アルバムレビュー：Fun Trick Noisemaker by The Apples in Stereo

発売日: 1995年5月2日
ジャンル: インディーロック、ローファイ、サイケデリックポップ

Fun Trick Noisemakerは、The Apples in Stereoのデビューアルバムであり、エレファント6コレクティブのサイケデリックポップの精神を代表する作品だ。60年代のサイケデリックロックやポップミュージックからの影響が色濃く表れ、シンプルでキャッチーなメロディと、ローファイな音質が特徴となっている。このアルバムは、The BeatlesやThe Beach Boysを彷彿とさせるポップセンスに、実験的なプロダクションや遊び心を加え、温かみのあるサウンドを作り上げている。ノスタルジックでありながらも新鮮さを感じさせるこの作品は、サイケデリックポップのリバイバルを象徴する重要な一枚である。

各曲ごとの解説:

1. The Narrator
   　アルバムの冒頭を飾るこの曲は、ジャングリーなギターリフとローファイなプロダクションが印象的。ロバート・シュナイダーの柔らかいボーカルがポップなメロディにマッチし、明るく軽快なサウンドが展開される。The Beatles的なサイケデリックポップの影響が感じられる楽しい一曲。
2. Tidal Wave
   　シンプルでキャッチーなメロディと繰り返されるギターリフが頭に残る。曲全体がエネルギッシュで、ポップなサウンドとアーケードゲームのようなエフェクトがミックスされ、楽しい雰囲気を作り出している。
3. High Tide
   　スペーシーなサウンドエフェクトと、リバーブの効いたギターが、浮遊感のある雰囲気を醸し出している。曲のミディアムテンポが心地よく、夢の中にいるような気分を味わえるサイケデリックな一曲だ。
4. Green Machine
   　この曲は、60年代のガレージロックにインスパイアされたシンプルなギターリフが特徴的。軽快でリズミカルなドラムが楽曲を引き立て、シュナイダーのボーカルがポップなメロディに乗る。短くても力強いエネルギーを感じる一曲。
5. Winter Must Be Cold
   　穏やかなテンポとメロディが印象的なこの曲は、冬の孤独や静けさをテーマにしている。アコースティックギターとボーカルが中心となり、シンプルで感傷的な雰囲気が漂っている。ノスタルジックで内省的な感覚を呼び起こす一曲。
6. She’s Just Like Me / Taking Time
   　二部構成のこの曲は、前半の軽快でポップなメロディと、後半のよりゆったりとした部分が対照的。ボーカルハーモニーとローファイなプロダクションが曲全体を包み込み、曲の転換が新鮮な印象を与える。
7. Glowworm
   　シンプルで繰り返されるギターフレーズと、明るく楽しいボーカルが特徴。60年代ポップの影響が感じられ、軽快なリズムとメロディが印象的。短くてインパクトのある一曲で、アルバムの中でも特にポップな側面が際立つ。
8. Dots 1-2-3
   　ノイズとポップが交錯する実験的なトラックで、反復するリズムと奇妙なエフェクトが楽曲を飾っている。独特なリズム感とキャッチーなメロディが組み合わさり、シュールな雰囲気が楽しめる。
9. Lucky Charm
   　軽快なビートとリズミカルなギターリフが印象的なポップソング。キャッチーでありながらも、どこか不思議な浮遊感が漂う一曲で、リスナーに心地よい感覚を与える。明るいメロディがアルバムの楽しいトーンを引き継いでいる。
10. Innerspace
    　スペースサイケを思わせる曲で、リバーブやエコーが深くかかったギターが特徴的。夢幻的なサウンドスケープが広がり、まるで宇宙空間を漂うような浮遊感を味わえる。内省的なボーカルと幻想的なサウンドが印象的。
11. We’re in the City
    　ジャングリーなギターと軽快なビートが特徴の楽曲。都会生活のスピード感を感じさせるテンポの早いトラックで、エネルギッシュで躍動感がある。ポップなメロディとシュナイダーの穏やかなボーカルが曲を引き立てている。
12. Stop Along the Way
    　アルバムを締めくくるこのトラックは、穏やかなアコースティックサウンドで、メロディはシンプルながらも感動的。ゆったりとしたテンポで、温かくリラックスした雰囲気が漂う。アルバム全体のノスタルジックなテーマを総括するかのような、穏やかな終わり方が印象的だ。

アルバム総評:

Fun Trick Noisemakerは、The Apples in Stereoが持つポップセンスとローファイなサウンドが絶妙に融合したデビューアルバムで、60年代サイケデリックポップへの敬意を表しつつ、現代的な実験性を加えている。ロバート・シュナイダーのキャッチーで明るいメロディと、遊び心のあるプロダクションが、このアルバムを聴きやすくしつつも、どこか奇妙で新鮮な感覚を与えている。ローファイなサウンドとシンプルな楽曲構成が、エレファント6コレクティブの音楽性を象徴しており、楽しい一方でノスタルジックな雰囲気も感じさせる。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

1. In the Aeroplane Over the Sea by Neutral Milk Hotel
   エレファント6コレクティブの代表作で、サイケデリックなポップとローファイなプロダクションが共通している。感情的で内省的な歌詞とメロディが魅力。
2. Dusk at Cubist Castle by The Olivia Tremor Control
   サイケデリックなポップと実験的なサウンドが融合したアルバムで、Fun Trick Noisemakerと同じエレファント6コレクティブの一員であるため、サウンドの親和性が高い。
3. Bee Thousand by Guided by Voices
   ローファイなサウンドとシンプルでキャッチーなメロディが特徴のこのアルバムは、The Apples in Stereoのファンにも響く。短い曲と実験的なプロダクションが共通点。
4. Tone Soul Evolution by The Apples in Stereo
   The Apples in Stereoのセカンドアルバムで、より洗練されたポップサウンドが楽しめる。Fun Trick Noisemakerが好きなら、続けて聴くべき作品。
5. Wowee Zowee by Pavement
   インディーロックとローファイサウンドの先駆けとして知られるこのアルバムは、実験的な要素とキャッチーなメロディがFun Trick Noisemakerと共通している。