発売日: 1968年8月12日
ジャンル: サイケデリック・ロック、ブルースロック
サンフランシスコ・サイケデリアの爆発—Janis Joplinのカリスマ性が炸裂した伝説的アルバム
1968年にリリースされたCheap Thrillsは、Big Brother and the Holding Companyにとって2作目であり、Janis Joplinをロック史に名を刻む存在へと押し上げた伝説的なアルバムである。60年代のカウンターカルチャーとともに生まれた本作は、サイケデリック・ロックとブルースロックの融合を極限まで高め、Joplinの魂を震わせるヴォーカルが炸裂する名盤として語り継がれている。
アルバムのほとんどはライブ録音のように聞こえるが、実際にはほぼスタジオ録音であり、観客の歓声は後から加えられたもの。これにより、当時の熱狂的な雰囲気を再現しつつも、サウンドの完成度を高めている。
Billboard 200で1位を獲得し、Janis Joplinのカリスマ性を決定づけた本作は、60年代のサイケデリックロックを象徴するアルバムの一つであり、ブルースとロックの融合における金字塔として今も評価され続けている。
全曲レビュー
1. Combination of the Two
アルバムの幕開けを飾る、爆発的なエネルギーを持つサイケデリックロックナンバー。ギタリストのSam AndrewとJoplinの掛け合いが特徴で、ビートのグルーヴ感と混沌としたギターリフが、60年代サイケデリアのエッセンスを凝縮している。
2. I Need a Man to Love
Joplinのヴォーカルが全面に出たブルースロックナンバー。恋愛の欲求と痛みをストレートに歌い上げるJoplinのソウルフルな歌唱が圧巻で、エモーショナルなギターソロも印象的。
3. Summertime
George Gershwin作曲のジャズ・スタンダードを、Big Brother流のブルースロックアレンジでカバー。Joplinの狂おしいほどの感情表現と、スローテンポのブルージーなアレンジが絶妙にマッチしており、アルバムの中でも特にドラマティックな楽曲。
4. Piece of My Heart
本作の最大のハイライトであり、Janis Joplinの代表曲の一つ。Erma Franklin（Aretha Franklinの姉）のオリジナルをカバーし、Joplinの魂を削るようなシャウトが曲に新たな命を吹き込んだ。この楽曲の爆発力とエネルギーは、60年代ロックを象徴するパフォーマンスの一つとされている。
5. Turtle Blues
Joplinのルーツである純粋なブルースを前面に押し出した楽曲。ピアノとアコースティックギターを中心にしたシンプルな構成の中で、Joplinは自分自身をさらけ出し、痛みと誇りを交えたブルースを歌い上げる。
6. Oh, Sweet Mary
バンドのギタリストSam Andrewがメインボーカルを務めるトラック。ギターの歪みとオルガンの音色が絡み合い、サイケデリックな雰囲気を強調。Joplinの曲とは違った趣があり、アルバムにダイナミクスを与えている。
7. Ball and Chain
Big Mama Thorntonのブルース・ナンバーをJoplin流にカバーし、アルバムのクライマックスを飾る感動的な楽曲。スローなリズムと重厚なギターの上で、Joplinが魂の叫びを炸裂させ、観客の心をつかんで離さない。Joplinのボーカルパフォーマンスの中でも最高峰とされる名演。
総評
Cheap Thrillsは、サイケデリック・ロックとブルースの融合を極め、Janis Joplinという存在を不動のものにした歴史的名盤である。アルバム全体を通して、自由奔放なエネルギーと、生々しい感情表現が炸裂し、ロックの持つパワーとリアルさを最大限に引き出している。
Big Brother and the Holding Companyの演奏は荒々しく、時に粗削りであるが、そのラフさが逆に当時のシーンのリアルな空気を映し出している。特に「Piece of My Heart」や「Ball and Chain」におけるJoplinのヴォーカルは、ロック史における伝説的なパフォーマンスとして今も語り継がれている。
このアルバムの成功を受け、Joplinはバンドを脱退し、ソロキャリアへと進むことになるが、本作は彼女の最も生々しいロックシンガーとしての姿を記録した作品として、後のキャリアにも大きな影響を与えた。
60年代のロックシーンを知る上で欠かせない1枚であり、ブルースロックやサイケデリック・ロックの金字塔として、今もなおリスナーを魅了し続けている。
おすすめアルバム
- Janis Joplin – Pearl (1971)
- Joplinのソロアルバムであり、彼女の集大成とも言える作品。「Me and Bobby McGee」「Mercedes Benz」などの代表曲を収録。
- Jefferson Airplane – Surrealistic Pillow (1967)
- 60年代サイケデリック・ロックの名盤。Big Brother and the Holding Companyと同時期のサンフランシスコ・シーンを象徴する作品。
- The Doors – The Doors (1967)
- サイケデリック・ロックとブルースの融合を試みたアルバム。Joplinのパワフルなボーカルとは対照的に、Jim Morrisonのミステリアスな歌声が特徴的。
- Cream – Disraeli Gears (1967)
- ブルースロックとサイケデリック・ロックを融合させた名盤。Joplinのブルース的アプローチと共通点が多い。
- Big Mama Thornton – Ball and Chain (1968)
- Janis Joplinが影響を受けたブルースシンガーBig Mama Thorntonの作品。「Ball and Chain」のオリジナルバージョンを収録。
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- Janis Joplinが影響を受けたブルースシンガーBig Mama Thorntonの作品。「Ball and Chain」のオリジナルバージョンを収録。
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