発売日: 2010年2月8日
ジャンル: トリップホップ / エクスペリメンタル・ロック / エレクトロニカ
Massive Attackの5thアルバムHeligolandは、7年ぶりの新作としてファンからの期待を一身に受けてリリースされた。本作では、前作100th Windowの冷たくデジタルな質感から脱し、より有機的で温かみのあるサウンドへとシフトしている。同時に、トリップホップ特有の緊張感や実験性は失われておらず、アルバム全体を通じて洗練された音楽性が際立っている。
このアルバムには、Tunde Adebimpe(TV on the Radio)、Hope Sandoval(Mazzy Star)、Guy Garvey(Elbow)、Damon Albarn(Blur / Gorillaz)といった豪華なゲストボーカリストが参加。それぞれの個性的な歌声が、Massive Attackの重厚なサウンドと美しく調和している。以下に、全10曲を詳しく解説する。
1. Pray for Rain
Tunde Adebimpeがボーカルを務める、重厚で荘厳な一曲。静かなイントロから徐々に展開されるサウンドスケープが圧巻で、アルバムの幕開けにふさわしい楽曲。歌詞には、希望と絶望が交錯するテーマが込められている。
2. Babel
Martina Topley-Birdがボーカルを担当。ダークで不穏なベースラインと、繊細なストリングスが楽曲全体を支配している。歌詞には、コミュニケーションや疎外感といったテーマが込められている。
3. Splitting the Atom
Daddy Gがメインボーカルを務める、アルバムを代表する一曲。ダブの影響が色濃い重厚なビートと、反復的なメロディが特徴的。緊張感に満ちた雰囲気が聴き手を圧倒する。
4. Girl I Love You
レゲエシンガーHorace Andyによるボーカルが中心の楽曲。独特のフロート感を持つリズムと、徐々に高まる緊張感が聴きどころ。ミニマルなアレンジが印象的で、アルバムの中でも特にドラマチックな一曲。
5. Psyche
Martina Topley-Birdが再びボーカルを担当。ミニマルなビートとドリーミーなサウンドスケープが特徴で、幻想的なムードを醸し出している。歌詞には、内面の葛藤と再生が描かれている。
6. Flat of the Blade
Guy Garvey(Elbow)がボーカルを務める、感情的で緊張感のある楽曲。ビートの切れ味と、深みのあるストリングスがドラマチックな印象を与える。歌詞には愛と脆さがテーマとして表現されている。
7. Paradise Circus
Hope Sandoval(Mazzy Star)がボーカルを担当する、美しくもメランコリックな楽曲。ピアノを中心としたシンプルなアレンジが、Sandovalの儚げな歌声を引き立てる。歌詞には、愛の甘さと苦さが詩的に描かれている。
8. Rush Minute
3Dがメインボーカルを務める一曲。反復的なリズムとダークなサウンドが、焦燥感と孤独を描き出している。アルバム全体の中で比較的ミニマルな印象を持つ。
9. Saturday Come Slow
BlurやGorillazのDamon Albarnがボーカルを担当。控えめなギターと重厚なベースが絡み合い、悲しみと希望が交錯するムードを生み出している。歌詞には、戦争や犠牲といった社会的なテーマが込められている。
10. Atlas Air
アルバムのラストを飾る大作で、3Dがボーカルを務める。徐々に高まるビートと、壮大なサウンドスケープが特徴。アルバム全体を総括するようなテーマが込められており、聴き終わった後に深い余韻を残す。
アルバム総評
Heligolandは、Massive Attackの成熟した音楽性と、豪華なゲストボーカルの個性が見事に融合した作品だ。前作100th Windowの冷たくミニマルなサウンドから、より有機的で情感豊かな方向へと進化している。ダブ、トリップホップ、エレクトロニカといった要素が織り交ぜられたアルバムは、心地よい重厚感と、どこか夢のような浮遊感を併せ持つ。Massive Attackのキャリアにおいて新たな地平を切り開いた本作は、リスナーに深い感動と没入感を与えるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Mezzanine by Massive Attack
よりダークでヘヴィなトリップホップを追求した3rdアルバム。Heligolandのルーツを感じられる。
Dummy by Portishead
トリップホップの代表作。ダークなムードと感情的な深みがHeligolandと共通する。
Third by Portishead
さらに実験的で重厚なサウンドを追求したアルバム。両者の進化の軌跡が似ている。
Maxinquaye by Tricky
Massive Attackの元メンバーによるソロデビュー作で、より荒々しいトリップホップを楽しめる。
The Eraser by Thom Yorke
エレクトロニカと内省的な歌詞が特徴的なアルバム。Heligolandの感情的な深みに共鳴する。
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