
発売日: 1971年9月9日
ジャンル: ロック、ポップ、シンガーソングライター
理想と現実の狭間で――ジョン・レノンの最も象徴的なアルバム
ビートルズ解散後、1970年の『John Lennon/Plastic Ono Band』で自身の内面を剥き出しにしたジョン・レノンが、翌年発表した2ndソロアルバム『Imagine』。タイトル曲「Imagine」が世界的に愛される一方で、アルバム全体は平和と理想、そして怒りと対立が交錯する作品となっている。
本作は、前作の内省的なトーンから一歩進み、メロディの美しさと政治的・個人的メッセージを融合させた、レノンのソロキャリアの中でも最もポピュラーな作品のひとつとなった。プロデューサーにはフィル・スペクターが参加し、前作よりもリッチなアレンジが施されている。オノ・ヨーコの影響が色濃く反映された楽曲も含まれ、ジョージ・ハリスンがギターで参加するなど、ビートルズ解散後のメンバー同士の関係性も垣間見える。
全曲レビュー
1. Imagine
アルバムのタイトル曲であり、ジョン・レノンの最も有名な楽曲。ピアノ主体のシンプルなアレンジと、ユートピア的な歌詞が特徴。「想像してごらん」と語りかけるレノンの優しいボーカルが印象的だが、背景には政治的・社会的なメッセージが込められている。
2. Crippled Inside
カントリー調の軽快なリズムとは裏腹に、痛烈な皮肉が込められた歌詞が特徴。表面的には取り繕えても、内面は壊れているという、人間の偽善を批判する一曲。
3. Jealous Guy
元々ビートルズ時代に「Child of Nature」として作られた楽曲を改作。オノ・ヨーコとの関係を思わせる歌詞が、ピアノとストリングスの美しいアレンジと相まって、切ない雰囲気を生み出している。
4. It’s So Hard
ブルージーなギターリフとジャズ風のサックスが特徴の楽曲。人生の困難について歌っており、前作の『Plastic Ono Band』のようなシンプルで力強いサウンドに近い。
5. I Don’t Wanna Be a Soldier Mama, I Don’t Wanna Die
戦争や軍隊に対する反戦メッセージが込められた、ジャムセッションのような楽曲。フィル・スペクターのプロダクションが反映され、ヘヴィでサイケデリックな雰囲気を持つ。
6. Gimme Some Truth
怒りに満ちた政治的な楽曲で、ニクソン政権や体制側の欺瞞を批判する歌詞が特徴。ジョージ・ハリスンの鋭いギターソロが曲の攻撃的なトーンをさらに強調している。
7. Oh My Love
穏やかで美しいラブソング。レノンとオノ・ヨーコの関係を反映した楽曲で、シンプルな歌詞と優しいメロディが際立つ。
8. How Do You Sleep?
ポール・マッカートニーへの痛烈な批判曲として有名。ビートルズ解散後の確執が反映されており、「お前の曲は昔よりつまらなくなった」といった直接的な歌詞が登場する。皮肉にも、ジョージ・ハリスンがギターで参加している。
9. How?
人生の意味や不安を問う内省的なバラード。『Plastic Ono Band』の流れを汲む楽曲で、シンプルなピアノとストリングスが感情を際立たせている。
10. Oh Yoko!
アルバムのラストを飾る、オノ・ヨーコへの愛情に満ちた楽曲。陽気なメロディとシンプルな歌詞が、アルバム全体のシリアスなトーンの中で明るさを提供する。
総評
『Imagine』は、ジョン・レノンのソロキャリアにおける最も象徴的な作品であり、理想主義的なメッセージと個人的な怒りや苦悩が混在したアルバムとなっている。タイトル曲「Imagine」の平和なムードとは裏腹に、ポール・マッカートニーへの攻撃的な「How Do You Sleep?」や、政治的な「Gimme Some Truth」など、レノンの激しい側面も垣間見える。
前作『Plastic Ono Band』のミニマルなアプローチから一転し、フィル・スペクターのプロダクションによってよりリッチなサウンドが施され、聴きやすくなっているのも特徴的。ビートルズ解散後のレノンが、ソロアーティストとしての地位を確立したアルバムであり、単なる理想論ではなく、葛藤や現実との闘いが描かれている点が魅力だ。
ジョン・レノンの音楽の多面性を知るには必聴の一枚。ポップスとしての完成度と、ロックの持つ攻撃性が絶妙に共存した作品となっている。
おすすめアルバム
- John Lennon – Plastic Ono Band (1970)
- より内省的でミニマルなサウンドを求めるならこちら。
- Paul McCartney – Ram (1971)
- レノンとの確執が深まる中でリリースされたマッカートニーの名盤。『Imagine』と対比して聴くと興味深い。
- George Harrison – All Things Must Pass (1970)
- レノンと並んでビートルズ解散後の名盤とされる作品。スピリチュアルな要素が強い。
- Bob Dylan – The Times They Are A-Changin’ (1964)
- 政治的メッセージを込めたアルバムとして、レノンの影響源のひとつ。
- David Bowie – Hunky Dory (1971)
- 同時期に発表されたロックの名作で、ジョン・レノンにも影響を受けた作品。
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- 同時期に発表されたロックの名作で、ジョン・レノンにも影響を受けた作品。
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