
発売日: 1995年1月24日
ジャンル: ハードロック、オルタナティブロック、アリーナロック、AOR
概要
『Balance』は、Van Halen が1995年に発表したサミー・ヘイガー期最後のスタジオアルバムであり、
“サミー期の集大成”かつ“最もダークでドラマティックな作品”
として広く認識されている。
『OU812』(1988)でポップ性が成熟し、
『For Unlawful Carnal Knowledge』(1991)でハード志向を深めたバンドは、
本作で
ポップ/ハード/叙情/ダークさ
を複雑に融合させ、
サミー期における “最も深い感情の振れ幅” を記録した。
制作背景にはバンドの内部不和があり、
しかし、その不安定さが逆に音へ昇華され、
“鬱屈・怒り・痛み・切なさ・壮大さ”
が複雑に重なる、異様なほど濃密なアルバムとなっている。
音像は厚く重く、Eddie のギターも濁りと攻撃性を帯び、
シンセは影を落とし、サミーの歌は伸びやかさと苦みが同居する。
サミー期 Van Halen の頂点はどこか?
と問われれば、本作を挙げるファンは非常に多い。
全曲レビュー
1曲目:The Seventh Seal
チベット仏教的なコーラスから始まり、一気に壮大なハードロックへ展開。
サミー期でも最も神秘的で力強いオープニングのひとつ。
2曲目:Can’t Stop Lovin’ You
本作の最大のヒット。
甘くポップな AOR バラードで、アルバムのダークさの中に一筋の光を差し込む。
3曲目:Don’t Tell Me (What Love Can Do)
重く、怒りに満ちたハードロック。
バンド内の緊張と外部の社会問題が凝縮された、非常に力強い曲。
4曲目:Amsterdam
陽気で明るいロック。
歌詞はややユルいが、疾走感が爽快でアルバムのバランスを整えている。
5曲目:Big Fat Money
ジャジーなテンションと高速ロックが融合したナンバー。
Eddie の遊び心あるフレーズが満載。
6曲目:Strung Out
Eddie がピアノ内部を破壊的に弾く、ノイズアート的な短編。
本作の“不安定さ”を象徴するインタールード。
7曲目:Not Enough
美しいメロディを持つピアノバラード。
深い感情が込められた名曲で、サミーの表現力が頂点に達する。
8曲目:Aftershock
重厚でダークなミッドテンポ。
Eddie のギターの泣きが圧倒的。
9曲目:Doin’ Time
Alex のドラムソロ的なパーカッション曲。
10曲目:Baluchitherium
ギター主体のインスト。
複雑な構成と浮遊感が魅力。
11曲目:Take Me Back (Déjà Vu)
フォークロック調の哀愁曲。
サミー期でも屈指の叙情を持つ名曲。
12曲目:Feelin’
最後を飾る壮大かつエモーショナルなロック。
“サミー期の終わり”を暗示するような深い余韻が残る。
総評
『Balance』は、
サミー・ヘイガー期の Van Halen が到達した最もダークで、最も感情的で、最も完成された作品
である。
『5150』の多幸感、
『OU812』のメロディの充実、
『F.U.C.K.』のハード志向、
それらすべてを内包しつつ、
ここでは “痛み” “葛藤” “精神の深淵” が強く出ている。
そのため本作には、
- シリアスで重いトーン
- Eddie の攻撃的かつ美しいギター
- サミーの感情の深さ
- 特有の陰影
が色濃く現れており、
“明るいアリーナロック”というサミー期の印象を覆すほどドラマティックだ。
サミー期の最高傑作を問えば、
多くのリスナーが
『Balance』か『5150』
の二択を挙げることになる。
おすすめアルバム(5枚)
- 5150 (1986)
サミー期の始まりであり、明るさと革新性が詰まった名盤。 - For Unlawful Carnal Knowledge (1991)
本作のハード面の直接的前身。 - OU812 (1988)
メロディの美しさの源流。 - Fair Warning (1981)
ダークで攻撃的な Van Halen の別形態。比較が興味深い。 - Van Halen III (1998)
“その後”を知ることで本作の完成度とバンドの分岐がより鮮明になる。



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