
発売日: 1972年4月**
ジャンル: ライブ・アルバム、ブルースロック、サイケデリック・ロック
Janis Joplinの圧倒的ライブパフォーマンスを収めた決定版
1972年にリリースされたIn Concertは、Janis Joplinのライブ音源を集めた彼女のカリスマ的なステージングを体験できる決定的なアルバムである。Joplinはスタジオアルバムでも圧倒的な表現力を発揮したが、彼女の真価はやはりライブの熱量と即興性にこそ宿っていた。本作には、1968年のBig Brother and the Holding Company時代の録音と、1969年のFull Tilt Boogie Bandとのパフォーマンスが収められており、Joplinの異なる音楽的フェーズを同時に味わえる貴重な作品となっている。
ライブアルバムとしての完成度も高く、彼女の圧倒的な歌唱力、観客とのインタラクション、そして彼女が全身全霊で音楽に没入する姿が鮮明に伝わる。本作を聴けば、Joplinがなぜロック史において唯一無二の存在であるのかがよく分かる。
全曲レビュー
Side A: Big Brother and the Holding Company(1968年ライブ録音)
1. Down on Me
Big Brother and the Holding Company時代の代表曲であり、Joplinの初期のライブエナジーを感じることができる。ブルースとロックが融合した力強い演奏と、彼女のシャウトが炸裂する。
2. Bye, Bye Baby
アルバムBig Brother & the Holding Company(1967年)に収録されていた楽曲のライブバージョン。スタジオ版よりもテンポが速く、ライブならではのグルーヴ感が心地よい。
3. All Is Loneliness
Moondogの楽曲をカバーした実験的なナンバー。サイケデリックなアレンジとJoplinのスキャットが特徴的で、彼女の自由奔放なパフォーマンスが楽しめる。
4. Piece of My Heart
Joplinの最も有名な楽曲のひとつで、ライブならではのダイナミックな表現が魅力。スタジオ版よりもさらに感情的で、観客との一体感が感じられる名演。
5. Road Block
荒々しいギターとパワフルなヴォーカルが炸裂するブルースロックナンバー。ジャムセッション的な雰囲気があり、ライブならではの即興性が光る。
6. Flower in the Sun
未発表曲のライブバージョン。Joplinの歌声が際立ち、観客の熱狂とともにエネルギッシュなパフォーマンスを楽しめる。
7. Summertime
George Gershwinのクラシック曲を、Joplin流のブルースロックにアレンジした傑作。スローなテンポの中で、彼女の感情の起伏を見事に表現した名演。
8. Ego Rock
即興的な要素が強いジャムセッション風の楽曲。バンドとJoplinの掛け合いが楽しく、会場の熱気がダイレクトに伝わってくる。
Side B: Full Tilt Boogie Band(1969年ライブ録音)
9. Half Moon
アルバムPearlに収録されたファンキーなロックナンバーのライブ版。グルーヴィーな演奏とJoplinのシャウトが、スタジオ版よりもさらに生き生きと感じられる。
10. Kosmic Blues
Joplinのソロ初期を代表する楽曲。哀愁漂うメロディとブルースの感情表現が際立ち、彼女のソウルフルな一面を存分に味わえる。
11. Move Over
Joplinのオリジナル楽曲で、恋愛のもどかしさを力強く歌い上げる。バンドとの一体感があり、特にギターとドラムの絡みがライブならではの臨場感を生んでいる。
12. Try (Just a Little Bit Harder)
R&Bとブルースを融合させたエネルギッシュなパフォーマンス。スタジオ版よりもテンポがやや速く、観客の熱気とJoplinの情熱がシンクロする。
13. Get It While You Can
アルバムPearlの最後を飾る名バラードのライブ版。「今のうちに愛を手に入れろ」という歌詞が、Joplinの人生そのものを象徴するように響く。彼女の魂のこもった歌声が涙を誘う。
総評
In Concertは、Janis Joplinのライブパフォーマンスの魅力を余すところなく詰め込んだアルバムであり、彼女の音楽の本質を知るには最適な作品である。Big Brother and the Holding Company時代のサイケデリックで荒々しい演奏と、Full Tilt Boogie Band時代の洗練されたブルースロックの両方を楽しめるのが大きな魅力。
特に「Piece of My Heart」「Summertime」「Move Over」「Get It While You Can」などの名演は、スタジオ版とは異なる生々しさとエネルギーを感じさせ、Joplinがいかに観客と一体になって音楽を作り上げていたかが伝わってくる。
彼女の短いキャリアの中で、ライブがいかに重要な要素だったかを示すこのアルバムは、ロック史に残る伝説的なパフォーマンスの記録であり、Joplinの熱狂的なファンはもちろん、初めて彼女の音楽に触れる人にも強くおすすめできる一枚である。
おすすめアルバム
- Janis Joplin – Pearl (1971)
- スタジオ録音の完成度を極めたJoplinの遺作。彼女の音楽的成熟が感じられる。
- Big Brother and the Holding Company – Cheap Thrills (1968)
- Joplinの初期のサイケデリック・ロック時代を代表するアルバム。
- The Doors – Absolutely Live (1970)
- 同時代のライブ・アルバムの名盤。Jim Morrisonのカリスマ性とJoplinのライブパフォーマンスを比較するのも面白い。
- Aretha Franklin – Aretha Live at Fillmore West (1971)
- Joplinが影響を受けたソウルシンガーのライブ・アルバム。R&Bとブルースのエネルギーを堪能できる。
- Led Zeppelin – How the West Was Won (2003)
- Joplinと同時代に活躍したバンドの伝説的ライブアルバム。ブルースロックのライブの魅力を存分に味わえる。
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- Joplinと同時代に活躍したバンドの伝説的ライブアルバム。ブルースロックのライブの魅力を存分に味わえる。
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