
発売日: 2007年11月6日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、スペース・ロック、ポストハードコア
自己革命の続編——よりパーソナルに、より壮大に
2006年のデビュー作We Don’t Need to Whisperで、ポップパンクからスペース・ロックへと大胆な方向転換を果たしたAngels & Airwaves(AVA)。その流れを引き継ぎつつ、より内面的な視点を加えたのが2ndアルバムI-Empireだ。
前作と同じく「希望」「変化」「未来」といったテーマを軸にしながらも、本作ではよりパーソナルな感情や自己発見の旅が強調されている。Tom DeLonge自身は本作について、「個人的な革命を描いたアルバム」と語っており、スケールの大きなサウンドとエモーショナルな歌詞が融合している。
全曲レビュー
1. Call to Arms
アルバムの幕開けを飾る、ダイナミックなオープニング・トラック。シンセが高らかに鳴り響き、U2的なアンセミックなギターサウンドが展開される。歌詞は、希望と未来への旅立ちを象徴しており、アルバム全体のテーマを決定づける。
2. Everything’s Magic
キャッチーなメロディが印象的な、本作を代表するシングル。シンプルなコード進行と、Tom DeLonge特有の高揚感のあるボーカルスタイルが魅力的。歌詞は愛と人生の美しさを描いており、ポジティブなエネルギーに満ちている。
3. Breathe
静かなピアノとアンビエントなシンセが、幻想的な雰囲気を作り出すバラード。Tom DeLongeの繊細なボーカルと、壮大なストリングスが美しく調和し、アルバムの中でも特に感情的なトラック。
4. Love Like Rockets
エネルギッシュなギターリフとリズミカルなドラムが特徴の楽曲。タイトル通り、恋愛をロケットのような推進力に例えた、ダイナミックなラブソング。
5. Sirens
スペーシーなシンセとメロディアスなギターリフが印象的な楽曲。曲の構成はシンプルながらも、徐々にビルドアップしていく展開がドラマティック。
6. Secret Crowds
本作のハイライトの一つであり、ファンの間でも人気の高い楽曲。サビでの「If I had my own world…」というラインが印象的で、Tom DeLongeの理想郷への憧れが込められている。ギターの厚みとエピックなコーラスが、楽曲のスケールをさらに拡張している。
7. Star of Bethlehem
インストゥルメンタルのインタールード。次の曲へのブリッジとして機能し、アルバム全体の流れをシームレスに繋げている。
8. True Love
シンプルなリズムと美しいメロディが際立つ、エモーショナルなラブソング。AVAの楽曲の中でも特に感傷的な雰囲気が強く、リスナーの心に響く一曲。
9. Lifeline
シンセとリズミカルなギターが絡み合う、エネルギッシュなトラック。歌詞では、人生における挑戦や困難を乗り越えることの重要性が歌われている。
10. Jumping Rooftops
もう一つのインストゥルメンタル。ダークで映画的な雰囲気があり、アルバム全体のムードを高める役割を果たしている。
11. Rite of Spring
Tom DeLongeの青春時代の思い出を描いた、自伝的な楽曲。Blink-182時代のノスタルジーを感じさせる歌詞が印象的で、AVAの中では異色のトラック。
12. Heaven
アルバムを締めくくる壮大なフィナーレ。スローテンポで幻想的な雰囲気を持ち、まるで宇宙に漂うような浮遊感のあるサウンドスケープが展開される。最後に相応しい、壮大なエンディング。
総評
I-Empireは、We Don’t Need to Whisperのスピリットを受け継ぎながらも、よりパーソナルでエモーショナルな側面を強調したアルバムである。
本作では、自己改革や人生の旅、愛と希望といったテーマが色濃く描かれており、Tom DeLonge自身の内面的な成長が反映された作品となっている。サウンド面では、引き続きU2やThe Cureの影響を感じさせるものの、よりダイナミックな展開やポップなメロディが強調され、親しみやすい楽曲が増えた。
前作と比較すると、壮大なコンセプトを持ちながらも、よりリスナーに寄り添う形で楽曲が作られており、ファン層を広げることに成功。そのため、AVAの中でも特にポピュラーな作品の一つとして評価されている。
おすすめアルバム
- U2 – The Unforgettable Fire (1984)
広がりのあるギターとドラマティックなアレンジが、本作と共鳴する。 - 30 Seconds to Mars – This Is War (2009)
エモーショナルで壮大なサウンドスケープがAVAと近い。 - M83 – Hurry Up, We’re Dreaming (2011)
シネマティックなシンセとロマンティックなムードが共通する。 - The Killers – Sam’s Town (2006)
スペース・ロック的なアプローチとアンセミックなサウンドが共通点を持つ。 - Blink-182 – Neighborhoods (2011)
Tom DeLongeの影響が色濃く出た、Blink-182の中で最もAVAに近い作品。
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