
発売日: 1981年10月16日
ジャンル: シンセポップ、ニューウェーブ
シンセポップの金字塔、エレクトロポップの新時代を切り開いた傑作
The Human Leagueの3rdアルバムDareは、1981年のニューウェーブ・シーンを代表する名盤であり、シンセポップの歴史を語る上で欠かせない作品だ。本作はバンドの再編後に制作され、ポップで洗練されたエレクトロサウンドとキャッチーなメロディを融合させたことにより、彼らを一躍世界的なスターへと押し上げた。
前作Travelogue(1980年)を最後にイアン・クレイグ・マーシュとマーティン・ウェアが脱退し、彼らはHeaven 17を結成。一方、残されたフィル・オーキーは新メンバーとしてジョアン・キャサリーとスーザン・アン・サリーを迎え、バンドはよりポップな方向へと進化した。本作では、シンセサイザーとリズムマシンのみを駆使し、未来的で洗練された音楽を作り上げた。
シングルカットされた「Don’t You Want Me」は全世界で大ヒットを記録し、エレクトロポップがメインストリームの音楽として受け入れられるきっかけとなった。
全曲レビュー
- The Things That Dreams Are Made Of
- アルバムの幕開けを飾るダンサブルなトラック。「ニューヨークに行く」「日本の車に乗る」といったフレーズが散りばめられ、80年代の消費社会への憧れを描いた楽曲。
- Open Your Heart
- 哀愁を帯びたメロディとシンセサウンドが美しいバラード調の楽曲。恋愛と希望をテーマにした歌詞が、フィル・オーキーのエモーショナルなボーカルとマッチしている。
- The Sound of the Crowd
- 先行シングルとしてリリースされ、バンドの新しいサウンドを提示した楽曲。ミニマルなシンセベースとロボットのようなコーラスが印象的。
- Darkness
- 前作Travelogueの影響を色濃く残す、ややダークな楽曲。エレクトロニックなビートと不穏なシンセが絡み合う。
- Do or Die
- エネルギッシュでリズミカルなナンバー。ニューウェーブらしいキャッチーなメロディと、クールなエレクトロサウンドが融合している。
- Get Carter
- 映画『ゲット・カーター』のテーマをモチーフにした短いインストゥルメンタル。アルバムの中でも異色のアンビエント風のトラック。
- I Am the Law
- ディストピア的な雰囲気を持つ楽曲。機械的なビートとモノトーンなボーカルが印象的で、SF的な世界観が広がる。
- Seconds
- ジョン・F・ケネディ暗殺事件をテーマにした楽曲。緊迫感のあるシンセとミステリアスなコーラスが、ドラマティックな雰囲気を作り出している。
- Love Action (I Believe in Love)
- キャッチーでポップなシングル曲。フィル・オーキーの低音ボーカルと女性メンバーのハーモニーが絶妙なバランスを生み出している。
- Don’t You Want Me
- バンド史上最大のヒット曲。ドラマティックなシンセリフとコール&レスポンスのボーカルが特徴的で、エレクトロポップの名曲として語り継がれる。歌詞はスターとなった女性とプロデューサーの別れを描いており、ポップなメロディと対照的な内容が魅力。
総評
Dareは、エレクトロポップの完成形とも言える作品であり、シンセサイザーを主軸としたポップミュージックの可能性を広げたアルバムだ。本作の成功により、シンセポップは80年代のメインストリーム音楽として確立され、後のDepeche ModeやPet Shop Boysといったバンドにも大きな影響を与えた。
また、バンドのサウンドが大きく変化したアルバムでもあり、ポストパンク的な実験性を持っていた初期のThe Human Leagueと比較すると、より洗練されたポップな方向へと進化している。特に「Don’t You Want Me」の成功は、エレクトロニック・ミュージックが一般大衆に受け入れられるきっかけとなった。
ポップでありながら、クールで機械的なサウンドが際立つ本作は、シンセポップの入門盤としても最適であり、80年代のエレクトロポップを代表するアルバムとして、今なお高く評価されている。
おすすめアルバム
- Depeche Mode – Speak & Spell (1981)
- 同時期に登場したシンセポップの名作。The Human Leagueの影響を受けた初期のDepeche Modeのサウンドが楽しめる。
- Orchestral Manoeuvres in the Dark – Architecture & Morality (1981)
- 同じくシンセポップのクラシック。よりエモーショナルなメロディと洗練されたシンセワークが特徴的。
- Soft Cell – Non-Stop Erotic Cabaret (1981)
- 「Tainted Love」などのヒット曲を収録し、シンセポップの持つ耽美的な魅力を最大限に引き出したアルバム。
- Pet Shop Boys – Please (1986)
- Dare以降のシンセポップの進化を示す作品。クールなビートとメロディアスな楽曲が融合したアルバム。
- New Order – Power, Corruption & Lies (1983)
- ポストパンクからエレクトロニックへの移行を遂げたNew Orderの代表作。ダンスミュージックとシンセポップの融合が楽しめる。
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- ポストパンクからエレクトロニックへの移行を遂げたNew Orderの代表作。ダンスミュージックとシンセポップの融合が楽しめる。
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