発売日: 1971年4月19日
ジャンル: ブルースロック、サイケデリックロック
「L.A. Woman」は、The Doorsにとって最後のスタジオアルバムであり、Jim Morrisonが亡くなる前にリリースされた最終作でもある。ブルースへの回帰をテーマに、これまでのサイケデリックロックやアートロックから一転、より生々しい音楽性が前面に押し出されている。タイトル曲「L.A. Woman」や「Riders on the Storm」といった代表曲が収録されており、Morrisonの成熟したボーカルとバンド全体のタイトな演奏が光る。アルバム全体を通して、哀愁漂うブルースとロックが絶妙に混じり合い、時代の終焉を感じさせる一枚となっている。
各曲ごとの解説:
- The Changeling
アルバムの幕開けを飾る「The Changeling」は、ファンキーなベースラインと重厚なブルースロックが特徴。Morrisonのパワフルなボーカルが際立ち、変わりゆく自分自身をテーマにした歌詞がアルバム全体の雰囲気を予感させる。 - Love Her Madly
シングルとしても成功を収めた「Love Her Madly」は、キャッチーなメロディと軽快なリズムが印象的。愛と失望をテーマにしたシンプルな歌詞と、ポップさがありつつも哀愁漂うトーンが魅力的な一曲。 - Been Down So Long
ブルースの伝統に根ざした「Been Down So Long」は、泥臭いギターリフとMorrisonの低く力強いボーカルが印象的。沈んだ気分と脱出への渇望を歌い、アルバム全体にブルースの影響が色濃く反映されている。 - Cars Hiss by My Window
ミニマルで静かなブルースナンバー。「Cars Hiss by My Window」では、夜の街の風景が詩的に描かれ、Morrisonの囁くようなボーカルと、シンプルなギターが織りなすムードが際立つ。曲全体に漂う孤独感が印象深い。 - L.A. Woman
アルバムのタイトル曲であり、The Doorsの代表作の一つ。「L.A. Woman」は、カリフォルニア州ロサンゼルスを舞台にしたロードソングで、都会的な活気と荒廃した雰囲気が混じり合っている。Morrisonのワイルドなボーカルと、Ray Manzarekのオルガンソロが見事に絡み合い、楽曲全体に広がるエネルギーと躍動感が際立つ。 - L’America
サイケデリックな要素が強い「L’America」は、重いギターとオルガンが絡み合い、不安定で不気味な雰囲気を醸し出している。アメリカ社会の暗部を風刺するような歌詞が、Morrisonの冷ややかな声で語られ、重厚なサウンドがリスナーを圧倒する。 - Hyacinth House
幻想的でメランコリックな「Hyacinth House」は、Morrisonの個人的な孤独感と、人生への疲れが漂うトラック。シンプルなギターとオルガンが織り成すメロディが、彼の詩的な歌詞を引き立て、内省的なムードが支配している。 - Crawling King Snake
John Lee Hookerのブルースの名曲をカバーした「Crawling King Snake」は、The Doorsらしいスタイルで再解釈されている。Morrisonの低く力強いボーカルが、曲に新たなエネルギーを与え、バンド全体の演奏がブルースの本質を捉えながらも、独自の雰囲気を作り出している。 - The WASP (Texas Radio and the Big Beat)
この曲は、Morrisonが愛したアメリカ南部のラジオ放送をテーマにしたトラックで、詩的な語り口とリズムのあるサウンドが特徴的。ロカビリーの影響を感じさせるビートとブルースの融合が、独特のグルーヴ感を生み出している。 - Riders on the Storm
アルバムのフィナーレを飾る「Riders on the Storm」は、The Doorsの最も有名な楽曲の一つであり、嵐の中を走るライダーを描く、深く幻想的な曲である。Ray Manzarekの印象的なエレクトリックピアノと、Morrisonの柔らかい語り口調のボーカルが、曲に静けさと緊張感を与えている。物語性のある歌詞と、リスナーを引き込むドラマチックな展開が、アルバムの完璧な締めくくりとなっている。
アルバム総評:
「L.A. Woman」は、The Doorsがブルースロックに立ち返り、より成熟したサウンドを追求したアルバムである。Jim Morrisonのボーカルはこれまで以上に深みを増し、ブルースに根ざしたトラックが、彼の個人的な苦悩や、時代の終焉を反映しているように感じられる。「L.A. Woman」や「Riders on the Storm」といった名曲は、今でもロック史において不朽の存在であり、バンドの多様な音楽性と技術の高さを証明している。アルバム全体を通して、The Doorsが新たな方向性を探りながらも、彼らの本質に忠実であり続けたことを示す名作である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Exile on Main St. by The Rolling Stones
ブルースとロックンロールの融合が見事に展開されており、「L.A. Woman」のファンにぴったりのアルバム。 - Morrison Hotel by The Doors
「L.A. Woman」の前作であり、ブルースロックに方向転換したバンドの姿が見られる。両アルバムは密接に繋がっている。 - Let It Bleed by The Rolling Stones
ブルースとサイケデリックな要素が混じり合ったこのアルバムは、The Doorsのファンにも響くダークで哀愁漂うトーンが特徴。 - At Fillmore East by The Allman Brothers Band
ブルースロックの傑作ライブアルバムで、長尺のインストゥルメンタルと熱狂的な演奏が、The Doorsのサウンドに共通点を持つ。 - Led Zeppelin II by Led Zeppelin
ハードロックとブルースを融合させたこのアルバムは、The Doorsのブルースへのアプローチが気に入ったリスナーにおすすめ。
コメント