発売日: 1983年1月
ジャンル: ハードコアパンク、メロディックパンク
Hüsker Düの初期を代表するスタジオアルバム『Everything Falls Apart』は、バンドの荒削りなハードコアパンクサウンドと、後のメロディックな方向性への萌芽を感じさせる重要な作品である。デビューアルバム『Land Speed Record』の混沌としたスピード感を引き継ぎつつも、より構成力が増し、キャッチーなメロディーが散りばめられている。
このアルバムでは、ギタリスト兼ボーカリストのBob MouldとドラマーのGrant Hartがソングライターとしての才能を発揮し始め、ハードコアパンクのエネルギーと叙情的なメロディーの融合が進んでいる。また、バンドのサウンドはより統制され、荒々しい中にも鋭いフックが感じられる。この作品は、Hüsker DüがDIY精神を持ちながら音楽的に成長していく過程を記録したものとして、バンドのキャリアにおいて重要な位置を占めている。
トラック解説
1. From the Gut
アルバムの幕開けを飾るパワフルなトラック。荒々しいギターリフと激しいリズムが特徴で、Bob Mouldの咆哮がエネルギーを爆発させる。
2. Blah Blah Blah
短くシンプルな楽曲で、怒りと皮肉が詰め込まれている。Grant Hartのリズムセクションが楽曲にダイナミズムを加える。
3. Punch Drunk
激しいテンポの中にも、わずかにメロディアスな要素が感じられる。荒削りなギターが楽曲の勢いを引き立てる。
4. Bricklayer
前作『Land Speed Record』にも収録された楽曲の再録版。短い時間の中に圧倒的なエネルギーが詰まっている。
5. Afraid of Being Wrong
攻撃的なリフが際立つ楽曲。緊張感のある構成が、バンドの初期の特徴をよく表している。
6. Sunshine Superman
Donovanのカバーで、原曲を荒々しいハードコアサウンドに変貌させた大胆なアレンジ。バンドのユーモアと実験精神が感じられる。
7. Signals from Above
ハードコアのスピード感とキャッチーなコーラスが融合した楽曲。Hüsker Düの進化を垣間見ることができる一曲。
8. Everything Falls Apart
アルバムタイトル曲で、荒々しい中にも感情的な深みが感じられる。Bob Mouldのボーカルが楽曲を支配し、バンドのエネルギーを最大限に引き出している。
9. Wheels
ブルージーな要素が盛り込まれた異色の楽曲。シンプルながらもグルーヴ感があり、アルバムに変化を与えている。
10. Target
スピード感とカオスが詰まった短い楽曲。Grant Hartのドラミングが際立ち、ライブ感を強く感じさせる。
11. Obnoxious
タイトル通り、騒がしくエネルギッシュなトラック。荒削りなサウンドが、バンドの初期衝動を象徴している。
12. Gravity
アルバムを締めくくる壮絶な一曲。ノイズとメロディーが交錯し、聴き手を圧倒するエンディングとなっている。
アルバム総評
『Everything Falls Apart』は、Hüsker Düがハードコアパンクからメロディックな方向性への進化を始めた重要なアルバムである。スピード感と攻撃性が詰まった楽曲が大半を占めるが、「Signals from Above」や「Everything Falls Apart」のような楽曲には、後の叙情的で洗練されたスタイルの片鱗が見える。荒削りでありながらも、バンドの音楽的成長と可能性を感じさせる作品として、ファンのみならず、ハードコアパンクの歴史をたどる上でも欠かせない一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Damaged by Black Flag
攻撃的なパンクサウンドとダークなテーマが、『Everything Falls Apart』の荒々しさと共通する。
Milo Goes to College by Descendents
メロディックな要素を取り入れたパンクの名盤で、Hüsker Düの進化の方向性を感じられる。
Zen Arcade by Hüsker Dü
同じバンドによる後の作品で、パンクからポストハードコアへの移行を象徴するアルバム。
Walk Among Us by Misfits
キャッチーなメロディーとパンクのエネルギーが融合したアルバムで、『Everything Falls Apart』のファンにおすすめ。
Fresh Fruit for Rotting Vegetables by Dead Kennedys
社会的なテーマとハードコアパンクの融合が、Hüsker Düの初期作品と共鳴する。
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