発売日: 2017年5月12日
ジャンル: ポップロック、ソフトロック、フォークロック
アルバム全体の印象
Harry Stylesのソロデビューアルバム『Harry Styles』は、ワン・ダイレクションとしての活動を経たスタイルズが、自身の音楽的アイデンティティを初めて本格的に提示した作品だ。アルバムは、1970年代のクラシックロックやフォークから影響を受けつつ、現代的なポップセンスを融合させたサウンドを展開している。
シングル「Sign of the Times」の壮大なバラードを筆頭に、アルバム全体にわたって感情豊かなボーカルと巧みなメロディが際立つ。歌詞は恋愛や自己探求をテーマにした内容が中心で、スタイルズの内省的な一面が垣間見える。プロデューサーには、ジェフ・バスカーやアレックス・サロップといった名うてのミュージシャンを迎え、シンプルながらも深みのある楽曲が揃っている。
『Harry Styles』は、ポップスターとしてのスタイルズがアーティストとしての成長を示した作品であり、ファンと批評家の双方から高く評価された。これによって、彼はワン・ダイレクションを超えた新たな音楽的ステージへと進化を遂げた。
トラックごとの解説
1. Meet Me in the Hallway
アルバムのオープニングを飾るミッドテンポのトラックで、幻想的なギターリフと繊細なボーカルが印象的。「Give me some morphine」という歌詞が象徴するように、失恋の痛みと希望の狭間を描いている。
2. Sign of the Times
リードシングルで、スタイルズの代表曲。壮大なピアノとストリングスが楽曲を彩り、時代を超えたバラードとして評価されている。「Just stop your crying, it’s a sign of the times」というフレーズが、混乱する世界への静かな訴えを込めて響く。
3. Carolina
軽快で遊び心のあるロックトラック。ブルース的な要素を含み、リズム感のあるギターリフが曲を引き立てる。歌詞にはミステリアスなキャラクターが描かれており、ファンの間で多くの議論を呼んだ。
4. Two Ghosts
アコースティックギターを基調としたシンプルなバラード。過去の恋愛を振り返る内容で、切ないメロディがスタイルズの柔らかいボーカルと完璧に調和している。
5. Sweet Creature
フォーク調の美しいトラックで、アコースティックギターとボーカルだけで構成されるシンプルさが魅力。「Wherever I go, you bring me home」という歌詞が、普遍的な愛情のテーマを浮き彫りにする。
6. Only Angel
冒頭のドリーミーなイントロから一転、激しいロックサウンドに突入するエネルギッシュな楽曲。1970年代のグラムロックを思わせる派手なギターとボーカルが印象的。
7. Kiwi
アルバムで最も攻撃的なロックトラック。爆発的なエネルギーを持つギターリフと、力強いボーカルが楽曲を支配し、ライブでの盛り上がりが想像できる一曲。
8. Ever Since New York
繊細で叙情的なトラックで、ギターのアルペジオが印象的。歌詞には都市の孤独感や失恋が描かれており、スタイルズの内面的な思いが強く感じられる。
9. Woman
レトロなグルーヴを持つ楽曲で、ユーモアと嫉妬をテーマにした歌詞が特徴的。ファンキーなピアノとスタイルズのセクシーなボーカルが際立つ一曲。
10. From the Dining Table
アルバムの最後を飾るアコースティックナンバーで、最も内省的な楽曲。「Even my phone misses your call」という歌詞が、失恋の孤独を詩的に表現している。スタイルズの繊細なボーカルが心に響く。
アルバム総評
『Harry Styles』は、アーティストとしてのスタイルズの新たな一面を見せつけたアルバムだ。多様なジャンルを取り入れながらも、アルバム全体に統一感があり、彼の音楽的センスと個性が鮮烈に表れている。
「Sign of the Times」を中心に、感情的で内省的な楽曲とエネルギッシュなロックトラックがバランスよく配置され、リスナーを飽きさせない。デビュー作として驚くべき完成度を誇り、スタイルズのポテンシャルと音楽的未来を予感させる作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Fine Line by Harry Styles
スタイルズのセカンドアルバム。『Harry Styles』よりもポップでカラフルな楽曲が揃う。
Rumours by Fleetwood Mac
70年代の影響を感じるアルバムで、『Harry Styles』のサウンドと共通点が多い。
Goodbye Yellow Brick Road by Elton John
多様なジャンルを取り入れたポップロックの名盤。スタイルズの音楽性に響くものがある。
21 by Adele
感情的なボーカルとドラマチックな楽曲が、スタイルズの内省的な一面を好むリスナーにぴったり。
Blue by Joni Mitchell
叙情的な歌詞とフォークスタイルのアレンジが、スタイルズのアコースティックナンバーと響き合う。
コメント