発売日: 2011年10月18日
ジャンル: ドリームポップ、シンセポップ、ニューウェーブ
Hurry Up, We’re Dreamingは、フランスのエレクトロニカ・プロジェクトM83が発表した6作目のスタジオアルバムであり、アンソニー・ゴンザレスが彼の音楽的ヴィジョンをさらに壮大なスケールで表現した作品である。全22曲、2枚組のこのアルバムは、夢や青春への憧れ、記憶と幻想がテーマとなっており、ノスタルジックで感情的なサウンドスケープが広がっている。M83にとって新たなステージを開くアルバムとなり、世界的にヒットしたシングル「Midnight City」を含むこの作品は、彼らの音楽性の頂点を象徴する一枚である。
アルバムは、アンビエントで幻想的な要素と、シンセポップのキャッチーな要素が美しく融合しており、青春の甘酸っぱい記憶や失われた時間への憧憬が詰まっている。「Intro」から「Outro」に至るまで、各トラックがまるで一つの映画のシーンのように連なり、リスナーを夢の中に引き込む体験が味わえる。Hurry Up, We’re Dreamingは、M83のキャリアを象徴する名盤であり、感情と壮大なサウンドが交錯する、幻想的なアルバムである。
トラックごとの解説
1. Intro (feat. Zola Jesus)
荘厳なシンセとZola Jesusのボーカルが印象的なイントロで、アルバムの壮大な世界観を予感させる。希望と期待が膨らむような高揚感が感じられる一曲。
2. Midnight City
M83の代表曲として広く知られるシングルで、シンセポップのキャッチーなメロディと特徴的なサックスソロが印象的。青春と自由を象徴するかのようなエネルギッシュなトラックで、アルバムの中核をなしている。
3. Reunion
アップテンポで力強いリズムが特徴の楽曲で、再会と高揚感がテーマ。シンセとビートが調和し、感動的なクライマックスを迎える一曲。
4. Where the Boats Go
短いインストゥルメンタルで、静かで叙情的な雰囲気が漂う。夢と現実の狭間にいるかのような、優しい音の流れが心地よい。
5. Wait
美しいバラードで、シンプルなギターとシンセのメロディが際立つ。リリックには、切ない感情と失われた時間への郷愁が込められており、心に残る感動的な一曲。
6. Raconte-Moi Une Histoire
語りかけるような子供の声が印象的な楽曲で、童話のような幻想的な雰囲気が漂う。遊び心あふれるサウンドが、新鮮で楽しい一面を見せている。
7. Train to Pluton
短いインストゥルメンタルで、シンセが幻想的なムードを演出。星々の間を走る列車を思わせるような、ミステリアスな一曲。
8. Claudia Lewis
ポップでありながらもメランコリックなトラックで、青春の一瞬を切り取ったような美しいメロディが印象的。シンセサウンドがきらめき、聴いていて心が温かくなる。
9. This Bright Flash
激しいビートとシンセが絡み合うダイナミックな一曲で、エネルギッシュなサウンドが特徴的。物語のクライマックスのような高揚感がある。
10. When Will You Come Home?
シンプルなメロディと控えめなビートが特徴の短いインストゥルメンタルで、アルバム全体にひと息つけるような癒しをもたらす。
11. Soon, My Friend
静かで内省的なトラックで、アルバム前半の終わりを告げるような雰囲気。アンビエントなサウンドが広がり、リスナーを深い感傷に浸らせる。
12. My Tears Are Becoming a Sea
ドラマチックで荘厳なサウンドが特徴の楽曲で、感情が溢れるような力強さがある。ピアノとシンセのハーモニーが心に響く。
13. New Map
シンセとビートがエネルギッシュなトラックで、冒険的な雰囲気が漂う。希望と前進のテーマが感じられ、リズミカルで聴き応えがある。
14. OK Pal
軽快でキャッチーなサウンドが印象的な一曲。ポップでありながらも懐かしさが漂い、青春の日々が蘇るようなトラック。
15. Another Wave from You
短いインストゥルメンタルで、波のようにゆっくりと流れるメロディが心地よい。静かな余韻が残る。
16. Splendor
荘厳で美しいトラックで、神秘的なシンセが印象的。感情を揺さぶるようなサウンドが心に響き、アルバムのハイライトの一つ。
17. Year One, One UFO
エネルギッシュでリズミカルな楽曲で、未来的で躍動感のあるサウンドが魅力。アルバム後半の活気を盛り上げる。
18. Fountains
アンビエントなインストゥルメンタルで、穏やかな雰囲気が漂う。静寂と音のコントラストが美しく、リスナーに癒しを与える。
19. Steve McQueen
力強く感動的なトラックで、夢と希望がテーマ。シンセの壮大なサウンドが映画のような高揚感を生み出し、アルバムのピークの一つとなっている。
20. Echoes of Mine
語りが印象的なトラックで、過去の記憶と向き合うかのようなエモーショナルな楽曲。シンセとビートが幻想的な空気を演出している。
21. Klaus I Love You
アップテンポで力強いインストゥルメンタル。疾走感があり、感情をかき立てるサウンドが特徴。
22. Outro
アルバムのフィナーレを飾る壮大な楽曲で、シンセとオーケストラの音が融合し、劇的なエンディングを迎える。夢と現実が交錯するような余韻が心に残る。
アルバム総評
Hurry Up, We’re Dreamingは、M83が到達した感情的で壮大な音楽の頂点であり、夢と記憶、そして青春の儚さを描き出す圧倒的なスケールのアルバムである。アンソニー・ゴンザレスの音楽性は、シンセポップのキャッチーさとアンビエントの幻想的な要素が美しく融合し、ノスタルジックなテーマと共にリスナーを魅了する。アルバム全体がまるで映画のサウンドトラックのように流れ、各トラックが異なるシーンを演出しながら一つの物語を紡ぎ出す。Hurry Up, We’re Dreamingは、M83の代表作として、ドリームポップとシンセポップファンにとって欠かせない作品である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Teen Dream by Beach House
ドリームポップの傑作で、幻想的なサウンドとエモーショナルな歌詞が特徴。ノスタルジックでメランコリックな雰囲気がM83の世界観に通じる。
Disintegration by The Cure
80年代のポストパンクの名作で、ドラマチックで暗い雰囲気が特徴。内省的で幻想的な要素がM83のエモーショナルなトーンと共鳴する。
Violator by Depeche Mode
シンセポップのクラシックで、力強いビートとメランコリックなメロディが魅力。M83のシンセサウンドに通じる部分がある。
In Colour by Jamie xx
アンビエントなエレクトロニカが特徴の作品で、ノスタルジックでリズミカルなビートが楽しめる。M83のリズムと情緒的なサウンドが好きなリスナーにおすすめ。
The Suburbs by Arcade Fire
郊外の生活と青春のノスタルジーがテーマのアルバムで、壮大なスケールと感情的な歌詞が魅力。M83の青春の儚さを感じるテーマと通じるものがある。
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