アルバムレビュー：Goddamnit by Alkaline Trio

アルバムレビュー

2025.03.09

発売日: 1998年10月13日
ジャンル: パンク・ロック、ポップ・パンク、エモ

生々しい衝動と哀愁——Alkaline Trioの原点
全曲レビュー
総評
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生々しい衝動と哀愁——Alkaline Trioの原点

1998年にリリースされたGoddamnitは、Alkaline Trioのデビューアルバムであり、彼らの音楽性の核となる要素を確立した作品だ。荒削りながらもエモーショナルな歌詞、キャッチーなメロディ、パンキッシュな衝動が詰め込まれたこのアルバムは、後のエモやポップ・パンクシーンに大きな影響を与えた。

フロントマンのマット・スキバ（ギター/ヴォーカル）による失恋、孤独、自己破壊的な感情を吐き出すようなリリックが特徴的で、彼のシグネチャーであるダークで皮肉めいたユーモアも垣間見える。また、ダン・アンドリアーノ（ベース/ヴォーカル）のメロディアスなベースラインが楽曲に厚みを加え、シンプルながらも力強いサウンドを生み出している。

レコーディングはわずか5日間で行われたと言われており、荒々しくも熱量の高いパンク・サウンドがそのままパッケージされている。

全曲レビュー

1. Cringe

アルバムの幕開けを飾るエネルギッシュなパンクナンバー。「Why you gotta make me feel like this？」というラインが、絶望と怒りの感情を象徴する。

2. Cop

ストレートなパンクサウンドの楽曲で、疾走感のあるギターとシンガロングできるコーラスが特徴的。

3. San Francisco

メロディアスなリフと切ない歌詞が印象的な楽曲。「I don’t want to go to San Francisco」と繰り返されるフレーズが、失った愛と未練を感じさせる。

4. Nose Over Tail

ラブソングでありながらも、どこか悲しげなトーンを持つ。ポップ・パンク的な要素が強く、後のAlkaline Trioのスタイルを示唆する楽曲。

5. As You Were

シンプルなコード進行ながらも、歌詞の持つ哀愁が際立つ楽曲。メロディの美しさと疾走感が絶妙なバランスを持つ。

6. Enjoy Your Day

アコースティックギターが主体の楽曲で、アルバムの中でも異色の存在。静かに語るようなボーカルが、喪失感を際立たせる。

7. Clavicle

キャッチーなメロディとエモーショナルなヴォーカルが融合した代表的な楽曲。タイトルは鎖骨（Clavicle）を意味し、恋愛における身体的な接触や繊細な感情を描写している。

8. My Little Needle

勢いのあるパンク・サウンドに、ドラマティックなメロディが乗る楽曲。アルコールや自己破壊的な要素が歌詞に込められている。

9. Southern Rock

ダークな雰囲気を持つ楽曲で、コード進行が特徴的。リズムの変化が面白く、バンドの多様性を示している。

10. Message from Kathlene

ギターのリフが印象的な楽曲で、ポップ・パンクのエッセンスを持ちつつ、感傷的な歌詞が特徴的。

11. Trouble Breathing

メロディックながらも、どこか影を落とすような雰囲気を持つ楽曲。「I can’t breathe, I feel like I’m gonna die」というフレーズが、絶望感を強調する。

12. Sorry About That

アルバムを締めくくるバラード調の楽曲。アコースティックギターとエモーショナルなボーカルが、静かに余韻を残す。

総評

Goddamnitは、Alkaline Trioの出発点として完璧なデビューアルバムであり、後の作品にも引き継がれる要素が多く詰め込まれている。荒々しいパンクサウンドと、ダークで感傷的なリリックの融合が特徴的であり、エモやポップ・パンクのジャンルにおいて重要な作品のひとつとして位置付けられている。

本作の生々しいサウンドと感情の爆発は、後のMaybe I’ll Catch Fire（2000年）やFrom Here to Infirmary（2001年）で洗練されていくが、バンドの最もピュアな衝動を記録した作品として今もなお高く評価されている。

特に、失恋や絶望感をストレートに表現した楽曲が多く、感情的なパンク・ロックを求めるリスナーには最適なアルバムである。