発売日: 2018年10月12日
ジャンル: インディーロック、フォークロック、サイケデリックロック
カート・ヴァイルの7枚目のアルバムBottle It Inは、長尺のトラックと内省的な歌詞が特徴的で、彼の音楽的な成熟が詰まった作品である。本作では、以前のリリースで見せたローファイでリラックスした雰囲気を継承しつつも、ギターリフの複雑さや多様なサウンドエフェクトによって、深いサイケデリックな世界が広がっている。アルバムの全体に漂う自由なムードとアンビエントなサウンドは、まるで無限に続く道をのんびりとドライブしているかのようで、ヴァイルの音楽に対する飾らないアプローチとリスナーを引き込む力が感じられる。
プロデューサーにはショーン・エヴェレットやロブ・シュナップスといった多様な顔ぶれが揃い、彼らとのコラボレーションによってアルバムには一貫したリラックスしたムードが漂う。「Bassackwards」や「Bottle It In」など、アルバムのハイライトとなる楽曲は、10分を超える長尺でありながら、聴く者を飽きさせることなく彼の音楽世界へと没入させる。Bottle It Inは、カート・ヴァイルの音楽の奥深さと、彼が作り上げる独特な空気感が詰まった作品である。
トラックごとの解説
1. Loading Zones
アルバムの幕開けを飾るアップテンポなトラックで、日常生活の中での自分の居場所について歌っている。カラッとしたギターリフとシンプルなビートが心地よく、ヴァイルのウィットに富んだ歌詞が印象的。
2. Hysteria
ミディアムテンポの楽曲で、繊細なギターのアルペジオが美しい。ヴァイルの優しく包み込むようなボーカルが、淡いメランコリーを漂わせる。
3. Yeah Bones
軽快なビートとリズミカルなギターが特徴の一曲で、シンプルなアレンジが彼のボーカルとリズムを引き立てる。のんびりとした雰囲気が心地よい。
4. Bassackwards
アルバムのハイライトの一つで、10分を超える長尺のサイケデリックな楽曲。リバースエフェクトを活用したギターが幻想的で、ゆったりとしたリズムがトランス状態を誘う。自己探求や人生の矛盾がテーマ。
5. One Trick Ponies
アルバム中でも特にキャッチーで親しみやすいトラックで、歌詞には仲間への思いが込められている。リズミカルなギターと軽快なメロディが、ポジティブなエネルギーを感じさせる。
6. Rollin With The Flow
チャーリー・リッチのカバーで、オリジナルをカート・ヴァイルらしいミッドテンポで味わい深いものに仕上げている。温かみのあるサウンドがアルバムに変化をもたらしている。
7. Check Baby
ブルージーでリズム感のある楽曲で、軽快なギターワークが際立つ。ヴァイルの遊び心が詰まった一曲で、ライブでも盛り上がりそうなテンポ感が楽しい。
8. Bottle It In
10分以上の長尺トラックで、サイケデリックなムードが漂う瞑想的な楽曲。ミニマルなギターパターンと内省的な歌詞が、じわじわとリスナーを引き込む。彼の孤独と不安がテーマ。
9. Mutinies
控えめなメロディと繊細なギターが美しいバラードで、ヴァイルのボーカルが優しく響く。柔らかいサウンドが、彼の繊細な一面を引き立てている。
10. Come Again
短いながらもキャッチーで、リズム感のある曲。サイケデリックな要素を含みつつも、シンプルな構成が耳に残る。
11. Cold Was The Wind
ブルージーなギターが特徴のダークな曲調のトラックで、荒涼としたムードが漂う。物寂しさがテーマで、ヴァイルのシリアスな一面が表れている。
12. Skinny Mini
繊細なギターとメランコリックな雰囲気が漂うトラックで、彼のソフトなボーカルが曲の持つ優しいムードにマッチしている。
13. (Bottle Back)
エンディングにふさわしい静かなインストゥルメンタルで、彼の音楽の余韻を感じさせる締めくくり。アルバム全体を振り返るような落ち着きのあるトラックで、感動的な終わりを迎える。
アルバム総評
Bottle It Inは、カート・ヴァイルが自身の音楽的なルーツと新たなアプローチを融合させ、時間をかけてじっくりとリスナーを引き込む作品である。長尺のトラックや瞑想的なサウンドが特徴的で、どこかリラックスしながらも深い考察が感じられる。日常的なテーマや自己探求、孤独感を穏やかなトーンで歌い上げる彼のスタイルが際立ち、リスナーに心地よい音楽体験を提供している。Bottle It Inは、カート・ヴァイルの音楽に浸りたいときに最適な一枚であり、彼の持つ音楽的な奥深さと自由なアプローチが詰まった傑作である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Lost in the Dream by The War on Drugs
カート・ヴァイルの元バンドメイト、アダム・グランデュシエルによる作品で、広がりのあるサウンドとメランコリックなムードが共通している。
Fear Fun by Father John Misty
フォークとロックが融合したアルバムで、詩的で内省的な歌詞が魅力。ヴァイルのシンプルでメランコリックなサウンドが好きなリスナーにおすすめ。
Sky Blue Sky by Wilco
シンプルで親しみやすいフォークロックの名盤。ヴァイルのリラックスしたサウンドと共通点が多く、ゆったりとした雰囲気が心地よい。
Pink Moon by Nick Drake
アコースティックなサウンドと内省的な歌詞が響き合う名盤。シンプルで感情に訴えかけるサウンドが、ヴァイルの世界観と共鳴する。
Ashes & Fire by Ryan Adams
フォークとロックの調和が美しい一枚で、カート・ヴァイルのメランコリックなギターサウンドと共通する要素が多い。心に染み入る歌詞とメロディが特徴的。
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