発売日: 2018年2月9日
ジャンル: インディーロック、オルタナティブロック
成熟したインディーロックの進化形——The Wombatsの円熟した4thアルバム
イギリス・リバプール出身の The Wombats が2018年にリリースした4thアルバム Beautiful People Will Ruin Your Life は、これまでのシンセポップ的な要素を抑え、よりオーガニックでバンドサウンド重視の方向へと進化を遂げた作品 だ。
前作 Glitterbug（2015年）ではシンセを多用し、ロサンゼルスの煌びやかな世界観と恋愛の混乱をテーマにしていたが、本作では一転して よりシンプルで、生々しいロックサウンドに回帰 している。ギターリフやドラムの存在感が増し、バンドとしてのダイナミズムを強く押し出した作品となっている。
恋愛の矛盾や自己破壊的な行動、成熟した大人の関係の難しさ をテーマにした歌詞は、従来のユーモラスな皮肉を交えつつも、よりパーソナルな視点で描かれており、The Wombats のソングライティングの進化を感じさせる。
全曲レビュー
1. Cheetah Tongue
アルバムの幕開けを飾る、スローテンポながらもグルーヴ感のある楽曲。誘惑に負けてしまう人間の本能と、その結果としての苦悩を描いた歌詞 が特徴的。
2. Lemon to a Knife Fight
エネルギッシュなギターリフが特徴のリードシングル。恋愛の戦いを「ナイフを持った相手にレモンで立ち向かう」と例えるユニークな歌詞 が印象的。
3. Turn
メロディアスでロマンティックな楽曲で、「君のことを考えるたびに世界が回る」という詩的な表現が美しい。シンプルなアレンジながらもエモーショナルな雰囲気を持つ。
4. Black Flamingo
グルーヴィーなベースラインとファルセットボーカルが特徴的な楽曲。カオスな恋愛関係を象徴的に描いた歌詞 が魅力。
5. White Eyes
アップテンポなインディーロックの王道的な楽曲。シンプルなギターリフと疾走感のあるドラムが印象的。
6. Lethal Combination
陽気なメロディとポジティブな雰囲気を持つ楽曲だが、歌詞では恋愛における「致命的な組み合わせ（Lethal Combination）」を皮肉っている。
7. Out of My Head
シンセの控えめなアクセントと、タイトなリズムセクションが特徴の楽曲。過去の恋愛を振り払えない感情を描いている。
8. I Only Wear Black
カントリー調のギターが印象的な楽曲で、ブラックユーモアの効いた歌詞がThe Wombatsらしい。
9. Ice Cream
浮遊感のあるサウンドと、ミステリアスな歌詞が特徴的。サイケデリックな雰囲気も感じさせる実験的なトラック。
10. Dip You in Honey
明るく爽やかなメロディを持つポップな楽曲。ポジティブなラブソングのように聴こえるが、どこか皮肉な雰囲気も漂う。
11. I Don’t Know Why I Like You but I Do
アルバムの締めくくりにふさわしい、切ないバラード。理屈では説明できない恋愛の魅力と混乱を描いた歌詞 が印象的。
総評
Beautiful People Will Ruin Your Life は、The Wombats のキャリアの中でも最もバランスの取れたアルバムのひとつ であり、シンセポップから離れ、ギターロックとしての純粋なエネルギーを取り戻した作品 となっている。
前作 Glitterbug ではロサンゼルスの煌びやかな世界と恋愛の混乱を描いていたが、本作ではよりパーソナルでリアルな視点へとシフト。ギターのリフやドラムのダイナミズムが前面に押し出され、「インディーロックバンド」としての本来の魅力が再確認できる 一枚となっている。
また、恋愛の矛盾や自己破壊的な行動を描いた歌詞は、これまでのユーモラスな皮肉を交えつつも、より大人びた視点 で描かれており、The Wombats のソングライティングが進化していることを実感できる。
おすすめのリスナー:
- This Modern Glitch や Glitterbug のシンセポップよりも、よりバンドサウンドを重視したロックを求める人
- Arctic Monkeys や The Strokes のような、ギターロックの要素が強いインディーバンドを好む人
- 恋愛のリアルな側面を描いた歌詞に共感できる人
おすすめアルバム
1. Arctic Monkeys – AM (2013)
グルーヴィーなギターリフとダークな歌詞が、本作と共通点を持つ。
2. The Killers – Wonderful Wonderful (2017)
インディーロックとオルタナティブの中間に位置するサウンドが似ている。
3. Two Door Cinema Club – False Alarm (2019)
ポップなメロディとインディーロックのバランスが取れた作品。
4. Foster the People – Sacred Hearts Club (2017)
シンセ要素を控えめにし、よりバンドサウンドに戻った作品で、本作と共通するアプローチが見られる。
5. Circa Waves – Different Creatures (2017)
インディーロックとしてのダイナミズムと、エモーショナルなリリックのバランスが近い。
Beautiful People Will Ruin Your Life は、The Wombats がシンセポップから脱却し、インディーロックバンドとしての本質を取り戻したアルバム であり、彼らのキャリアの中でも最もバランスの取れた作品のひとつ。バンドとしての成熟が感じられる一枚となっている。
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