アルバムレビュー：Bossanova by Pixies

発売日: 1990年8月13日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、サーフロック、スペースロック

『Bossanova』は、Pixiesの3枚目のアルバムであり、サーフロックやスペースロックの要素を取り入れ、バンドのサウンドがさらに進化した作品だ。前作『Doolittle』で示された荒々しいノイズロックの要素が少し控えめになり、より洗練された音作りが目立つ。宇宙や未来、サーフカルチャーといったテーマを扱った曲が多く、音楽的にはよりメロディックで、ギターサウンドもディストーションを抑えたクリアなものが多い。ブラック・フランシス（フランク・ブラック）のSF的な歌詞やキム・ディールの存在感は健在だが、バンド全体の音は少し落ち着き、成熟した印象を与える。『Bossanova』は、Pixiesが新たな音楽的アプローチに挑戦したアルバムであり、彼らの多彩な音楽性が光る作品だ。

各曲ごとの解説:

1. Cecilia Ann
   　インストゥルメンタルのオープニングトラックで、サーフロック調のギターリフが特徴的。ギターサウンドは力強く、アルバムの軽快なスタートを飾る。
2. Rock Music
   　激しいディストーションギターとブラック・フランシスの叫ぶようなヴォーカルが印象的な楽曲。『Doolittle』に近いノイズロック的な荒々しさを持つが、シンプルな構成が力強さを引き立てている。
3. Velouria
   　シングルとしてリリースされ、アルバムの中でも特にキャッチーな楽曲。メロディックなギターリフと幻想的な雰囲気が特徴で、SF的な歌詞が魅力的だ。Pixiesのポップな一面が感じられる代表的な一曲。
4. Allison
   　わずか1分半ほどの短い曲だが、印象的なメロディと疾走感があり、スピーディーな展開が耳に残る。ジャズピアニスト、モーズ・アリソンへのオマージュとされる。
5. Is She Weird
   　フランシスの不気味な歌詞とシンプルなギターリフが絡み合う曲で、どこか不安定な雰囲気が漂う。ラウド・クワイエット・ラウドのダイナミクスが活かされており、奇妙さとキャッチーさが絶妙に混じり合っている。
6. Ana
   　夢幻的なサウンドが特徴の楽曲で、穏やかで静かなメロディが続く。海やビーチを思わせる歌詞が、アルバム全体に漂うサーフロック的なムードを強調している。幻想的で穏やかな雰囲気が印象的。
7. All Over the World
   　壮大でスペーシーなサウンドが特徴の楽曲。ギターが主導するサウンドスケープは広がりがあり、曲全体にゆったりとした浮遊感が漂っている。フランシスのSF的な歌詞も、この曲の不思議な世界観にマッチしている。
8. Dig for Fire
   　アルバムの中でも特にポップなトラックで、軽快なギターメロディとアップテンポなリズムが特徴。フランシスはこの曲について、Talking Headsのデヴィッド・バーンに影響を受けたと述べており、その影響が感じられる明るい曲調だ。
9. Down to the Well
   　どこか暗く不穏なムードが漂う曲。リズムセクションが重たく、フランシスのヴォーカルも不気味な雰囲気を醸し出している。サウンドはシンプルながらも、緊張感が張り詰めている。
10. The Happening
    　SF的なテーマを持つ長尺の曲で、エイリアンに関するストーリーを描いた歌詞が特徴。スペーシーなギターサウンドと重厚なリズムが、壮大なスケール感を生み出している。終盤に向かってエネルギーが高まり、カオスな展開が魅力的。
11. Blown Away
    　穏やかでリラックスした雰囲気が漂うバラード。シンプルなアコースティックギターとフランシスの柔らかなヴォーカルが優しく響く。『Bossanova』の中でも特に落ち着いた瞬間を提供する楽曲。
12. Havalina
    　アルバムを締めくくる美しいインストゥルメンタル風の楽曲。ゆったりとしたテンポで、ギターとベースがメロディを紡ぐ。静かで穏やかなフィナーレにふさわしい一曲だ。

アルバム総評:

『Bossanova』は、Pixiesがサーフロックやスペースロックの要素を取り入れ、新たなサウンドを追求したアルバムだ。前作『Doolittle』の荒々しいノイズロックと比較すると、よりメロディアスでポップな側面が強調されており、バンドの音楽的成長が感じられる。サーフロック調の「Cecilia Ann」や、キャッチーな「Velouria」、そしてスペーシーな「The Happening」など、多彩な楽曲が並び、Pixiesの実験的な精神が詰まった作品だ。荒削りなパンク的エネルギーとポップなメロディ、そしてSF的なテーマが融合した『Bossanova』は、Pixiesの音楽的進化を象徴する一枚である。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

1. Trompe le Monde by Pixies
   『Bossanova』に続くPixiesのアルバムで、さらに洗練されたサウンドが特徴。スペーシーなテーマを引き継ぎながら、よりハードなロックサウンドが楽しめる。
2. Surfer Rosa by Pixies
   Pixiesのデビューアルバムで、荒々しいノイズロックとダイナミクスの効いたサウンドが楽しめる。『Bossanova』よりもパンク色が強い作品。
3. In the Aeroplane Over the Sea by Neutral Milk Hotel
   夢幻的でサイケデリックな要素があり、実験的なサウンドが『Bossanova』と共通している。感情的で壮大なアルバムを楽しみたいリスナーにおすすめ。
4. Heaven or Las Vegas by Cocteau Twins
   エフェクトがかかったギターと幻想的なサウンドスケープが印象的なアルバム。『Bossanova』のスペーシーな雰囲気が好きな人にぴったり。
5. The Soft Bulletin by The Flaming Lips
   スペースロックやサイケデリックロックの要素が融合した傑作アルバム。Pixiesの『Bossanova』における実験精神と共鳴する作品で、エモーショナルで壮大なサウンドが特徴。