発売日: 2000年
ジャンル: インディーロック、ローファイ、エクスペリメンタル
アルバム全体の印象
「It Was Hot, We Stayed in the Water」は、The Microphonesによる2枚目のフルアルバムで、フィル・エルヴラムの音楽的実験と感情的な深みがさらに深化した作品である。本作は、アコースティックギターやドラム、シンセサイザー、フィールドレコーディングなどの多様な音響を組み合わせ、ローファイな美学を追求しながらも、構築美と即興性が際立っている。
アルバム全体には、水や夏をテーマにした抽象的で詩的なイメージが流れており、リスナーをノスタルジックで幻想的な旅へと誘う。複雑な楽曲構造とシンプルなメロディが共存し、ミニマルながらも豊かな音の世界が広がる。特に、「The Glow」や「Karl Blau」といった楽曲は、フィル・エルヴラムの音楽的ビジョンを鮮やかに示しており、彼の後の傑作「The Glow Pt. 2」への布石ともいえる。
「It Was Hot, We Stayed in the Water」は、フィル・エルヴラムの音楽の中核を感じさせる作品であり、インディーロックやローファイのファンにとって、重要な一枚となっている。
各曲解説
1. The Pull
アルバムの幕開けを飾る楽曲で、シンプルなギターと揺れるようなリズムが特徴。静かな始まりが徐々に壮大な音響へと展開する。
2. Ice
ゆったりとしたテンポで進むトラックで、氷の冷たさと感情的な孤立感が交錯する。静謐な雰囲気が心に残る。
3. Sand (Eric’s Trip)
アップテンポでリズミカルなトラック。複雑な楽器構成と、ビーチを思わせる開放感がユニークな一曲。
4. The Glow
アルバムのハイライトとなる楽曲で、後に続く「The Glow Pt. 2」の前奏のような位置づけ。感情的で壮大なサウンドスケープが印象的。
5. Karl Blau
軽やかなリズムとシンプルなメロディが際立つ楽曲で、アルバム全体の中で一息つけるような親しみやすさが魅力。
6. Drums
インストゥルメンタルのトラックで、ドラムパターンが中心となり、ミニマルながらもダイナミックな音響を作り上げている。
7. Deeply Buried
エモーショナルなボーカルと控えめなアコースティックギターが特徴の楽曲。静けさの中に潜む感情の高まりが聴きどころ。
8. I’ll Be in the Air
浮遊感のあるメロディと抽象的な歌詞が特徴。夢の中にいるような感覚を呼び起こす。
9. Moon Moon
エクスペリメンタルなアプローチが際立つ楽曲で、シンセサウンドとノイズが織り交ぜられた独特の音世界を構築。
10. (Something)
アルバムの締めくくりを飾るトラックで、シンプルなメロディと静かな終焉が印象的。リスナーに余韻を残す一曲。
アルバム総評
「It Was Hot, We Stayed in the Water」は、The Microphonesがその音楽的アイデンティティを確立した重要な作品であり、フィル・エルヴラムの創造性が存分に発揮されている。ノスタルジックで感情的なテーマを持ちながらも、実験的な音響アプローチがアルバム全体を貫いており、リスナーに深い印象を残す。
「The Glow」や「Karl Blau」のような楽曲は、彼の後の代表作「The Glow Pt. 2」への道筋を示しつつ、本作自体の完成度も非常に高い。本作は、インディー音楽やローファイサウンドに興味を持つリスナーにとって必聴のアルバムであり、The Microphonesの音楽の核心に触れることができる一枚である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
「The Glow Pt. 2」 by The Microphones
フィル・エルヴラムの代表作で、本作で提示されたテーマがさらに発展した傑作。
「In the Aeroplane Over the Sea」 by Neutral Milk Hotel
ローファイで感情的なサウンドと詩的な歌詞が共通するインディーフォークの名盤。
「A Crow Looked at Me」 by Mount Eerie
フィル・エルヴラムの別プロジェクトで、個人的で感情的な楽曲が多い。
「Bee Thousand」 by Guided by Voices
DIY精神とローファイサウンドが共通し、実験的なインディーロックの名作。
「Spirit They’re Gone, Spirit They’ve Vanished」 by Animal Collective
実験的で幻想的なサウンドが「It Was Hot, We Stayed in the Water」と共鳴する作品。
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