アルバムレビュー：Diana Ross by Diana Ross

発売日: 1970年6月19日
ジャンル: ソウル、R&B

Diana Rossは、スプリームスのリードシンガーとして世界的に成功を収めたダイアナ・ロスのソロデビューアルバムであり、彼女のキャリアにとって大きな節目となった作品だ。モータウンの代表的なソングライター、アシュフォード＆シンプソンがプロデュースを担当し、ダイアナ・ロスの洗練されたボーカルスタイルをより洗練されたサウンドに乗せて表現している。このアルバムには、彼女のキャリアを象徴するヒット曲「Ain’t No Mountain High Enough」が収録されており、ソウルフルで感情豊かなパフォーマンスがアルバム全体にわたって展開されている。

各曲ごとの解説:

1. Reach Out and Touch (Somebody’s Hand)
   　アルバムのオープニングを飾るこの曲は、ダイアナ・ロスのキャリアにおいて初のソロシングルでもある。穏やかなメロディと力強いメッセージが融合しており、シンプルながらも感動的な楽曲。ロスの優しいボーカルが、希望と連帯感を表現している。
2. Now That There’s You
   　ミディアムテンポのソウルナンバーで、恋愛の幸せを歌うロマンティックな楽曲。ストリングスとホーンセクションの華やかなアレンジが、ロスのボーカルを包み込み、豊かな音楽体験を提供している。
3. You’re All I Need to Get By
   　アシュフォード＆シンプソンによるマーヴィン・ゲイとタミー・テレルの名曲をカバー。ロスの繊細かつ力強いボーカルが、オリジナルとは異なる味わいを加えており、彼女の表現力の幅広さを感じさせる一曲だ。
4. These Things Will Keep Me Loving You
   　軽快でアップテンポな楽曲で、愛をテーマにしたポジティブな歌詞が特徴的。キャッチーなメロディとリズミカルなバックトラックが、明るく爽やかな印象を与える。
5. Ain’t No Mountain High Enough
   　このアルバムの最大のヒット曲で、ダイアナ・ロスのソロキャリアを確固たるものにした楽曲。壮大なオーケストラアレンジと、ロスのエモーショナルなボーカルが融合し、感動的なクライマックスを生み出している。緩やかなイントロから徐々に高まるダイナミズムが聴きどころで、彼女の代表曲として今なお愛され続けている。
6. Something on My Mind
   　スムーズでソウルフルなメロディが印象的な一曲。ロマンティックな歌詞とともに、ロスのボーカルが穏やかな中に情感を込めて歌い上げており、彼女の多彩な歌唱力が光る。
7. I Wouldn’t Change the Man He Is
   　強い愛情と献身をテーマにしたバラード。ロスのしっとりとしたボーカルが、静かに情熱を表現しており、愛の力を感じさせる一曲となっている。
8. Keep an Eye
   　ミディアムテンポの楽曲で、浮気や裏切りに対する警戒心を描いた歌詞が特徴的。少しシリアスなトーンを持ちながらも、ソウルフルなメロディが心地よい。
9. Where There Was Darkness
   　希望と愛の再生をテーマにした曲で、メロディの上昇感と共に前向きなエネルギーが感じられる。ロスの伸びやかなボーカルが、楽曲に明るさと希望をもたらしている。
10. Can’t It Wait Until Tomorrow
    　別れの切なさを歌ったバラードで、ロスの感情豊かなボーカルが際立つ。静かでメランコリックなアレンジが、楽曲に深い余韻を与えている。
11. Dark Side of the World
    　よりソウルフルで力強い楽曲。人生の困難や悲しみを乗り越えるメッセージが込められており、ロスの強さと感情の深さを感じさせるクライマックスとなっている。

アルバム総評:

Diana Rossは、ダイアナ・ロスがソロアーティストとして新たなスタートを切るにふさわしい、力強く感情的な作品である。彼女のボーカルの豊かな表現力と、アシュフォード＆シンプソンのプロデュースによる洗練されたアレンジが完璧にマッチしている。特に「Ain’t No Mountain High Enough」は、ダイアナ・ロスのキャリアを象徴する一曲として、アルバム全体のハイライトであり、ソウルミュージックの歴史における重要な楽曲となった。彼女の歌唱力と、感情の深さが見事に表現されたこのアルバムは、モータウンサウンドの名作の一つとして評価され続けている。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

1. Lady Sings the Blues by Diana Ross
   ダイアナ・ロスがビリー・ホリデイを演じた映画のサウンドトラックで、彼女のジャズボーカリストとしての才能を発揮している作品。ロスの多面的な魅力を堪能できる一枚。
2. Let’s Get It On by Marvin Gaye
   ソウルミュージックの名盤で、マーヴィン・ゲイの官能的なボーカルが堪能できる。ダイアナ・ロスのエモーショナルな表現に共鳴するリスナーにおすすめ。
3. The Supremes A’ Go-Go by The Supremes
   ダイアナ・ロスが在籍していたザ・スプリームスの代表作。ロスのボーカルが光るヒット曲が詰まっており、彼女のソロキャリアに繋がるスタイルが感じられる。
4. Hot Buttered Soul by Isaac Hayes
   ストリングスやオーケストラを大胆に取り入れたソウルの名盤。オーケストラアレンジを用いた「Ain’t No Mountain High Enough」と共通するスケール感を楽しめる。
5. Ashford & Simpson by Send It
   このアルバムのプロデューサーであるアシュフォード＆シンプソンのアルバムで、ソウルフルなサウンドと美しいハーモニーが特徴。彼らの作曲センスが存分に発揮された一枚。