アルバムレビュー：Deliverance by Opeth

アルバムレビュー

2025.03.09

発売日: 2002年11月12日
ジャンル: プログレッシブ・デスメタル

Opeth史上最もヘヴィなアルバム——激情と静寂の交錯
全曲レビュー
総評
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Opeth史上最もヘヴィなアルバム——激情と静寂の交錯

スウェーデンのプログレッシブ・デスメタルバンドOpethが2002年にリリースした6作目のアルバムDeliveranceは、彼らのキャリアの中でも最も攻撃的でヘヴィな作品とされる。前作Blackwater Park（2001年）で確立された音楽性をさらに発展させ、デスメタルの暴力性を強調しながらも、プログレッシブな展開を内包する壮大な楽曲が並ぶ。

本作は、翌年にリリースされるアコースティック主体のDamnation（2003年）と対をなす作品として制作された。当初は二枚組アルバムとして発表される予定だったが、最終的に二作に分かれてリリースされることとなった。そのため、DeliveranceはOpethの持つ最もヘヴィな側面を、Damnationは最も静謐な側面を際立たせる形になっている。

プロデュースには、Opethの作品に深く関わるスティーヴン・ウィルソン（Porcupine Tree）を迎え、繊細な音作りとプログレッシブなアレンジが施されている。ミカエル・オーカーフェルトによるデスヴォイスは凶暴性を増し、リフの緻密さやドラミングの強靭さが際立つアルバムとなっている。

全曲レビュー

1. Wreath

アルバムの幕開けを飾る11分超の壮絶な楽曲。冒頭から畳みかけるようなブラストビートとヘヴィなリフが炸裂し、Opeth史上でも最も激しい楽曲のひとつとなっている。静かなパートとの対比が絶妙で、歌詞は苦悩と救済を求める内省的な内容となっている。

2. Deliverance

アルバムのタイトル曲であり、最も印象的な楽曲のひとつ。変拍子を駆使したリズムセクション、緻密なギターリフ、圧倒的なヴォーカルが絡み合い、10分を超える壮大な構成が展開される。ラストのリフの反復が執拗に続くエンディングは、まるで儀式のようなカタルシスを生み出している。

3. A Fair Judgement

アルバムの中で最も静かな楽曲であり、Damnationの作風を先取りするようなメランコリックなピアノとクリーンヴォーカルが印象的。美しくも絶望的な雰囲気を持ち、アルバムの中における緩急のバランスを生み出している。

4. For Absent Friends

2分弱の短いインストゥルメンタル。アコースティックギターによる繊細な旋律が心地よく、激しさの中に一瞬の静寂を挟む役割を果たしている。

5. Master’s Apprentices

再びヘヴィな楽曲へと回帰し、デスヴォイスとブルータルなリフが炸裂する。中盤のクリーンパートでは、幻想的なメロディが挿入され、Opeth特有の静と動のダイナミズムが際立つ。歌詞は信仰と洗脳に関するテーマを描いており、宗教的なモチーフが垣間見える。

6. By the Pain I See in Others

アルバムを締めくくる複雑な構成を持つ楽曲。複数のセクションが緻密に組み合わさり、プログレッシブな展開が続く。エフェクトのかかったヴォーカルや不穏なコード進行が、アルバムのラストに相応しい混沌とした雰囲気を醸し出している。

総評

Deliveranceは、Opethの持つデスメタルとしての側面を最大限に強調したアルバムであり、同時にプログレッシブな要素を緻密に織り交ぜた作品となっている。
楽曲の構成は壮大で、10分を超える楽曲が連続するため、一聴するだけでは全てを把握しきれないほどの情報量を持つ。しかし、繰り返し聴くことでその細部に隠された芸術的な美しさが明らかになってくる。

本作のヘヴィな側面と、次作Damnationの静謐な側面を対比させることで、Opethの音楽性の幅広さが証明された。本作の成功は、後のGhost ReveriesやWatershedへと繋がる音楽的進化の礎となった。

デスメタルの攻撃性とプログレの知的な構成美を兼ね備えた本作は、Opethの中でも屈指のヘヴィネスを誇る作品であり、彼らのキャリアの中でも特別な位置を占める一枚である。