解説:

1. Lady Sings the Blues
   　タイトル曲であり、ビリー・ホリデイの代表的なナンバーの一つ。ロスは、ホリデイの繊細で感情的なボーカルを尊重しつつも、独自のスタイルを加え、曲に深みを与えている。悲しみと哀愁が漂うメロディが、映画の雰囲気を巧みに表現している。
2. The Man I Love
   　ガーシュウィン兄弟によるクラシックなラブソング。ロスのしなやかなボーカルが、切ない恋の感情を豊かに表現しており、控えめなジャズの伴奏が曲を優雅に包み込んでいる。ロマンティックでメランコリックな一曲。
3. Them There Eyes
   　テンポの速いアップビートな楽曲で、ロスが楽しげに歌うジャズナンバー。ホーンセクションの華やかな演奏と軽快なリズムが、楽曲にエネルギーを与え、ロスのボーカルも生き生きとしている。
4. What a Little Moonlight Can Do
   　明るくリズミカルな曲で、ロスの軽やかなボーカルが魅力的な一曲。月の光が恋を後押しするというテーマが、ロスの柔らかい歌唱で温かく表現されており、楽しいジャズスタンダードの雰囲気を醸し出している。
5. Love Is Here to Stay
   　ジョージ・ガーシュウィンの名曲をカバーしたバラード。ロスの優美でソウルフルなボーカルが、メロウで優しいメロディに見事に調和している。リスナーに静かな感動を与える美しい一曲だ。
6. You’ve Changed
   　しっとりとしたバラードで、ロスは愛する人の変わりゆく様を悲しげに歌う。哀愁漂うメロディと、ロスの感情的なボーカルが印象的で、心に深く響く楽曲となっている。
7. My Man
   　ビリー・ホリデイの代表曲の一つで、ロスの繊細なボーカルがこの恋愛バラードを感動的に演じている。愛と苦悩が交錯する歌詞が、ロスのパフォーマンスでより深く伝わる。伴奏は控えめだが、その分、彼女の声が際立つ。
8. Good Morning Heartache
   　この曲もビリー・ホリデイの代表作の一つで、ロスはホリデイの感情表現を尊重しながらも、自分自身の解釈を加えている。切ないメロディが胸を締め付け、ロスの繊細な歌声がその感情を一層引き立てている。
9. Strange Fruit
   　アメリカ南部での人種差別とリンチをテーマにした、ビリー・ホリデイの最も衝撃的な楽曲。ロスは、重いテーマに正面から向き合い、静かで抑えたボーカルで深いメッセージを伝えている。張り詰めた緊張感が漂う一曲だ。
10. Ain’t Nobody’s Business If I Do
    　自己決定権をテーマにした、強いメッセージ性のある曲。軽快なリズムとロスの自信に満ちたボーカルが、聴いていて心地よい。ジャズとブルースの要素がバランスよく融合している。

アルバム総評:

Lady Sings the Bluesは、ダイアナ・ロスがビリー・ホリデイという伝説的なジャズシンガーの曲を歌い、自らのボーカルスタイルをジャズとブルースの枠で再解釈した作品だ。映画のサウンドトラックとしても、独立した音楽作品としても高く評価されており、ロスのボーカリストとしての多彩な才能が発揮されている。彼女の表現力豊かなボーカルが、ホリデイの深い感情とメッセージを伝えつつ、ロス独自の色を加えた見事なアルバムだ。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

1. Lady in Satin by Billie Holiday
   ビリー・ホリデイの晩年のアルバムで、感情的な深みが印象的。ロスがホリデイの楽曲を歌ったように、ホリデイの原曲の魅力を改めて感じられる。
2. I’m Still Here by Eartha Kitt
   ソウルフルでジャジーな歌唱が特徴のアーサ・キットのアルバム。ダイアナ・ロスのボーカルの豊かさを好むリスナーにとって、キットの個性的なパフォーマンスも魅力的に映るだろう。
3. Ella Fitzgerald Sings the Cole Porter Songbook by Ella Fitzgerald
   ジャズボーカリストの女王エラ・フィッツジェラルドが、コール・ポーターの名曲を集めた作品。ロスが挑戦したジャズスタンダードの雰囲気をさらに楽しめる。
4. The Essential Sarah Vaughan by Sarah Vaughan
   ジャズとポップスを見事に融合させたサラ・ヴォーンの代表作集。ロスのように繊細かつパワフルなボーカルを持つヴォーンの魅力が詰まった一枚。
5. What a Diff’rence a Day Makes! by Dinah Washington
   ジャズとブルースの両方を完璧に歌いこなすダイナ・ワシントンの名作。ロスの多彩なボーカルスタイルを好むリスナーには、このアルバムも強くおすすめできる。