
発売日: 1980年11月17日
ジャンル: ロック、ポップ、ニューウェーブ
- 生と死の狭間で――ジョン・レノンの最後のメッセージ
- 全曲レビュー
- 1. (Just Like) Starting Over (John Lennon)
- 2. Kiss Kiss Kiss (Yoko Ono)
- 3. Cleanup Time (John Lennon)
- 4. Give Me Something (Yoko Ono)
- 5. I’m Losing You (John Lennon)
- 6. I’m Moving On (Yoko Ono)
- 7. Beautiful Boy (Darling Boy) (John Lennon)
- 8. Watching the Wheels (John Lennon)
- 9. Yes, I’m Your Angel (Yoko Ono)
- 10. Woman (John Lennon)
- 11. Beautiful Boys (Yoko Ono)
- 12. Dear Yoko (John Lennon)
- 13. Every Man Has a Woman Who Loves Him (Yoko Ono)
- 14. Hard Times Are Over (Yoko Ono)
- 総評
- おすすめアルバム
生と死の狭間で――ジョン・レノンの最後のメッセージ
1980年に発表された『Double Fantasy』は、ジョン・レノンのカムバック・アルバムであり、同時に彼の遺作となった作品だ。1975年に息子ショーンが生まれて以来、レノンは音楽活動から遠ざかり、家庭に専念していた。しかし、1980年になって創作意欲を取り戻し、オノ・ヨーコとの共同名義でリリースされたのが本作である。
アルバムの構成は、ジョンの楽曲とヨーコの楽曲が交互に配置されるという実験的なもの。ジョンの楽曲はシンプルで親しみやすいポップソングが中心で、愛と再生をテーマにしている。一方、ヨーコの楽曲はニューウェーブやポストパンクの影響を受けた前衛的なスタイルが特徴的であり、二人の対照的な音楽性が際立っている。
本作がリリースされた直後、ジョン・レノンは1980年12月8日に凶弾に倒れ、急逝。そのため、本作は彼の遺作として歴史に刻まれた。しかし、その悲劇とは裏腹に、アルバムは家庭の幸福や愛に満ちた内容となっており、ジョン・レノンの最期のメッセージとしての意義を持つ作品となっている。
全曲レビュー
1. (Just Like) Starting Over (John Lennon)
ジョン・レノンの復帰を象徴する楽曲で、エルヴィス・プレスリー風のボーカルと50年代ロックンロールを思わせるサウンドが特徴的。新たな人生の始まりを祝うような歌詞が印象的。
2. Kiss Kiss Kiss (Yoko Ono)
ヨーコの楽曲は一転して前衛的なニューウェーブサウンド。高速なビートとエレクトロニックなアレンジが特徴で、終盤の官能的な息遣いも話題を呼んだ。
3. Cleanup Time (John Lennon)
ファンキーなリズムと軽快なメロディが魅力的な一曲。ジョンが家庭生活の充実を歌っており、彼の穏やかな心境が感じられる。
4. Give Me Something (Yoko Ono)
短いながらも攻撃的なロックナンバー。パンキッシュな要素が強く、彼女の音楽性の多様さがうかがえる。
5. I’m Losing You (John Lennon)
ブルージーなギターと哀愁漂うメロディが特徴の楽曲。オノ・ヨーコとの関係に対する不安や寂しさを歌った一曲。
6. I’m Moving On (Yoko Ono)
「I’m Losing You」と対になる楽曲で、ヨーコの視点から別れの予感を歌う。リズムセクションが際立つアレンジ。
7. Beautiful Boy (Darling Boy) (John Lennon)
息子ショーンへの愛を綴った感動的なバラード。「人生は君が夢を描いている間に過ぎていくんだ」という歌詞が、ジョン・レノンの遺言のように響く。
8. Watching the Wheels (John Lennon)
レノンが「ショービジネスの世界から退き、家庭に専念していた自分の生き方」について歌った曲。穏やかなメロディと哲学的な歌詞が印象的。
9. Yes, I’m Your Angel (Yoko Ono)
ラグタイム風のジャズナンバーで、ヨーコのユーモラスな一面が表れている。軽快なメロディが特徴的。
10. Woman (John Lennon)
ジョンがオノ・ヨーコをはじめ、すべての女性に向けて捧げたラブソング。ビートルズ時代の「Girl」を彷彿とさせる美しいメロディが印象的。
11. Beautiful Boys (Yoko Ono)
ショーンとジョンへのメッセージを込めた楽曲。シンプルながらも奥深い歌詞が特徴。
12. Dear Yoko (John Lennon)
カントリー調のシンプルなラブソング。ジョンがヨーコへの愛をストレートに表現している。
13. Every Man Has a Woman Who Loves Him (Yoko Ono)
電子音が特徴的なニューウェーブ的な楽曲。後にジョンがボーカルを加えたバージョンも発表された。
14. Hard Times Are Over (Yoko Ono)
アルバムの最後を飾る楽曲。未来への希望を歌ったポジティブなメッセージが込められている。
総評
『Double Fantasy』は、ジョン・レノンの最後の作品でありながら、過去の怒りや政治的メッセージではなく、愛、家庭、人生の充実をテーマにした幸福感あふれる作品となっている。彼のキャリアの中でも最も穏やかで成熟したアルバムの一つであり、パートナーであるオノ・ヨーコとの関係を大切にする姿勢が強く反映されている。
リリース当初は、ヨーコの楽曲と交互に配置された構成に戸惑うリスナーも多かったが、後に彼女の楽曲がニューウェーブやパンクの先駆け的な存在として評価されるようになった。特に「(Just Like) Starting Over」「Woman」「Watching the Wheels」「Beautiful Boy」などの楽曲は、ジョン・レノンの代表作として広く知られるようになった。
しかし、このアルバムが発表されたわずか3週間後、ジョン・レノンは1980年12月8日に凶弾に倒れ、帰らぬ人となる。そのため、本作は彼の最後のメッセージとして、より深い意味を持つ作品となった。
おすすめアルバム
- John Lennon – Milk and Honey (1984)
- 『Double Fantasy』の続編として構想されていた楽曲を集めたアルバム。未完の作品ながら、ジョンの最晩年の姿が記録されている。
- Paul McCartney – Tug of War (1982)
- ジョン・レノンの死後にリリースされたポール・マッカートニーの作品で、彼への追悼曲「Here Today」が収録されている。
- David Bowie – Scary Monsters (And Super Creeps) (1980)
- 1980年にリリースされた、ジョンと親交の深かったボウイのアルバム。
- Fleetwood Mac – Tusk (1979)
- 男女の関係をテーマにしたアルバムで、『Double Fantasy』の構成と共鳴する部分がある。
- Elvis Costello – Imperial Bedroom (1982)
- 80年代初頭のポップとロックの融合を試みた名盤で、ジョンの遺志を継ぐような作品。
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- 80年代初頭のポップとロックの融合を試みた名盤で、ジョンの遺志を継ぐような作品。
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