アルバムレビュー：Candy Apple Grey by Hüsker Dü

アルバムレビュー

2024.12.05

発売日: 1986年3月17日
ジャンル: オルタナティヴロック、ポストハードコア

Hüsker Düの6枚目のアルバム『Candy Apple Grey』は、メジャーレーベル（Warner Bros. Records）からリリースされた最初の作品であり、バンドが音楽的にさらなる進化を遂げた重要なアルバムである。本作では、ハードコアパンクのエネルギーを保ちながら、よりメロディックで叙情的な要素が強調されている。Bob MouldとGrant Hartがそれぞれのソングライターとしての個性を発揮し、キャッチーな楽曲と内省的なバラードがバランスよく配置されている。

また、ピアノやアコースティックギターを大胆に取り入れるなど、音楽的な幅が広がっており、バンドがより成熟した方向性に向かっていることが明確に示されている。この作品は、Hüsker Düがハードコアパンクの枠を超えて、オルタナティヴロックの基礎を築いたアルバムとして高く評価されている。

トラック解説

1. Crystal
アルバムの幕開けを飾る攻撃的なトラックで、激しいギターリフとエネルギッシュな演奏が特徴的。Bob Mouldのシャウトするようなボーカルが、バンドのパンク精神を体現している。

2. Don’t Want to Know If You Are Lonely
Grant Hart作の楽曲で、アルバムを代表するキャッチーなナンバー。失恋をテーマにした歌詞とエモーショナルなメロディーが絶妙に融合している。

3. I Don’t Know for Sure
アップテンポで疾走感のあるトラック。シンプルな構成ながら、リフの力強さとメロディーが耳に残る。

4. Sorry Somehow
Grant Hartの感情的な歌詞が際立つ楽曲。オルタナティヴロックとしての完成度が高く、ドラマチックな展開が印象的。

5. Too Far Down
Bob Mouldがアコースティックギターを主体にした内省的なバラード。感情の深みが感じられる美しい一曲で、アルバムの中で際立つ存在感を放つ。

6. Hardly Getting Over It
6分を超える叙情的な楽曲で、アコースティックギターとピアノが織りなす静謐なサウンドが特徴。死や人生についての深いテーマを描いており、Bob Mouldのソングライティングの才能が光る。

7. Dead Set on Destruction
軽快なリズムと明るいメロディーが特徴の楽曲。Grant Hartの歌詞には皮肉と悲哀が込められている。

8. Eiffel Tower High
ノイズの要素が強調されたアップテンポな楽曲。エネルギッシュなギターリフが印象的で、バンドのライブ感が伝わる。

9. No Promise Have I Made
Grant Hartによるピアノバラード。感情を剥き出しにしたようなボーカルが心に響く、美しい楽曲である。

10. All This I’ve Done for You
アルバムを締めくくるBob Mouldの楽曲。激しさとメロディアスさが絶妙に融合しており、Hüsker Düらしいフィナーレを演出している。

アルバム総評

『Candy Apple Grey』は、Hüsker Düが持つハードコアパンクの攻撃性と、メロディックな音楽性の融合をさらに深めた作品であり、バンドの幅広い音楽的アプローチを示している。特に「Don’t Want to Know If You Are Lonely」や「Sorry Somehow」といった楽曲は、キャッチーでありながら感情的な深みを持ち、バンドの成熟を感じさせる。一方で、「Too Far Down」や「Hardly Getting Over It」のような内省的な楽曲は、従来のパンクサウンドからの大きな進化を示している。このアルバムは、Hüsker Düがオルタナティヴロックの先駆者としての地位を確立した重要な作品として評価されている。