発売日: 2008年8月25日
ジャンル: オルタナティブロック、サイケデリックロック、スペースロック
Forthは、1997年の名盤Urban Hymnsを最後に解散していたThe Verveが、11年の時を経てリリースした復活作である。再びリチャード・アシュクロフト、ニック・マコーベ、サイモン・ジョーンズ、ピーター・ソールズベリーが集結し、サイケデリックで広がりのあるサウンドと、バンドらしい深遠な歌詞を届けている。過去作の影響を感じさせつつも、新たな冒険心と成熟した視点がアルバム全体を通じて感じられる。
アルバムは、当時の音楽シーンにおいて際立った存在であり、バンドの音楽的な一貫性と進化を示す重要な作品だ。特に、アシュクロフトの情感豊かなボーカルとマコーベのギターワークが印象的であり、サイケデリックな要素がアルバム全体に織り込まれている。復活作としてバンドの帰還を強く印象付けると同時に、彼らの音楽性の奥深さを再確認させてくれる。
トラック解説
1. Sit and Wonder
アルバムの幕開けを飾る楽曲は、ミニマルなギターリフと浮遊感のあるボーカルが特徴的。サイケデリックな雰囲気が全体を包み込み、「Sit and wonder」というフレーズが、内省的なテーマを引き立てている。リスナーを一瞬でThe Verveの世界へ引き込むトラックだ。
2. Love Is Noise
アルバムのリードシングルであり、The Verveらしいダイナミックなエネルギーを持つ一曲。ループするサンプリングとリズミカルなビートが、これまでの作品とは一線を画する現代的な感覚を与えている。「Love is noise, love is pain」というリフレインが、人間関係の複雑さを象徴する。
3. Rather Be
アコースティックギターを軸にしたメロディックなトラックで、アシュクロフトの温かみのあるボーカルが際立つ。歌詞には自己受容と希望が込められており、「I’d rather be here than anywhere with you」というフレーズが心に残る。
4. Judas
重厚でダークな雰囲気を持つ楽曲。マコーベのギターが楽曲全体を牽引し、アシュクロフトのエモーショナルなボーカルが切迫感を与えている。歌詞は裏切りと赦しをテーマにしており、複雑な感情を深く掘り下げている。
5. Numbness
アンビエント的な要素が色濃いミッドテンポのトラック。リズムセクションが生み出す緊張感が楽曲全体を支配し、浮遊感のあるサウンドが聴き手をトランス状態へと誘う。タイトル通り、感覚が麻痺するような不思議な魅力を持つ一曲だ。
6. I See Houses
静かなイントロから徐々に高揚感を増す構成が特徴。歌詞には希望と内省が込められており、「I see houses in the sky」というフレーズが印象的。アシュクロフトのボーカルが曲のテーマを力強く支えている。
7. Noise Epic
10分近い大作で、タイトル通りノイズやディストーションが楽曲を埋め尽くす。実験的なアプローチが際立つ一曲で、バンドのサイケデリックな側面が存分に発揮されている。楽曲のダイナミックな展開が、リスナーを圧倒する。
8. Valium Skies
穏やかなギターメロディと控えめなアレンジが心地よいバラード。「Lay me down in the valium skies」という歌詞には、安息と救いを求める心情が描かれている。シンプルで感情的な楽曲だ。
9. Columbo
アルバムの中でも特に躍動感のある一曲。力強いリズムセクションとアシュクロフトの情熱的なボーカルが絡み合い、聴き手に高揚感を与える。ライブでも映えそうなダイナミックな仕上がり。
10. Appalachian Springs
アルバムのラストを飾るこの楽曲は、壮大で美しいサウンドスケープを展開する。アシュクロフトの歌詞は自然と精神性を織り交ぜ、聴き手に深い余韻を残す。終盤の盛り上がりはアルバム全体を締めくくるにふさわしい。
アルバム総評
Forthは、The Verveが過去のサウンドを踏襲しつつも、新たな冒険を試みた復活作である。サイケデリックな要素を保ちながら、現代的なエレクトロニックサウンドやアンビエント的な雰囲気を取り入れることで、進化したバンドの姿を見せている。「Love Is Noise」や「Rather Be」のようなキャッチーな楽曲から、「Noise Epic」や「Appalachian Springs」のような実験的な大作まで、幅広い音楽性が楽しめるアルバムだ。バンドの復活を告げる力強い作品でありながら、過去の名作とも遜色ない完成度を誇る一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Richard Ashcroft – Keys to the World
アシュクロフトのソロアルバム。Forthの感情的な深みとメロディを楽しむファンに最適。
Spiritualized – Songs in A&E
サイケデリックなサウンドと内省的なテーマが共通しており、The Verveの復活作と響き合う。
Radiohead – In Rainbows
多彩なサウンドと深い感情表現が、Forthの実験精神と共通する。
Doves – Kingdom of Rust
広がりのあるサウンドスケープと叙情的なメロディが、Forthの雰囲気に似ている。
Oasis – Dig Out Your Soul
2008年にリリースされたOasisのアルバムで、サイケデリックな要素が増した後期のスタイルが、Forthと通じる。
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