発売日: 2018年
ジャンル: ポストブラックメタル、アヴァンギャルドメタル、エクスペリメンタルロック
アルバム全体の印象
『Frightened』は、英国出身のエクスペリメンタルバンドVoicesによるサードアルバムであり、ポストブラックメタルの枠を超えた大胆な音楽的試みが詰まった作品である。本作では、攻撃的なギターリフやブラストビートといったメタルの要素に加え、ポストパンクやゴシック、さらにはアンビエントやアートロックの影響が見られ、ジャンルの境界を曖昧にするサウンドが展開されている。
歌詞には都市の孤独、内面的な葛藤、恐怖、絶望がテーマとして描かれており、その詩的な内容が楽曲の深みを増している。また、アルバム全体の構成は一つの物語のように緻密に組み立てられ、リスナーに音楽的な没入感を与える。ダークな雰囲気と劇的な展開が融合し、強烈な感情を引き起こす一作だ。
『Frightened』は、Voicesの音楽的ビジョンが最も明確に表現されたアルバムであり、メタルファンだけでなく、実験音楽や暗いテーマのアートに興味のあるリスナーにとっても魅力的な作品だ。
トラックごとの解説
1. Unknown
アルバムのオープニングを飾るトラックで、不穏なアンビエントサウンドと囁くようなボーカルが印象的。恐怖と混乱を象徴するような雰囲気が漂い、リスナーをアルバムの世界観に引き込む。
2. Rabbits Curse
ブラストビートとヘビーなギターリフが炸裂する攻撃的なトラック。ボーカルは悲痛な叫びと囁きの間を行き来し、絶望的な歌詞が際立つ。
3. Evaporated
ミッドテンポのリズムとポストパンク風のベースラインが特徴の楽曲。重厚なギターサウンドと浮遊感のあるメロディが融合し、独特の空気感を生み出している。
4. Frightened
アルバムのタイトル曲で、感情的なボーカルと劇的な楽曲展開が印象的。自己の存在に対する不安や恐れをテーマにした歌詞が強烈に響く。
5. Home
アルバムの中でも静的なトラックで、ピアノと控えめなボーカルが中心。悲しげなメロディと叙情的な歌詞が心に残る。
6. The Witch
スリリングな楽曲で、急激なテンポの変化とダイナミックな構成が聴きどころ。魔女狩りを暗喩とした歌詞が、社会の冷酷さや個人の孤立感を表現している。
7. Falling Away
スローでドラマチックな楽曲。暗い雰囲気の中に微かな希望が感じられるメロディが印象的で、Voicesの多面的な音楽性が感じられる。
8. Silent Breath
アンビエント的な要素を取り入れた静寂の中に広がるトラック。耳元で囁くようなボーカルと音響効果が、恐怖心を増幅させる。
9. Footsteps
アルバムの中盤を盛り上げるアグレッシブな一曲。ギターリフが緊張感を作り出し、複雑なリズムパターンが印象的。
10. Dreams of a Dead City
静的なパートと爆発的なパートが交互に現れる構成で、終末的な都市のイメージを描き出す。深いリバーブの効いたギターサウンドが幻想的。
11. Fragments
アルバムを締めくくる荘厳なトラックで、長尺の構成と劇的な展開が聴きどころ。最後には静寂が訪れ、アルバム全体のテーマを余韻とともにまとめ上げる。
アルバム総評
『Frightened』は、Voicesが持つ音楽的な実験精神と感情の深みが詰まった傑作である。ポストブラックメタルの形式を拡張し、ジャンルの垣根を超えた多彩な要素を取り入れることで、リスナーに新しい音楽体験を提供している。
特に、暗闇の中に漂う繊細な美しさや、混沌と静寂のバランスが見事であり、Voicesの音楽性がピークに達していると言える。リスナーにとっては、単なるアルバムを超えた音楽的旅路となるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Sunbather by Deafheaven
ポストブラックメタルの名盤で、美しいメロディと激しいサウンドの対比が印象的。
Blackjazz by Shining
エクスペリメンタルメタルの傑作で、アヴァンギャルドな音楽性が『Frightened』と響き合う。
Disintegration by The Cure
ダークで感情的な雰囲気を持つポストパンクの名盤で、陰鬱なテーマが共通している。
Through Silver in Blood by Neurosis
スラッジメタルとポストメタルの要素を融合した作品で、Voicesの重厚なサウンドに共通点がある。
Ghosts of the Shadow Market by Voices
Voicesの他のアルバムで、『Frightened』に通じるダークで劇的なサウンドが楽しめる。
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