発売日: 2010年5月18日
ジャンル: ブルースロック、ガレージロック、ソウル
The Black Keysの6作目となる「Brothers」は、バンドの音楽的進化を象徴するアルバムであり、彼らのキャリアを決定づけた重要な作品だ。これまでのブルースロックの荒々しいスタイルを基盤にしつつ、ソウルやファンク、R&Bといった新しい要素を取り入れ、音楽性の幅を大きく広げた。このアルバムは、AuerbachとCarneyの2人だけで演奏されるシンプルな編成ながら、プロデューサーにDanger Mouseを迎えた「Tighten Up」を含む楽曲で、洗練されたサウンドを実現している。
録音は、アラバマ州の歴史的な「Muscle Shoals Sound Studio」で行われ、ヴィンテージ感のあるサウンドがアルバム全体に漂っている。商業的にも成功を収め、グラミー賞で「最優秀オルタナティブ・アルバム」を受賞したほか、バンドを世界的な人気へと押し上げた本作は、ブルースロックの新しい可能性を示した傑作である。
トラック解説
- Everlasting Light
ファルセットボーカルと重厚なギターリフが特徴的な、アルバムの幕開けにふさわしいトラック。ミニマルなリズムとシンプルな構成ながら、エネルギッシュなグルーヴが印象的だ。 - Next Girl
歪んだギターと力強いビートが絡み合う、典型的なブルースロックナンバー。歌詞は過去の恋愛への皮肉を歌い、Auerbachの感情的なボーカルが楽曲に深みを与えている。 - Tighten Up
Danger Mouseがプロデュースを担当したリードシングルで、キャッチーなメロディとファンキーなリズムが特徴。グラミー賞を受賞したこの楽曲は、The Black Keysの新しい方向性を示す重要な一曲だ。 - Howlin’ for You
シンプルでリズミカルなドラムビートが楽曲を牽引する、ポップなブルースロックの代表作。観客を巻き込むようなコーラスが印象的で、ライブでの人気曲でもある。 - She’s Long Gone
退廃的なムードとエレクトリックギターのリフが際立つ一曲。歌詞には失恋の苦味が込められており、Auerbachのボーカルがその感情を見事に表現している。 - Black Mud
インストゥルメンタルトラックで、泥臭いブルースの雰囲気が漂う。ギターとドラムだけで作られるシンプルなサウンドスケープが、アルバムの中でも際立っている。 - The Only One
ソウルフルなボーカルと滑らかなメロディが特徴の楽曲。シンセサウンドが控えめに使われ、バンドの新しいサウンドの方向性を感じさせる一曲だ。 - Too Afraid to Love You
ハープシコードを使った独特なサウンドが楽曲の雰囲気を深めている。失恋をテーマにした歌詞と、憂いを帯びたメロディが美しく調和している。 - Ten Cent Pistol
ダークでシネマティックな雰囲気が漂う一曲。物語性のある歌詞とミステリアスなサウンドが、リスナーを物語の中へ引き込む。 - Sinister Kid
アップテンポでノリの良いトラック。キャッチーなリフと攻撃的なボーカルが絡み合い、アルバムのエネルギーを高めている。 - The Go Getter
グルーヴィーなビートと重厚なベースラインが際立つ。歌詞は欲望や野心について歌われており、バンドのダークな側面を表現している。 - I’m Not the One
スローテンポで、メロウな雰囲気を持つ楽曲。Auerbachの控えめなボーカルが、楽曲の内省的なトーンを引き立てている。 - Unknown Brother
個人的な喪失をテーマにした感情的な楽曲。暖かくも切ないメロディと歌詞が、アルバム全体の中でも特に印象的だ。 - Never Gonna Give You Up
Jerry Butlerの楽曲をカバーしたソウルフルな一曲。オリジナルの暖かさを残しつつ、The Black Keysらしいシンプルなアレンジで新しい魅力を引き出している。 - These Days
アルバムを締めくくる、落ち着いたトラック。別れや再生をテーマにした歌詞が、静かな余韻を残しながらアルバムを締める。
アルバム総評
「Brothers」は、The Black KeysがブルースロックからソウルやR&Bといった要素を取り入れ、音楽的な幅を大きく広げた作品である。Muscle Shoalsで録音されたヴィンテージ感のある音質や、Auerbachの感情的なボーカルとCarneyの力強いドラムが、アルバム全体に一貫した魅力をもたらしている。
「Tighten Up」や「Howlin’ for You」といったシングル曲だけでなく、アルバム全体がドラマチックで感情的な旅となっており、バンドの進化を感じさせる傑作だ。商業的成功と批評的評価の両方を勝ち取ったこのアルバムは、The Black Keysのキャリアの中で、そして現代のブルースロックシーンにおいても、最重要作品のひとつとして輝き続けている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
El Camino by The Black Keys
「Brothers」の次作で、よりポップでダイナミックなサウンドが楽しめる。
Thickfreakness by The Black Keys
初期の荒々しいブルースロックサウンドが詰まった2作目。
Elephant by The White Stripes
ブルースロックとガレージロックを融合した名盤で、「Brothers」と同様にエネルギーに満ちた作品。
Attack & Release by The Black Keys
Danger Mouseとの初のコラボ作品で、ソウルやサイケデリックの要素を感じられる。
Born Under a Bad Sign by Albert King
The Black Keysのルーツであるブルースの名盤で、彼らの音楽的背景を深く理解できる。
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