アルバムレビュー：Avalon by Roxy Music

発売日: 1982年5月28日
ジャンル: アートポップ、ニューウェーブ、ソフィスティ・ポップ

『Avalon』は、Roxy Musicの8枚目にして最後のスタジオアルバムであり、バンドの音楽的成熟と洗練が最高度に達した作品だ。このアルバムは、彼らの初期のアヴァンギャルドで実験的なサウンドから一転し、エレガントでメロディアスなアートポップスタイルに進化した姿を示している。『Avalon』は、ソフィスティ・ポップの代表作としても知られ、1980年代の洗練されたサウンドとスタイルを象徴している。

ブライアン・フェリーのロマンティックでムーディなボーカル、滑らかなサウンドスケープ、そしてアンディ・マッケイのサクソフォーンとフィル・マンザネラのギターワークが絶妙に調和している。アルバム全体を通して、夢幻的でリラックスした雰囲気が漂い、リスナーを幻想的な世界へと誘う。

各曲ごとの解説:

1. More Than This
   　アルバムの代表曲で、Roxy Musicの中でも特に人気の高い一曲。ブライアン・フェリーのメロディアスで感情的なボーカルと、浮遊感のあるギターとキーボードが融合し、夢見心地な雰囲気を醸し出している。歌詞は内省的で、愛と時間の儚さをテーマにしている。
2. The Space Between
   　ファンキーなリズムとミニマルなサウンドが特徴のトラック。ダンスフロアにも適したリズムが軽快で、フェリーの落ち着いたボーカルが洗練された雰囲気を引き立てている。シンプルながらも深みのあるサウンド。
3. Avalon
   　アルバムのタイトル曲であり、ムーディで幻想的なバラード。柔らかくエコーのかかったサウンドスケープの中で、フェリーが優雅に歌い上げる。アンディ・マッケイのサックスソロと流れるようなアレンジが、楽曲に豊かな感情と深みを与えている。
4. India
   　短いインストゥルメンタルのトラックで、アンビエント的なサウンドスケープが特徴。次の曲「While My Heart Is Still Beating」へのブリッジとして機能しており、アルバム全体の流れをスムーズに保つ役割を果たしている。
5. While My Heart Is Still Beating
   　静かで内省的なトラック。フェリーの感情的なボーカルと、ミニマルなリズムセクションが、心の葛藤や愛の儚さを描き出している。サックスと控えめなキーボードのサウンドが、楽曲に幽玄な美しさを添えている。
6. The Main Thing
   　リズムセクションが強調されたアップテンポな楽曲。繰り返されるリズムとベースラインがトラック全体をリードし、フェリーのボーカルがそれに乗る形で展開される。ダンサブルな要素が際立つ一曲。
7. Take a Chance with Me
   　メロディアスでロマンティックなトラック。柔らかなギターと控えめなシンセサウンドが、曲全体に温かい雰囲気を与えている。愛をテーマにした歌詞とフェリーのソフトなボーカルが、優雅で落ち着いたムードを作り出している。
8. To Turn You On
   　フェリーのボーカルが際立つ、セクシーでロマンティックなトラック。シンプルなアレンジながらも、フェリーの表現力豊かな歌唱が、愛と誘惑のテーマを巧みに表現している。
9. True to Life
   　シンセサイザーが主導するトラックで、アルバムの中でも特にモダンなサウンドが特徴。フェリーのボーカルがシンプルなアレンジの中で映え、楽曲全体に漂うノスタルジックなムードが美しい。
10. Tara
    　アンディ・マッケイのサクソフォーンが中心となった短いインストゥルメンタルで、アルバムのエピローグ的な役割を果たす。静かで穏やかな余韻を残し、幻想的なアルバムの終わりにふさわしいトラックだ。

アルバム総評:

『Avalon』は、Roxy Musicが創り上げた最も洗練された作品であり、彼らの音楽的な集大成と言えるアルバムだ。初期のアヴァンギャルドなエッジを持つ作品とは対照的に、滑らかでエレガントなサウンドが支配し、フェリーの内省的で感情的なボーカルがアルバム全体をリードしている。特に「More Than This」や「Avalon」といった楽曲は、1980年代のポップミュージックにおける不朽の名作として高く評価されている。洗練されたプロダクションと美しいメロディ、そして夢幻的な雰囲気が、Roxy Musicの音楽の深さと成熟を示している。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

1. Scary Monsters (and Super Creeps) by David Bowie
   David Bowieのニューウェーブ時代の名作で、Roxy Musicの洗練されたサウンドに通じる要素が多い。アートポップの洗練とエッジの効いたロックが融合している。
2. Tango in the Night by Fleetwood Mac
   1980年代のポップロックの名盤で、洗練されたサウンドとメロディが特徴。『Avalon』のような優雅なサウンドが好きなリスナーにぴったり。
3. So by Peter Gabriel
   内省的で洗練されたプロダクションが特徴のアルバム。『Avalon』の持つ静謐な雰囲気や、美しいサウンドスケープを好むリスナーにおすすめ。
4. The Lexicon of Love by ABC
   ソフィスティ・ポップの代表作で、Roxy Musicのエレガントなサウンドに影響を受けたアルバム。豪華で洗練されたアレンジが魅力的。
5. Hounds of Love by Kate Bush
   アートポップとエクスペリメンタルな要素が融合したアルバムで、Roxy Musicの幻想的なサウンドと共通点が多い。深い感情と夢幻的な雰囲気を求めるリスナーにおすすめ。