発売日: 2017年8月25日
ジャンル: インディーフォーク / アコースティック / シンガーソングライター
Beast Epicは、Iron & Wineことサム・ビームによる6作目のスタジオアルバムであり、彼の音楽的ルーツへの回帰ともいえる作品である。過去のアルバムで見られた複雑なアレンジや実験的な要素を抑え、本作ではよりシンプルで親密なアコースティックサウンドが中心となっている。
アルバムタイトルの「Beast Epic」とは、動物を擬人化した中世の物語形式を指し、歌詞の中にも物語的な要素や象徴が数多く散りばめられている。愛や喪失、時間の流れといった普遍的なテーマが、ビームの叙情的な歌詞と優しいボーカルによって繊細に描かれている。
トラック解説
1. Claim Your Ghost
アルバムの幕開けを飾る、穏やかで内省的な楽曲。アコースティックギターと控えめなアレンジが、ビームのささやくようなボーカルを際立たせている。過去や記憶に向き合うことをテーマにしている。
2. Thomas County Law
南部の田舎町を舞台にした叙情的な楽曲。スライドギターが楽曲に牧歌的な雰囲気を与え、歌詞には孤独と葛藤がにじむ。
3. Bitter Truth
儚くも美しいメロディが印象的なバラード。時間の経過と共に変わりゆく関係を描いた歌詞が心に響く。
4. Song in Stone
シンプルなアコースティックギターの伴奏が中心の楽曲。ビームの詩的な歌詞が、自然と人間の関係性を深く掘り下げている。
5. Last Night
ノスタルジックな雰囲気を持つ楽曲。恋愛の甘さと苦さを歌詞に織り交ぜた、穏やかなフォークソング。
6. Right for Sky
自由と希望をテーマにした楽曲。柔らかなストリングスのアレンジが楽曲に奥行きを与え、優雅な印象を残す。
7. The Truest Stars We Know
親密で感情的なトラック。家族や愛をテーマにした歌詞が、アコースティックギターのシンプルな伴奏と調和している。
8. Our Light Miles
牧歌的で明るい雰囲気を持つ楽曲。ギターのリズミカルなアルペジオと、ビームの温かいボーカルが特徴的。
9. Call It Dreaming
アルバムを代表する楽曲で、人生の儚さと希望を歌った詩的な内容が印象的。柔らかなメロディと歌詞が心に残る名曲だ。
10. About a Bruise
優しさと切なさが交錯する楽曲。シンプルなアレンジと歌詞の親密さが、リスナーを深く引き込む。
11. Cold Town
軽快なギターと、ビームの語りかけるようなボーカルが心地よい楽曲。希望と絶望の間を行き来する歌詞が印象的。
12. Wolves
静かながら力強いバラード。動物をモチーフにしたメタファーが、歌詞の中で巧みに使われている。
13. Weavers of Dreams
アルバムの締めくくりを飾る、美しくも控えめなトラック。未来への希望を感じさせる歌詞と柔らかなアコースティックアレンジが心に残る。
アルバムの背景: シンプルさの中に宿る深み
Beast Epicは、Iron & Wineが初期の親密でシンプルなスタイルに回帰しつつ、成熟したソングライティングと洗練されたアレンジを融合させたアルバムである。スタジオ録音でありながらも、生々しい演奏と温かみのある音質が、ビームの詩的な歌詞と調和している。
時間の経過や愛の儚さ、自然とのつながりといった普遍的なテーマがアルバム全体を貫いており、彼の音楽が持つ感情的な深みを改めて実感させる作品だ。
アルバム総評
Beast Epicは、Iron & Wineの音楽的原点を思わせるシンプルで親密な作品でありながら、彼の成熟した視点と深みを存分に感じさせるアルバムである。アコースティックなサウンドを中心にした控えめなアレンジと、詩的で象徴的な歌詞が、リスナーを彼の世界観に引き込む。
シンプルながらも豊かな感情が込められたこのアルバムは、長年のファンにとっては懐かしく、新しいリスナーにもおすすめできる一枚だ。穏やかで心に染み入る音楽を求めている人にぜひ聴いてほしい作品である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
The Creek Drank the Cradle by Iron & Wine
初期の親密でミニマルなフォークスタイルが、本作と響き合うデビューアルバム。
Our Endless Numbered Days by Iron & Wine
叙情的な歌詞とシンプルなアコースティックサウンドが共通する傑作。
For Emma, Forever Ago by Bon Iver
内省的で親密な雰囲気を持つフォークアルバムで、感情的な深みが共通点を持つ。
Seven Swans by Sufjan Stevens
シンプルでスピリチュアルなフォークサウンドが、本作と同じ空気感を持つ。
Carrie & Lowell by Sufjan Stevens
愛と喪失をテーマにした感情豊かなアルバムで、Iron & Wineの本作に共通する親密さがある。
コメント